第九話 訪日使節団(二)
翌朝。
札幌市内のホテルを出たジェプニア共和国訪日使節団は、日本側が用意した車に乗り込んだ。
向かう先は、新千歳空港である。
車列は札幌の市街地を抜け、南へ向かう。
中心部から離れるにつれて、高層建築は次第に減っていく。
それでも、道路には多くの自動車が走っていた。
「街から離れても、車が多いですね」
「このあたりは札幌と空港を結ぶ主要幹線道路ですから」
「なるほど」
使節団員は窓の外を眺めた。
「日本の工業力と経済力が感じられます」
しばらくして、空港へと続く道路標識が見えてきた。
その先に、新千歳空港はあった。
空港待合室。
出発まで時間があるため、一行は窓から空港の様子を眺めて待っていた。
窓の外では、旅客機が次々と動いている。
「あれが日本の飛行機ですか」
「はい。旅客機になります」
一機が滑走路へ向かっていく。
続いて、別の旅客機が離陸した。
「随分と多いですね」
「この空港は、国内でも特に大きな空港ですから」
また一機、別の旅客機が動き始める。
使節団員たちは、しばらく黙ってそれを眺めていた。
「……速そうな見た目だとは思ったが、想像以上だ」
技術担当者は、飛行機が遠ざかっていくのを目で追った。
やがて搭乗の案内が入った。
一行は係員に案内され、搭乗橋を通ってチャーター機へ向かう。
その途中だった。
窓の外の遠くを、一機の飛行機が上昇していくのが小さく見えた。
「……あれは?」
つい先程まで見ていた旅客機とは、明らかに違う。
後ろに光の尾を、二本引いていた。
「……」
「……アルヴェインの戦闘機に似ています」
「……ああ」
戦闘機が見えなくなってもなお、目線を離すことができなかった。
使節団の技術担当者たちが目を細める。
代わりに、他の使節団員が外務省の案内役に尋ねる。
「あれも、日本の航空機なのですか……?」
「ええ。戦闘機です」
「戦闘機……」
一行は再び、視線を戦闘機の消えた方へと向けた。
「……どれほどの速度が出るのですか?」
「F-15Jなら、最大で音速の2.5倍程度です」
「音の2.5倍……」
使節団員たちは、ただ空を見つめることしかできなかった。
使節団は予定通り旅客機へ乗り込んだ。
一行を乗せたチャーター機が離陸し、上空へと上がっていく。
北海道の白い大地が、次第に遠ざかっていった。
およそ2時間が経過し、眼下の景色が一変した。
海岸線が見える。
その向こうには、広大な灰色の平野が広がっている。
「……」
建物が、どこまでも続いている。
農地や林も、ところどころ残っていた。
しかし、それすらも都市の中に埋め込まれたもののように見える。
窓の外を眺めていた使節団員が、ゆっくりと呟く。
「あれが、日本の首都なのか……」
地球世界において、そしてこの世界においても最大の大都市圏が、日の光を浴びながら眼下に広がっていた。
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