剣豪対決
第四十章
第四十章 剣豪対決
約束の日。
比叡の麓には、朝早くから冷たい風が吹いていた。
柳生十兵衛は一人、静かに立っていた。
腰には愛刀。
その瞳には迷いはない。
「来たか。」
低い声とともに、一人の男が姿を現す。
白銀の鎧をまとった四天王――白虎蒼真。
「柳生十兵衛。」
「お前が信長に仕えるとは、残念だ。」
十兵衛は静かに答えた。
「私が仕えるのは、過去の信長ではない。」
「民を守ろうとする、今の信長様だ。」
蒼真は鼻で笑う。
「人は変わらぬ。」
「権力を手にした者はいずれ暴君となる。」
十兵衛は木々を揺らす風を感じながら刀の柄を握った。
「ならば、お前は信長様の何を知っている。」
「その目で見たのか。」
蒼真は答えず、ゆっくりと刀を抜く。
「剣で語れ。」
十兵衛も静かに刀を抜いた。
その瞬間。
二人の姿が消えた。
鋼と鋼が激しくぶつかる。
火花が散り、地面に傷が刻まれる。
蒼真は怒涛の連撃を繰り出す。
十兵衛は最小限の動きで受け流し、隙を探る。
「見事だ!」
蒼真は笑う。
「だが、防いでいるだけでは勝てぬ!」
十兵衛は一歩踏み込み、鋭い突きを放つ。
蒼真は紙一重でかわした。
「これほどの腕……。」
「さすが柳生新陰流。」
二人の戦いは昼を迎えても終わらなかった。
その頃、遠くの丘では信長、秀吉、家康、信栄、弥助が戦いを見守っていた。
「上様。」
秀吉が不安そうに言う。
「加勢いたしますか。」
信長は首を横に振った。
「ならぬ。」
「これは剣士同士の誇りを懸けた勝負だ。」
十兵衛は深く息を吸う。
「この一太刀で決める。」
蒼真も刀を構えた。
「望むところだ。」
互いに駆け出す。
「はああああっ!」
一閃。
辺りは静寂に包まれた。
風が吹く。
カラン……。
地面に落ちたのは、白虎蒼真の刀だった。
蒼真は膝をつき、静かに笑う。
「負けたか……。」
十兵衛は刀を納めた。
「勝負あり。」
しかし、その時だった。
森の奥から不気味な笑い声が響く。
「クックック……。」
「見事だ、柳生十兵衛。」
姿を現したのは、仮面を着けた男。
四天王最後の軍師――青龍智玄だった。
「ここからが、本当の戦いだ。」
その言葉に、信長は静かに刀へ手を添えた。
新たな脅威が、ついに動き始める。
第四十章




