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届いた想い 信長、再び立つ

灯火のひとりごと


私は小さな灯火


強い光ではない


太陽のように世界を照らすこともできない


それでも暗闇の中では、一人の足元を照らすことができる


信長という男もまた、大きな光ではなく、小さな希望を集めながら歩いてきた


家臣の想い


民の願い


家族の祈り


その一つ一つが集まり、大きな光となって未来を照らしている


どれほど深い闇が訪れても、希望の灯は消えない


そのことを私は静かに信じ続けている


――灯火

第八十六章


届いた想い 信長、再び立つ


戦場には、静かな風が吹いていた


先ほどまで響いていた怒号は消え、代わりに苦しげな息遣いだけが聞こえる


信長は片膝をついたまま、刀を地面に突き立てていた


肩からは血が流れ続け、鎧は幾重にも裂けている


荒くなる呼吸


霞む視界


立ち上がる力さえ残っていなかった


家臣たちは信長のもとへ駆け寄ろうとする


しかし敵兵がその前へ立ちはだかる


「誰一人として近づけるな」


敵将の号令とともに、何重もの包囲が築かれていく


道三は槍を振るい叫ぶ


「信長のもとへ行かせろ」


義龍も敵兵を次々となぎ倒しながら前へ進む


「もう少しだ」


「あと少しで届く」


しかし、その距離はあまりにも遠かった


信長はゆっくり空を見上げる


黒い雲の切れ間から、一筋の光が差し込んでいた


「空は……まだ明るいな」


その時だった


一陣の風が信長の頬を優しくなでる


どこからともなく、懐かしい香りが漂ってきた


花の香り


春の日に帰蝶と歩いた庭の香りだった


信長は目を閉じる


「帰蝶……」


遠く離れた清洲城


帰蝶は仏前で静かに手を合わせていた


「どうか、信長様をお守りください」


その祈りは誰にも見えない


誰にも聞こえない


それでも、確かに信長の心へ届いていた


信長はゆっくりと刀の柄を握る


「まだ……終われぬ」


震える足に力を込める


ゆっくりと


本当にゆっくりと立ち上がる


敵兵たちは驚きの声を上げた


「立った」


「まだ立ち上がるのか」


「化け物だ」


信長は静かに首を横へ振る


「違う」


「余は一人ではない」


「皆の想いが支えてくれている」


その言葉に、兵たちの目から涙がこぼれる


「殿」


「私たちもおります」


「最後まで共に」


道三は大きく笑った


「これだから信長は面白い」


義龍も静かにうなずく


「生きて帰ろう」


その時、敵将が再び巨大な剣を振り上げる


「何度立ち上がろうと結果は同じだ」


「今度こそ終わりにしてやる」


大剣が一直線に信長へ迫る


信長は静かに息を吸った


「人は」


「何度でも立ち上がれる」


「未来を信じる限り」


その瞬間


信長は渾身の力で前へ踏み込んだ


刀と大剣が激しくぶつかり合い、眩い火花が戦場を照らす


その光は夜空を切り裂き、長良川の水面に映り込んだ


兵たちはその光景に息をのむ


誰もが信長の背中を見つめていた


一人の武将ではない


一人の王でもない


未来を信じ、人を信じ、自らの命を懸ける一人の人間として


その背中は、戦場に立つすべての者へ勇気を与えていた


そして決着の時は、ゆっくりと、しかし確実に近づいていた

朝焼けのひとりごと


私は朝焼け


夜の終わりと新しい一日の始まりを告げる空の色


長い夜ほど、私の色は美しく染まる


苦しみが大きいほど、希望は強く輝く


戦いはまだ終わっていない


涙も流れ続けている


それでも空は少しずつ明るくなっていく


誰かが未来を諦めなかったから


誰かが仲間を信じ続けたから


その積み重ねが新しい朝を連れてくる


私は今日も東の空から静かに昇る


戦いの終わりではなく、平和の始まりを照らすために


――朝焼け

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