第四十三話 東方の玻璃器
セレノア王国 王都カリストラ。
王宮の一室で、第二王女イレーネ・アルカイア・セレノアは、侍女が運んできた品を眺めていた。
「殿下、こちらは商人のニコラス・ヴェルニスより献上された品でございます。北辰国を経由して手に入れたとのことです」
侍女が布を取り払うと、透明なガラス器が姿を現した。
「ガラス器ね。どこの国で作られたものなの?」
「ニホンという国だそうです。ジェプニア共和国を通じて北辰国に渡り、そこから商人が入手したと聞いております」
「ニホン……聞いたことのない国名ね」
イレーネは器を手に取り、窓から差し込む光にかざした。装飾らしい装飾はない。だが、ガラスは澄み切っており、器の縁も滑らかに整えられていた。
「綺麗なガラスね。縁も滑らかだし、歪みも少ないわ」
「商人も、珍しい品だと申しておりました」
「これを作ったのは、腕のいい職人なのかしら」
「そこまでは分からないそうです。商人も、ニホンについては詳しく存じないようでございます」
「そう……。私も少し、興味があるわ」
イレーネは器を傾け、縁の厚みを確かめた。
「ガラス工房の職人に見てもらえるかしら。どうやって作ったのか、聞いてみたいの」
「かしこまりました。手配いたします」
イレーネはもう一度、ガラス器を光にかざした。透明な器には、余計な飾りも、目を引く意匠もない。
それでも暫くの間、彼女は手元から目を離せなかった。
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