第四十二話 石炭危機
北海道夕張市。
夕張炭鉱第一立坑付近。
ポンプ室で作業員が制御盤のスイッチを入れ、駆動音が低く響く。
排水管が小刻みに震え始めた。
「ポンプ、始動しました」
「吐出圧は?」
「正常値です」
現場責任者は計器を確認した。
「よし。坑内の水位の監視を続けろ。入坑できるかの判断はその後だ」
「了解」
首相官邸。
関係閣僚が出席する会議で、エネルギー供給の現状について、とある問題が報告された。
「電力大手各社によりますと、一部の石炭火力発電所で稼働停止が始まっているとのことです」
「電力不足には、まだ陥っていないんだな」
「はい。ただ、発電用石炭の在庫は多くありません」
「石油と違って、石炭は備蓄していないからなあ……。休止中の炭鉱はどうなっている」
「早い所では、あと二週間ほどで出炭を再開できるそうです。需要を満たすには、まだ足りませんが」
「工業向けの原料炭も必要です」
「ああ。再開できそうな炭鉱は、可能な限り急がせてくれ。必要な支援は惜しまない」
同じ頃、夕張炭鉱。
ポンプ室では、排水ポンプが休むことなく稼働していた。
「水位は下がっています。ガス濃度にも、今のところ異常はありません」
「よし。引き続き監視を続けろ。入坑の判断は、他の地点でも確認が終わってからだ」
排水管から吐き出された水が、側溝を勢いよく流れていた。
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