黒い旗
第百十六章 登場人物
「黒い旗 ― 日本炎上、海を越えた敵」
織田信長
本能寺の運命を乗り越え、未来と世界を旅してきた主人公。
世界の中心で日本の異変を知り、仲間とともに急いで帰国する。
今回、信長の生存そのものを「歴史の誤り」と考える新織田同盟と対峙する。
誰かに決められた歴史ではなく、自分自身の人生を選ぶことを改めて決意する。
⸻
真田幸村
信長とともに世界へ旅立ち、日本へ戻ってきた武将。
港が襲撃された際には、民を守るため真っ先に戦場へ飛び込む。
信長の考え方にも影響を受け、以前のようにただ正面から突撃するだけではなく、敵の目的を考えて戦うようになってきた。
本能寺では信長の隣に立ち、三人の信長を目撃することになる。
⸻
天狼
冷静沈着な戦闘の達人。
日本に現れた黒い軍勢を見て、未来の黒き兵団とは別の存在だとすぐに見抜く。
敵の動きや罠を分析する能力に優れ、今回も信長たちの護衛役として行動する。
本能寺で現れた「第三の信長」に対して、強い警戒心を抱いている。
⸻
ルーカス・ベルナール
歴史や海外事情に詳しい学者。
世界の中心都市で得た資料を持って日本へ帰還する。
黒い兵士たちがヴァルディア帝国とは別組織であることを突き止め、彼らが「新織田同盟」と名乗っていることを明らかにした。
また、時の鍵の異常にも気づいている。
⸻
アレクシス・ローレン
ヨーロッパから来た船長。
信長たちを世界の中心都市へ案内した人物。
日本へ戻る際にも同行し、港で黒い軍勢と遭遇する。
海と海外事情に詳しく、今後の世界編でも重要な役割を担う。
⸻
銀髪の女性
世界の中心都市で信長たちを待っていた謎の女性。
名前はまだ不明。
世界の歴史や時の門について詳しく、未来の信長が残した記録も知っている。
日本で起きている異変を信長たちへ伝え、帰国を促した。
彼女自身が、未来の信長とどのような関係を持っているのかは、まだ謎に包まれている。
⸻
黒衣の男
今回の事件を裏で操っている謎の人物。
新織田同盟を率いていると考えられている。
「信長が本能寺で死ぬはずだった歴史」を正しい歴史だと考えている一方で、信長を殺すのではなく、信長を天下人として再び祭り上げようとしている。
本能寺で信長を待ち受け、時の門を開いた。
そして彼は、信長たちに衝撃的な言葉を告げる。
「あなたが生き残ることは、最初から記録されていた」
彼が誰から命令を受けているのかは不明。
⸻
新織田同盟
今回、日本各地で暗躍している謎の組織。
黒い旗に織田家の紋を掲げている。
目的は、
「本来の織田天下を復活させること」
そして、
「本能寺の再現によって歴史を正すこと」
とされている。
兵士たちは普通の人間だが、非常に統率されており、日本各地で同時に行動している。
⸻
黒い軍勢
日本各地の港や街を襲撃した謎の兵士たち。
未来の黒き兵団とは異なり、普通の人間で構成されている。
黒い旗を掲げているため、信長たちは当初、黒き兵団と同じ勢力だと考えた。
しかし実際には、新織田同盟という別組織だった。
⸻
ヴァルディア帝国
世界地図に記されていた謎の大国。
黒き兵団と同じ技術を持つとされている。
今回の新織田同盟とは直接的な関係がないことが判明した。
しかし、時の鍵や黒き兵団との関係が疑われており、今後の世界編における最大級の敵となる可能性がある。
⸻
未来の織田信長
以前、信長たちが未来で出会ったもう一人の信長。
過去の信長との対話によって、自分が間違った方向へ進んでいたことを認めた。
現在は別の未来を作るために動いている。
しかし、今回の事件では「未来の信長が過去へ干渉した可能性」が浮上している。
本当に未来の信長が本能寺の歴史を操作したのかは、まだ分からない。
⸻
新登場人物
第三の織田信長
第百十六章の最後に、時の門から現れた謎の人物。
信長と同じ顔を持つ。
しかし、過去の信長でも未来の信長でもない。
本人は、
「お前が選ばなかった未来の織田信長」
と名乗った。
なぜ彼が存在するのか。
どんな未来を生きたのか。
なぜ信長の前に現れたのか。
そして、彼が敵なのか味方なのか――。
すべてが謎に包まれている。
⸻
三人の信長
第一の信長
現在を生きる、本能寺を生き延びた織田信長。
第二の信長
未来を生き、歴史を管理しようとした未来の織田信長。
第三の信長
「選ばれなかった未来」から現れた謎の織田信長。
三人の信長が同じ本能寺に集まったことで、物語は新たな段階へ突入する。
第百十六章
黒い旗 ― 日本炎上、海を越えた敵
世界の中心と呼ばれる都市。
その巨大な広間で、信長は動かなかった。
目の前に広がる世界地図。
その中央付近では、赤い光が不気味に点滅している。
ヴァルディア帝国。
そして――日本。
二つの場所が、まるで呼応するように赤く光っていた。
「日本で何が起きている」
信長の声が広間に響いた。
兵士は息を整えながら答える。
「詳しいことは、まだ分かっていません」
「ただ、各地から同じ報告が入っています」
「黒い旗を掲げた兵士たちが現れた、と」
幸村の顔が険しくなる。
「黒い旗……」
天狼も刀に手をかける。
「黒き兵団か」
ルーカスは地図へ近づいた。
「しかし、おかしい」
「何がだ」
「黒き兵団は未来で作られた存在だったはずです」
「なのに、なぜ今の日本に?」
信長は答えなかった。
その疑問は、すでに信長自身の頭にもあった。
未来で出会った黒き兵団。
歴史そのものを名乗った存在。
そして、時の門。
すべてが一つにつながっている。
しかし、まだ一つだけ分からないことがある。
――誰が始めたのか。
信長は地図に手を置いた。
「日本へ戻る」
銀髪の女性が驚く。
「今すぐですか?」
「ああ」
「ですが、ヴァルディア帝国の調査は?」
「後だ」
信長は即答した。
「日本が攻められているなら、余が戻らぬ理由はない」
幸村が頷く。
「当然です」
天狼も続く。
「日本を守ることが先です」
ルーカスはため息をついた。
「せっかく世界の中心まで来たのに……」
信長が笑う。
「世界を知る旅は、逃げぬ」
「しかし日本は、逃げてくれぬ」
「なるほど」
ルーカスも笑った。
「では、帰りましょう」
ところが、その時だった。
銀髪の女性が静かに口を開いた。
「待ってください」
信長が振り返る。
「何だ」
「日本へ帰る前に、これを見てください」
女性が大広間の中央へ歩いていく。
床に描かれた巨大な円形の紋章。
その中心には、時の鍵と同じ模様が刻まれている。
女性が手をかざす。
すると、巨大な映像が浮かび上がった。
日本。
その姿が空中に映し出される。
信長は目を細めた。
「これは……」
日本列島の各地に、小さな黒い点が現れている。
播磨。
摂津。
京。
尾張。
美濃。
近江。
越前。
そして――
安土。
信長の目が止まった。
「安土……」
黒い点は、どんどん増えている。
「各地に同時に?」
幸村が驚く。
「一つの軍勢ではありません」
天狼が言った。
「複数の部隊が、同時に動いている」
ルーカスが映像を見る。
「しかも、普通の軍隊ではない」
「どうして分かる」
「動き方です」
「街道を使っていない」
「山道でもない」
「まるで、最初から目的地だけを知っているように移動している」
信長は腕を組む。
「目的地は?」
銀髪の女性が答えた。
「すべて同じです」
「どこだ」
女性は日本地図を拡大した。
中央に一つの場所が表示される。
信長は目を見開いた。
「本能寺……」
幸村も絶句する。
「また……本能寺ですか」
天狼の顔が険しくなる。
「歴史を繰り返すつもりか」
信長は何も言わなかった。
本能寺。
自分の人生を変えた場所。
炎に包まれた場所。
光秀との最後の戦い。
そして、未来へ続く旅の始まりとなった場所。
なぜ今になって、再び本能寺なのか。
銀髪の女性が言う。
「黒い軍勢は、本能寺へ集まっています」
「そして――」
「その中心に、一人の人物がいる」
「誰だ」
女性は映像を切り替えた。
黒い外套を着た人物。
顔は見えない。
だが、その手には一振りの刀がある。
刀の鍔には――
織田家の家紋。
信長の目が鋭くなる。
「織田家の紋だ」
「はい」
「だが、織田家の者とは限らない」
「その通りです」
女性は映像を拡大する。
人物の背後には黒い旗。
そこに書かれている文字。
信長は読む。
「……天下再誕」
幸村が呟く。
「天下を、もう一度……」
信長は刀を握る。
「余の天下を奪うつもりか」
女性は首を横に振る。
「違います」
「では何だ」
「あなたの天下を、もう一度作ろうとしている」
信長が振り返る。
「何?」
「その人物は、織田信長が生き残った世界こそ、本来あるべき歴史だと考えています」
「だから、本能寺をもう一度起こす」
「そして――」
女性は続ける。
「今度は、あなたを殺すのではなく」
「あなたを王として祭り上げるつもりです」
信長は笑った。
「くだらぬ」
幸村が見る。
「信長様?」
「余を神にでもするつもりか」
「おそらく」
「ならば、なおさら気に入らぬ」
信長は立ち上がった。
「余は、誰かに作られた天下人ではない」
「自分で選び、自分で進む」
「それが余だ」
銀髪の女性が静かに頷いた。
「だから、あなたに来てほしいのです」
「何?」
「本能寺へ」
信長は少し黙った。
そして――
「分かった」
「戻るぞ」
⸻
世界の中心都市を出る準備が始まった。
しかし、今回は来た時とは違う。
ただ日本へ戻るのではない。
敵の目的が分かっている。
本能寺。
そこへ向かう。
幸村は槍を磨いていた。
「まさか、また本能寺とは……」
天狼が答える。
「歴史というのは、しつこいものだ」
「何度終わったと思っても、また戻ってくる」
ルーカスは資料をまとめている。
「でも、今回は前とは違います」
「何が?」
「信長様は、もう一度本能寺を経験することを知っている」
「そして、敵もそれを知っている」
「つまり――」
天狼が言う。
「今度の本能寺は、罠の可能性が高い」
幸村が頷く。
「ならば、こちらも罠を使えばいい」
信長が聞いていた。
「幸村」
「はい」
「お前、少し変わったな」
「そうですか?」
「ああ」
「以前のお前なら、正面から突っ込んでいた」
幸村は笑った。
「信長様の旅についてきているうちに、少しは賢くなったのかもしれません」
信長も笑う。
「それならよい」
船が出発する。
世界の中心都市が遠ざかっていく。
海は静かだった。
しかし、誰も安心していなかった。
ルーカスは時の鍵を見つめていた。
「変ですね」
「何がだ」
「鍵の光が弱くなっています」
「それは悪いことか?」
「分かりません」
「ですが、今までとは違います」
信長が鍵を見る。
「時の門が閉じようとしている?」
「その可能性があります」
「ならば、急がねばならぬ」
船は速度を上げた。
一日。
二日。
三日。
そして四日目。
海の向こうに、日本の陸地が見えた。
幸村が甲板へ走ってくる。
「日本です!」
信長は立ち上がる。
「帰ってきたか」
しかし――
その瞬間。
空に黒い煙が見えた。
幸村の笑顔が消える。
「……あれは?」
遠くの海岸から煙が上がっている。
一つではない。
二つ。
三つ。
十。
さらに増えている。
信長の顔が険しくなる。
「戦火か」
アレクシスが望遠鏡を覗く。
「港が燃えています」
「誰が攻めている?」
「分かりません」
「しかし――」
アレクシスの声が震える。
「旗が見えます」
信長が望遠鏡を受け取る。
遠くの港。
燃える建物。
逃げる人々。
そして――
黒い旗。
信長は静かに言った。
「予定を変える」
幸村が尋ねる。
「本能寺では?」
「先に港だ」
「民を巻き込ませるわけにはいかぬ」
船は進路を変える。
港へ向かう。
近づくにつれて、戦いの音が聞こえてくる。
銃声。
怒号。
馬のいななき。
刀の音。
そして、燃える家屋。
信長は甲板から飛び降りた。
「信長様!」
幸村たちも続く。
港には黒い鎧を着た兵士たちがいた。
しかし、未来で見た黒き兵団とは少し違う。
顔がある。
人間だ。
「人間……?」
天狼が驚く。
「黒き兵団ではない」
信長が刀を抜く。
「だが、旗は同じだ」
黒い旗。
その中央には、織田家の家紋。
兵士の一人が信長に気づく。
「織田信長!」
信長はその兵士を見る。
「そうだ」
兵士は震えた。
「なぜ……」
「なぜ生きている!」
信長は笑った。
「それは余にも分からぬ」
兵士が叫ぶ。
「撃て!」
銃声が響く。
幸村が前へ出る。
「させるか!」
槍で銃身を弾く。
天狼が敵の武器を叩き落とす。
信長は兵士たちを殺さず、刀の峰で次々と倒していく。
「降れ!」
「お前たちの敵は余ではない!」
兵士たちは怯える。
「しかし、命令が……」
「誰の命令だ!」
兵士は答えない。
信長が近づく。
「言え」
「……黒衣の殿です」
「黒衣の殿?」
「本能寺にいる」
「そこで待っている」
信長は刀を収める。
「やはり本能寺か」
その時だった。
港の奥から、一人の男が歩いてきた。
黒い外套。
織田家の紋。
そして――
顔が見えない。
男は信長を見る。
「お帰りなさいませ」
信長は睨む。
「何者だ」
男は笑った。
「あなたを待っていた者です」
「名を名乗れ」
「まだ、その必要はありません」
男は振り返る。
「本能寺でお待ちしております」
「あなたが来なければ、すべての民が死ぬ」
幸村が怒る。
「脅しか!」
男は笑う。
「違います」
「招待です」
そう言うと、男は煙の中へ消えていった。
信長は追おうとした。
しかし、天狼が止める。
「罠です」
「分かっている」
「ならば?」
信長は炎に包まれた港を見る。
「それでも行く」
幸村が頷く。
「私も行きます」
信長は燃える港を見つめる。
「本能寺で、すべてを終わらせる」
しかし、その言葉とは裏腹に――
信長の胸には、嫌な予感が残っていた。
⸻
その夜。
信長たちは港の近くにある古い寺で休んでいた。
負傷した民たちを治療する。
幸村は子どもたちに食料を配った。
天狼は周辺を警戒する。
ルーカスは黒い兵士から奪った文書を調べていた。
「何か分かったか」
信長が聞く。
ルーカスは顔を上げる。
「この兵士たちは、ヴァルディア帝国の命令を受けていません」
「では誰が?」
「独立した組織です」
「組織名は?」
ルーカスは文書を見せる。
そこには、
『新織田同盟』
と書かれていた。
信長は目を細める。
「新織田同盟……」
「目的は?」
ルーカスは読み上げる。
「『本来の織田天下を復活させる』」
「そして、『本能寺の再現によって歴史を正す』」
幸村が怒る。
「本能寺の再現で歴史を正すだと?」
天狼が言う。
「つまり、奴らは本能寺を歴史の儀式にしている」
信長は文書を見る。
そこにはさらに続きがあった。
『信長は本能寺で死ななければならなかった』
『しかし、何者かによって歴史が変えられた』
『我々はその誤りを正す』
信長の目が鋭くなる。
「……余が生き残ったことを、誤りだと言っているのか」
ルーカスは頷く。
「そのようです」
信長はしばらく黙った。
そして、文書を握りつぶした。
「ふざけるな」
幸村が見る。
信長の声は静かだった。
「余が生きたことが誤りなら」
「幸村と出会ったことも」
「天狼と出会ったことも」
「ルーカスと出会ったことも」
「未来へ行ったことも」
「世界へ来たことも」
「すべて誤りだと言うのか」
誰も答えない。
信長は立ち上がった。
「ならば、余はその誤りを守る」
幸村が笑う。
「信長様らしいです」
「当たり前だ」
信長は外を見る。
夜空には星が出ていた。
「余の人生は、余が決める」
「誰にも決めさせぬ」
⸻
翌朝。
信長たちは本能寺へ向かった。
京の街には異様な緊張が漂っていた。
人々は信長を見ると驚く。
「信長様……?」
「生きていたのか」
「また戦が始まるのか」
信長は何も答えず、歩き続ける。
本能寺が近づく。
門の向こうには――
無数の黒旗。
そして、大勢の兵士。
幸村が槍を構える。
天狼が刀を抜く。
ルーカスは時の鍵を握る。
信長は一人で前へ出た。
「余が織田信長だ」
門の上から声が響く。
「お待ちしておりました」
黒衣の男が姿を現す。
信長は顔を見る。
その瞬間――
信長の目が見開かれた。
「……お前は」
幸村も驚く。
「知っているのですか?」
信長は答えなかった。
男が笑う。
「久しぶりですね」
「織田信長」
信長は刀を抜く。
「なぜ、お前がここにいる」
男は外套を脱いだ。
その顔が明らかになる。
かつて信長たちが出会った人物。
本能寺の運命を知っていた者。
歴史の裏側で何度も姿を現していた者。
そして――
信長が最も疑っていた人物。
男は言った。
「すべての始まりは、本能寺でした」
「そして、すべての終わりも本能寺です」
信長は睨む。
「違う」
男が首を傾げる。
「何がです?」
信長は刀を構えた。
「本能寺は終わりではない」
「余にとっては、始まりだった」
男は笑った。
「ならば――」
「もう一度、始めましょう」
本能寺の門が開く。
その奥には、巨大な黒い祭壇。
中央には時の鍵と同じ紋章。
そして、その上に置かれていた一枚の古い書物。
表紙には――
『織田信長・生存記録』
と書かれていた。
信長は息を呑む。
「……なぜ、そんなものが」
男は答える。
「あなたが生き残ることは、最初から記録されていたのですよ」
「何だと?」
「本能寺であなたが死ぬ歴史」
「本能寺であなたが生き残る歴史」
「その二つを作った者がいる」
信長の顔が変わる。
「誰だ」
男は祭壇の奥を指差した。
「あなた自身です」
沈黙。
幸村が言葉を失う。
天狼も動かない。
ルーカスだけが、時の鍵を見つめていた。
鍵が激しく光っている。
「まさか……」
ルーカスが呟く。
「未来の信長が、過去へ干渉していた?」
男が笑う。
「さあ」
「答えは、これからです」
その瞬間。
本能寺の空が黒く染まった。
鐘が鳴る。
一度。
二度。
三度。
そして――
信長の目の前に、巨大な時の門が開いた。
その向こうに見えたのは、
過去でもない。
未来でもない。
まだ存在していない世界だった。
男が言う。
「織田信長」
「今度こそ選んでください」
「天下を取るか」
「歴史を守るか」
「それとも――」
「歴史そのものを作り直すか」
信長は静かに刀を構えた。
「答えは一つだ」
幸村が横に並ぶ。
天狼も並ぶ。
ルーカスも時の鍵を握る。
信長は門を見つめた。
「余は、余の道を行く」
「歴史に従うつもりもない」
「歴史を壊すつもりもない」
「ただ――」
「生きる」
その言葉と同時に、時の門が大きく開いた。
そして、その向こうから――
信長たちがまだ一度も見たことのない軍勢が現れた。
黒い鎧。
白い旗。
そして中央に立つ、一人の男。
その男は信長と同じ顔をしていた。
しかし、未来の信長とも違う。
信長は呟いた。
「……三人目の余?」
男は笑う。
「そうだ」
「私は――」
「お前が選ばなかった未来の織田信長だ」
本能寺に、再び炎のような赤い光が走った。
信長は刀を握り直す。
幸村も槍を構える。
天狼は目を細める。
ルーカスは時の鍵を見つめる。
そして――
三人の信長が、同じ場所に立った。
過去の信長。
未来の信長。
そして、まだ誰も知らない第三の信長。
歴史を巡る戦いは、ここからさらに大きく動き始める。
それぞれの信長の意思
三人の信長が、ついに同じ場所へ集まりました。
一人目は、今を生きる信長。
本能寺で死ぬはずだった運命を乗り越え、仲間と出会い、未来を見て、世界へも足を踏み入れた信長です。
彼が望むのは――
「誰かに決められた歴史ではなく、自分自身の意思で生きること」。
二人目は、未来の信長。
多くの犠牲を見たことで、二度と同じ悲劇を起こしたくないと考え、未来そのものを管理しようとしました。
しかし、過去の信長との出会いによって気づきました。
未来は支配するものではない。
人々が自分で選び、作っていくものなのだと。
そして三人目は、選ばれなかった未来の信長。
まだ、その正体も目的も分かりません。
彼がどんな人生を歩み、何を失い、何を求めているのか。
それはこれから明らかになっていきます。
ただ一つ分かっているのは――
三人とも「信長」でありながら、同じ答えを持っているわけではないということ。
天下を求める信長。
未来を守ろうとした信長。
そして、別の未来を選んだ信長。
三人の意思が交わった時、
本能寺の歴史は、もう一度大きく動き始めます。
「自分なら、どの道を選ぶのか」
それが、三人の信長を分ける最大の違いなのかもしれません。




