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もし信長が生きていたら ― 本能寺から始まるもう一つの天下 ―  作者: マーたん


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生きていた天下人

本能寺は燃え落ちた。


誰もが、織田信長は炎の中で最期を迎えたと信じていた。


しかし、その死は天下を欺くための始まりにすぎなかった。


「死んだ天下人」となった信長は、水面下で反撃の機会をうかがう。一方、明智光秀は新たな天下人として動き出し、羽柴秀吉や徳川家康もそれぞれの決断を迫られる。


歴史の歯車は、ここから大きく動き始める。

第二章 生きていた天下人


本能寺が炎に包まれた夜から三日。


京では「織田信長討死」の知らせが駆け巡っていた。


明智光秀は二条御所へ入り、家臣たちを前に高らかに宣言する。


「天下は新たな時代を迎える。我らが乱を鎮め、日本を治める。」


家臣たちは歓声を上げた。


しかし、その頃――。


京から離れた山奥の寺。


傷を負った信長は静かに目を開けた。


「ここは……。」


傍らには森蘭丸と服部半蔵、そして数人の近習が控えていた。


「上様、ご無事でございます。」


蘭丸の目には涙が浮かんでいた。


信長はゆっくりと起き上がる。


「何日経った。」


「三日でございます。」


信長は黙って立ち上がり、外へ出た。


山の上から京の方角を見る。


黒煙はすでに消えていた。


「余は死んだことになっておるか。」


半蔵が答える。


「はい。光秀は天下人を討ったとして諸国へ使者を送っております。」


信長は静かに笑った。


「そうか。それなら都合がよい。」


蘭丸は驚いた。


「上様?」


「死人ほど恐ろしい者はおらぬ。」


その言葉に、一同は息をのんだ。


信長は地面に木の枝で地図を描き始める。


「光秀は京を押さえた。しかし西には秀吉がおる。」


「東には家康。」


「柴田勝家も北陸にいる。」


一本一本、線を引いていく。


「奴らは、余が死んだと信じて動く。」


信長の目は鋭かった。


「その隙を突く。」


一方、中国地方では羽柴秀吉が毛利軍と対峙していた。


そこへ早馬が飛び込む。


「殿! 一大事にございます!」


「どうした。」


「本能寺にて上様が……明智光秀に討たれたとのこと!」


秀吉の手から軍配が落ちた。


「……何だと。」


しばらく沈黙が続く。


やがて秀吉は静かに口を開いた。


「全軍、講和を急げ。」


「京へ戻る。」


その目には怒りが宿っていた。


「光秀……。」


「貴様だけは許さん。」


さらに三河では徳川家康も知らせを受けていた。


「信長殿が討たれたか。」


家臣たちは動揺する。


しかし家康は冷静だった。


「まずは三河へ帰る。」


「生き残ることが第一だ。」


その頃、山中では信長が家臣たちを集めていた。


「光秀を討つ。」


「しかし、それだけでは終わらぬ。」


「天下を取り戻す。」


蘭丸が力強くうなずく。


「必ず。」


信長は空を見上げた。


「十兵衛……。」


「裏切ったことを後悔させてやる。」


静かな山奥で、再び天下統一への戦いが始まろうとしていた。

第二章では、本能寺を脱出した信長が密かに生存し、天下奪還への第一歩を踏み出しました。


一方で、光秀は信長討伐を天下に知らしめ、秀吉や家康もそれぞれの立場から動き始めます。


史実では決して交わることのなかった「生きている信長」と「信長討死の知らせ」が、これからどのような戦乱を生み出すのか。


次章では、信長の生存を知る者が現れ、天下の行方はさらに予測不能となっていきます。

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