歴史連合軍、進軍 ― 信長の新たな天下布武 ―
法螺貝の一言
私は法螺貝。
戦が始まる時、戦が終わる時、そして勝利を告げる時に吹かれてきました。
私の音色を聞けば、人々は武器を取り、戦場へ駆け出します。
けれど、本当は私は戦など好きではありません。
できることなら、祭りや祝いの日だけ鳴り響きたい。
子どもたちの笑い声の中で、穏やかに音を響かせたい。
しかし今日は違います。
私の音は、人と人が争うためではありません。
世界を守るために、一つになる者たちを呼び集めるための音です。
どうか、この響きが絶望ではなく、希望の始まりとなりますように。
――法螺貝
第八十章
歴史連合軍、進軍 ― 信長の新たな天下布武 ―
黒き門が開かれたまま、長良川の空は闇に包まれていた。
黒い雷が幾度となく大地へ落ち、そのたびに地面が裂け、木々が倒れていく。
門の向こうでは、無数の魔物たちがうごめいていた。
骸骨兵。
黒騎士。
翼を持つ魔人。
巨大な魔狼。
そして、山ほどもある漆黒の古竜。
その軍勢は、まるで終わりのない波のように押し寄せてくる。
戦場に立つ兵たちは、その光景を前に言葉を失っていた。
「こんな敵……。」
「勝てるはずがない……。」
「もう終わりだ……。」
誰もが絶望しかけた、その時だった。
信長はゆっくりと一歩前へ踏み出した。
その背中は小さく見える。
だが、その姿には誰よりも大きな覚悟が宿っていた。
信長は静かに刀を天へ掲げる。
「皆、聞け。」
その声は大きくはなかった。
しかし、不思議なことに戦場の隅々まで届いた。
「今ここにいる者は、つい先ほどまで敵同士だった。」
「織田も。」
「斎藤も。」
「美濃も尾張も。」
「互いに刃を向け合っていた。」
兵たちは静かに耳を傾ける。
「だが、今は違う。」
「目の前にいる敵は、人ではない。」
「歴史そのものを消そうとする者たちだ。」
信長は空を見上げた。
黒い門はなおも広がり続けている。
「我らが争っている間に、この世界は滅びる。」
「それで本当に良いのか。」
誰も答えない。
だが、一人の若い兵が槍を握り直した。
「……嫌です。」
その声は小さかった。
しかし、次第に広がっていく。
「俺も嫌だ!」
「家族を守りたい!」
「故郷へ帰りたい!」
「子どもたちを守るんだ!」
その声を聞いた信長は、大きくうなずいた。
「それでよい。」
「人は、大切なものを守るために立ち上がる。」
道三が槍を掲げる。
「美濃の者たちよ!」
「今日だけは怨みを捨てよ!」
義龍も刀を抜き、高く掲げた。
「我らは父子。」
「そして美濃の民だ!」
「未来を守るため戦う!」
その姿を見た兵たちは、一斉に武器を掲げる。
「おおおおおっ!」
戦場に再び活気が戻った。
信長は深く息を吸い、大きく叫ぶ。
「今日より!」
「この軍は『歴史連合軍』と名乗る!」
兵たちがどよめく。
「敵も味方もない!」
「身分も国も関係ない!」
「未来を守りたい者は、皆、仲間だ!」
「これこそが、余の新たな天下布武!」
その言葉に、案内人は目を見開いた。
「天下布武……。」
「国を支配するためではなく。」
「世界を守るための天下布武……。」
世界樹が黄金色に輝き始める。
まるで信長の決意に応えるように、無数の光が兵たちへ降り注いだ。
傷ついていた兵士たちの傷が少しずつ癒え、折れた槍や剣が再び光を取り戻す。
兵たちは驚きながら武器を握り締めた。
「力が戻ってくる!」
「これが世界樹の加護か!」
しかし、その様子を見たゼノスは静かに笑う。
「面白い。」
「人は絶望してこそ、人である。」
「その希望……。」
「私が跡形もなく消してやろう。」
ゼノスは両腕を広げる。
黒き門がさらに大きく開き、その奥から今までとは比べものにならないほど巨大な影が姿を現した。
大地が震える。
空気が悲鳴を上げる。
その影は、古竜すら見上げるほどの大きさだった。
兵たちは息をのむ。
「まだ……。」
「まだ化け物がいるのか……。」
信長は静かに笑った。
「どれほど強大な敵であろうと。」
「守るべき未来がある限り。」
「余は退かぬ。」
刀を前へ突き出す。
「歴史連合軍!」
「進軍!」
数万の兵が一斉に雄叫びを上げる。
「おおおおおおおっ!!」
その声は長良川を越え、山々を越え、エノワールド全土へ響き渡った。
そして、歴史を守る者たちと、歴史を喰らう者たちとの決戦が、ついに始まった。
未来を生きる子どもの一言
ぼくは戦を知りません。
刀を持ったこともありません。
でも、おじいちゃんはよく話してくれます。
「昔、この世界を守るために命を懸けた人たちがいたんだ」と。
その中には、織田信長という人がいたそうです。
本で読んだ信長は、強い武将でした。
でも、この物語の信長は、それだけではありません。
敵だった人とも手を取り合い、未来のために戦った人です。
だから今、ぼくたちは安心して空を見上げ、友達と笑い合い、ご飯を食べて、夢を語ることができます。
戦った人たちの願いは、きっと「戦い続けること」ではなく、「戦わなくてもいい未来」をつくることだったのでしょう。
ぼくも大人になったら、人を助けられる人になりたいです。
そして、この平和な世界を次の世代へつないでいきたいと思います。
ありがとう。
歴史を守ってくれた、すべての人たちへ。
――未来を生きる一人の子ども




