白虎蒼真、剣を抜く
第三十九章
第三十九章 白虎蒼真、剣を抜く
柳生十兵衛が織田家へ加わったという知らせは、瞬く間に足利義昭のもとへ届いた。
山寺。
義昭は文を読み終えると、小さくため息をついた。
「やはり、信長は十兵衛を味方につけたか。」
その隣では、僧侶姿の明智光秀が静かに口を開く。
「義昭様。」
「柳生十兵衛は、想像以上に信長へ心を動かされたようです。」
義昭は静かにうなずいた。
「ならば次の手だ。」
「白虎蒼真を呼べ。」
しばらくして、障子が開く。
白銀の鎧をまとった一人の剣士が現れた。
鋭い眼差し。
腰には一本の名刀。
四天王が一人――白虎蒼真である。
「義昭様、お呼びでしょうか。」
義昭は静かに立ち上がる。
「柳生十兵衛が信長へついた。」
「ならば、お前がその剣を折れ。」
白虎蒼真は口元に笑みを浮かべる。
「柳生十兵衛……。」
「柳生新陰流最強の剣士。」
「面白い。」
光秀が静かに言う。
「油断は禁物です。」
「今の信長には、かつてとは違う仲間たちがおります。」
蒼真は刀の柄に手を添えた。
「ならば、その仲間ごと斬るまで。」
一方、二条御所では。
十兵衛が信長の前で木刀を振っていた。
信長はその太刀筋を見つめる。
「見事だ。」
「まさに天下一の剣だ。」
十兵衛は木刀を納めた。
「まだ未熟です。」
「ですが、この命ある限り、信長様をお守りいたします。」
その時、一羽の鷹が庭へ舞い降りる。
足には一本の矢文が結ばれていた。
秀吉が文を開く。
「上様!」
「挑戦状でございます!」
信長は受け取り、静かに読む。
柳生十兵衛へ。
天下に二人の剣豪は不要。
三日後、比叡の麓にて待つ。
四天王・白虎蒼真。
十兵衛は静かに目を閉じた。
「ついに来ましたか。」
信長は文を畳む。
「十兵衛。」
「これはお前一人の戦いではない。」
十兵衛は首を横に振る。
「いえ。」
「これは剣士として、逃げられぬ戦いです。」
信長は十兵衛の覚悟を見つめ、静かにうなずいた。
「分かった。」
「だが、生きて帰れ。」
十兵衛は深く一礼する。
「必ず。」
三日後。
比叡の麓で、天下を揺るがす剣豪同士の決闘が始まろうとしていた。
四天王・白虎蒼真。
そして、柳生十兵衛。
最強の剣士は、果たしてどちらなのか――。
第三十九章




