第四十四話 未知の国
セレノア王国 王都カリストラ。
「駐ジェプニア大使館の者が、セレノア語でも日本人と直接話が出来たとの報告がございます」
「ほう。言葉が通じるというのか」
「はい。日本語とジェプニア語は、文法も語彙もよく似ているとのことで、文章についてもジェプニア語を解する者であれば、ある程度は読み解けるようです」
「ならば、ジェプニア語を読める者を用意すればよかろう」
「それがよろしいかと存じます。ただ、ジェプニア共和国大使館からも人員を派遣してもらった方が確実ではございませんか」
「なるほど。先方は仲介を申し出ておるのだ。通訳の派遣も頼んでみるのがよかろう」
「実は、ジェプニア側からは既に、日本使節団に通訳を派遣するとの申し出が届いております」
「日本側にも通訳が付くのか」
「はい。日本人にとって、我が国の言葉は未知のものですので。会談の際には、ジェプニア大使館の者を日本側にも派遣するとのことです」
「それならば、こちらにも一人、派遣してもらえんか。日本側に付く者とは別に、我が国の者にも説明できる人間がいた方が良いだろう」
「確かに、その方が行き違いも少なくなりましょう。大使館に追加の派遣を依頼いたします」
「うむ。そのように計らえ」
「かしこまりました」
その日、イレーネは第二王子ニコラウスと共に、王太子アレクシウスへの外交報告に同席していた。
「ジェプニア共和国の仲介のもと、ニホン国との交渉が始まることとなりました」
「分かった」
アレクシウス兄上は短く答えた。
隣にいたニコラウス兄上が興味を示した。
「ジェプニアが仲介を引き受けるほどの国か。興味深いじゃないか」
「ジェプニアとは、それなりに関係を築いているみたいだな」
「はい。近頃ジェプニアは、各国と日本の外交関係を仲介しているようで……」
そう。思い出した。
先日、王都の商人から贈られた透明なガラス器。
あれを作った国が、まさにニホンだった。
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