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もし信長が生きていたら ― 本能寺から始まるもう一つの天下 ―  作者: マーたん


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信長と十兵衛

柳生十兵衛の一言


私は柳生十兵衛。


世の人々は、織田信長は本能寺で命を落としたと語ります。


だからこそ、生きている信長様の話を聞いた時、すぐには信じることができませんでした。


しかし、人は過去の過ちから学び、変わることができます。


この章では、私自身の目で信長様の覚悟を確かめます。


その答えが、私の進むべき道を決めることになるでしょう。


どうぞ最後までお付き合いください。


――柳生十兵衛

第三十八章 信長と十兵衛


柳生の里を発った十兵衛は、秀吉とともに京へ向かった。


道中、十兵衛は一言も口を開かなかった。


秀吉も無理に話しかけることはせず、静かに馬を進めた。


数日後。


二条御所。


信長は庭で木々を眺めていた。


「上様。」


秀吉が頭を下げる。


「柳生十兵衛殿をお連れしました。」


信長はゆっくりと振り返る。


十兵衛と信長の視線が交わった。


しばらく言葉はなかった。


やがて十兵衛が口を開く。


「……あなたは、本当に織田信長なのですか。」


信長は静かに答えた。


「そうだ。」


「本能寺で死んだはずの男だ。」


その言葉に十兵衛は目を見開く。


「やはり……。」


「あなたも覚えているのですね。」


信長はうなずく。


「あの日の炎も。」


「倒れていった家臣たちも。」


「すべて忘れたことはない。」


十兵衛は拳を握り締めた。


「私は幼い頃から、あの日の話を何度も聞いて育ちました。」


「天下人・織田信長は、本能寺で焼け死んだと。」


「だから、生きているあなたを信じることができなかった。」


信長はゆっくりと十兵衛へ歩み寄る。


「それでよい。」


「疑うことは悪いことではない。」


「余も、もし立場が逆なら同じことを思っただろう。」


十兵衛は信長の目を見つめる。


そこには驕りも怒りもなかった。


ただ静かな覚悟だけがあった。


「私は昔の信長ではない。」


「本能寺で一度命を失いかけ、多くのものを失った。」


「だからこそ、人を守る天下を築くと決めた。」


秀吉が微笑む。


「十兵衛殿。」


「私が申し上げたとおりでしょう。」


十兵衛は静かに木刀を抜いた。


「では……。」


「私の剣を受けてください。」


周囲が緊張に包まれる。


信長は笑みを浮かべた。


「よかろう。」


「言葉だけでは信じられぬなら、剣で語ろう。」


二人は庭へ向かい、互いに構えた。


風が吹く。


葉が舞う。


次の瞬間。


十兵衛が鋭く踏み込んだ。


その一撃を、信長は見事に受け流す。


互いに木刀を交えながらも、二人の表情は穏やかだった。


剣を交えるたびに、十兵衛は感じていた。


目の前にいる男は、かつて恐れられた魔王ではない。


民を守るために戦う、一人の天下人なのだと。


試合が終わる頃には、十兵衛の表情から迷いは消えていた。


彼は木刀を納め、信長へ深く一礼する。


「織田信長様。」


「あなたの覚悟、この柳生十兵衛、しかと見届けました。」


「どうか、私の剣をお使いください。」


信長は穏やかにうなずいた。


「ようこそ、十兵衛。」


「共に新しい天下を築こう。」


こうして柳生十兵衛は、信長の新たな仲間となった。


しかしその知らせは、やがて足利義昭と四天王の耳にも届くことになる。


新たな戦いは、静かに近づいていた。

登場人物


織田信長おだ のぶなが

本能寺の変を生き延びた天下人。柳生十兵衛と対面し、自らの覚悟を剣と心で示す。


柳生十兵衛やぎゅう じゅうべえ

柳生新陰流の剣豪。信長が本能寺で命を落としたという記憶から信長を疑っていたが、対面と立ち合いを経て、その覚悟を認める。


羽柴秀吉はしば ひでよし

信長の忠臣。「猿」の愛称で親しまれる。信長の命を受け、柳生十兵衛を京へ招き入れる。


織田信栄おだ のぶひで

信長と濃姫の嫡男。十兵衛の加入を歓迎し、織田家の未来を担う若武者。


足利義昭あしかが よしあき

信長の天下を崩そうと企む元将軍。十兵衛が信長の味方になったことを知り、新たな策を巡らせる。


明智光秀あけち みつひで

僧侶として身を隠しながら、義昭の命で四天王へ密かに指示を送る軍師。


四天王

足利義昭に仕える最強の四人の武将。


* 黒鬼玄武こっき げんぶ

* 白虎蒼真びゃっこ そうま

* 朱雀炎斎すざく えんさい

* 青龍智玄せいりゅう ちげん

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