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もし信長が生きていたら ― 本能寺から始まるもう一つの天下 ―  作者: マーたん


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本能寺の変

天正十年六月二日――。


日本史最大の謎とされる「本能寺の変」。


織田信長は、この夜に命を落としたと伝えられている。


しかし、もし信長が本能寺から脱出し、生き延びていたとしたら。


明智光秀の天下は訪れたのか。


豊臣秀吉や徳川家康の運命はどう変わったのか。


これは、歴史の「もし」を描く壮大な戦国歴史小説。


燃え盛る本能寺から、新たな天下への物語が幕を開ける。

第一章 本能寺の変


「敵は本能寺にあり!」


夜の静寂を切り裂くように、明智光秀の声が京の町へ響いた。


天正十年六月二日。


一万三千の軍勢は松明を掲げ、本能寺を幾重にも取り囲む。


「火を放て!」


光秀の命令とともに、無数の火矢が夜空を赤く染めた。


燃え上がる炎。


崩れ落ちる屋根。


悲鳴を上げる僧や小姓たち。


織田信長は静かに目を開いた。


「……来たか。」


近習の森蘭丸は刀を握り締める。


「上様、お逃げください!」


「逃げる?」


信長はゆっくりと立ち上がった。


「天下人たる者が、鼠のように逃げるか。」


槍を手にし、燃え盛る廊下へ歩き出す。


「ならば最後まで戦う。」


その目には、恐れはなかった。


本堂へ押し寄せる明智兵。


信長は一人、槍を振るう。


一突き。


二人。


三人。


次々と兵が倒れていく。


「化け物だ……!」


誰かが叫ぶ。


信長は炎を背負いながら笑った。


「天下布武とは、この程度で終わるものではない!」


しかし敵は多い。


百。


二百。


三百。


いくら斬っても兵は押し寄せる。


蘭丸もまた傷だらけになりながら戦い続けた。


「上様!」


その時だった。


寺の裏手から馬のいななきが聞こえた。


「こちらです!」


現れたのは服部半蔵が率いる伊賀忍びだった。


「徳川殿より密命にございます。本能寺に異変ありとの知らせを受け、救援に参りました。」


信長の目が細くなる。


「家康が……。」


半蔵は頭を下げる。


「今は一刻を争います。」


蘭丸が叫ぶ。


「上様! どうか!」


信長は炎に包まれた本堂を見つめた。


そして静かにうなずいた。


「よい。この命、天下のために預けよう。」


伊賀忍びは煙幕を放つ。


本能寺は黒煙に包まれた。


光秀軍は混乱する。


「信長を逃がすな!」


「探せ!」


だが誰も見つけられない。


地下へ続く古い抜け道。


その存在を知る者はごくわずかだった。


信長は蘭丸、半蔵らとともに闇へ消えていく。


やがて本堂が大きく崩れ落ちた。


光秀は燃え上がる炎を見つめる。


「……終わった。」


家臣たちも歓声を上げた。


「天下は明智殿のものだ!」


「織田信長、討ち死に!」


その知らせは一夜にして全国へ駆け巡った。


だが。


誰も知らなかった。


燃え盛る本能寺の地下深く。


天下人・織田信長は、まだ生きていたのである。

本章では、歴史の転換点である本能寺の変を、「信長生存」という大胆な仮説のもとに描きました。


ここから先、信長は再び天下統一を目指して立ち上がり、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康らとの思惑が複雑に絡み合っていきます。


史実とは異なるもう一つの戦国時代を、ぜひ最後までお楽しみください。

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