父・織田信秀の記憶
登場人物
織田信長
本能寺の変を生き延びた天下人。父・信秀の教えを思い出し、平和な天下を築く決意を新たにする。
織田信秀
信長の父。回想で登場。「武とは人を守るためにある」という教えを信長へ残し、その志が現在の信長を支えている。
織田信栄
信長と濃姫の嫡男。父の話を通して祖父・信秀の志に触れ、織田家の未来を担う決意を深める。
足利義昭
室町幕府最後の将軍。青龍智玄とともに、信長との最後の戦いへ向けて動き出す。
青龍智玄
足利義昭四天王最後の一人。「知略・謀略」を司る軍師。信長を追い詰めるため、最後の策を実行する。
羽柴秀吉
信長の忠臣。天下泰平のため、主君を支え続ける。
徳川家康
信長の盟友。冷静な判断力で織田軍を支え、敵の策略を見抜こうとする。
柳生十兵衛
柳生新陰流の剣豪。信長の理想に共感し、その剣を織田家へ捧げる。
綾姫
信長の側室。足利義昭の姪でありながら、信長の理想を信じ、織田家と行動を共にする。
第四十九章 父・織田信秀の記憶
美濃と尾張で戦火が広がる中、信長は清洲城へと戻っていた。
夜更け。
誰もいない城の一室で、信長は父・織田信秀の形見である太刀を手に取る。
「父上……。」
静かな風が障子を揺らす。
その瞬間、幼い頃の記憶が信長の脳裏によみがえった。
――尾張国、那古野城。
まだ少年だった信長は、庭で木刀を振っていた。
その姿を見つめる一人の武将。
父・織田信秀である。
「信長。」
「はい、父上。」
信秀は穏やかに微笑んだ。
「武とは、人を斬るためだけにあるのではない。」
「人を守るために振るうものだ。」
幼い信長は首をかしげる。
「ですが、戦には勝たねばなりません。」
信秀は息子の肩に手を置いた。
「そのとおりだ。」
「だが、勝つことだけを求めれば、人の心は離れていく。」
「民に慕われる武将となれ。」
「それがお前に託す、父の願いだ。」
記憶はそこで途切れた。
信長は静かに目を開ける。
「あの時の言葉……。」
「余はようやく、その意味を理解した。」
部屋の外から信栄が入ってくる。
「父上。」
「こんな夜更けに、いかがされましたか。」
信長は太刀を見つめながら答えた。
「祖父ではなく、お前の祖父……信秀殿を思い出していた。」
信栄は静かに父の隣へ座る。
「祖父上は、どのようなお方だったのですか。」
信長は優しく笑った。
「厳しくも温かい人だった。」
「今の余があるのは、父上のおかげだ。」
その頃、山寺では青龍智玄が軍勢を整えていた。
「信長。」
「家族の思い出に浸る時間は終わりです。」
「いよいよ最後の策を実行します。」
義昭も静かに立ち上がる。
「天下の行方を決める時が来た。」
一方、信長は父の太刀を腰に差した。
「父上。」
「あなたが願った平和な天下。」
「必ず、この手で成し遂げてみせます。」
父から子へ。
受け継がれた志は、乱世を終わらせるための大きな力となっていくのだった。
織田信秀の一言
信長よ。
幼き日のお前は、誰よりも自由で、誰よりも型破りな子であった。
だからこそ、わしは信じておった。
いつの日か、お前なら誰にも成し得ぬ天下を築いてくれると。
武とは、人を傷つけるためのものではない。
民を守り、家族を守り、未来を守るために振るうものだ。
今のお前は、その教えを立派に受け継いでいる。
迷うことがあっても、お前の信じる道を進みなさい。
わしはいつまでも、お前の父として見守っておる。
――織田信秀




