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もし信長が生きていたら ― 本能寺から始まるもう一つの天下 ―  作者: マーたん


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斎藤道三の無念

斎藤道三の一言


信長殿。


初めておぬしと会った時、世間は「うつけ」と笑っておった。


だが、わしだけは違った。


その瞳の奥に、天下を変える志を見たのだ。


美濃は託した。


そして、愛する娘・濃姫もおぬしに託した。


どうか乱世を終わらせ、人々が笑って暮らせる世を築いてほしい。


それが、わしの最後の願いじゃ。


――斎藤道三

第五十二章 斎藤道三の無念


最後の決戦を前にした夜。


信長は美濃・稲葉山城跡を訪れていた。


静まり返った城跡には、冷たい風だけが吹いている。


信長は城壁に手を添え、静かにつぶやいた。


「道三殿……。」


その名は、美濃の戦国大名・斎藤道三。


そして、濃姫の父でもあった。


かつて道三は、信長を見てこう語った。


「うつけと呼ばれておるが、その目は天下を見ている。」


その言葉を、信長は今でも忘れていない。


目を閉じると、遠い日の記憶がよみがえる。


――。


「信長殿。」


道三は静かに笑っていた。


「美濃を任せられる男は、おぬししかおらぬ。」


若き信長は頭を下げる。


「道三殿。」


「私は、必ず天下を平和へ導いてみせます。」


道三は満足そうにうなずく。


「その言葉を聞けただけで十分じゃ。」


しかし、その後。


道三は実の子・斎藤義龍との戦いに敗れ、その志を果たせぬまま命を落とした。


信長は静かに目を開けた。


「道三殿。」


「あなたの無念も、この戦いで終わらせます。」


その時、背後から足音が聞こえた。


振り返ると、濃姫が立っていた。


「あなた。」


信長は少し驚いた。


「濃。」


濃姫は父が眠る美濃の地を見つめる。


「父は最後まで、美濃と民を愛していました。」


「そして、あなたなら乱世を終わらせられると信じていました。」


信長は静かにうなずく。


「ああ。」


「その想いに応えねばならぬ。」


濃姫は信長の手を握る。


「きっと父も、天から見守っています。」


信長は空を見上げた。


星空の向こうに、道三の笑顔が浮かぶような気がした。


「道三殿。」


「どうか見届けてください。」


「あなたが信じた天下を、この手で完成させます。」


その頃、山寺では足利義昭が軍勢へ最後の命令を下していた。


「明日、すべてを決する。」


信長もまた、美濃を後にし、決戦の地へ向かう。


それぞれが受け継いだ志を胸に。


天下を懸けた最後の戦いは、もう目前まで迫っていた。

濃姫の一言


父上。


あなたが信長様を信じてくださったからこそ、今の私たちがあります。


父上の無念は、決して無駄にはなりません。


信長様は、あなたが託した想いを胸に、平和な天下を築こうとしておられます。


私もその隣で、最後まで信長様を支え続けます。


どうか天から、私たちの歩む未来を見守っていてください。


――濃姫

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