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第四十一話 根無し草

 四月下旬 東京都内。


 大学近くのコンビニで、外国人留学生のグエンは深夜勤務を終えた。


 ああ、今日も疲れたなぁ。帰ったら少し寝て、大学に行かねば。


 国元の両親からの送金は転移以来、完全に途絶えてしまった。

 貯金は減るばかり。家賃と食費を払うには、アルバイトを続けるしかなかったべ。


 最近、授業を休む留学生が増えてきた。みんなも苦労してるみたいだ。大丈夫か。


 あたしも卒業して国に帰ったら、都会に出て働くつもりだったのに。


 ……これから、どうしたらいいんだべ。



 首相官邸。


 関係閣僚が出席する会議で、在日外国人への対応が議題に上がった。


「国内に滞在する外国人への対応について、ご報告します」


 担当大臣が資料を開いた。


「転移時点から、国内には約500万人の外国人が滞在していました。観光客、留学生、永住者、就労者など、その事情はさまざまです」


「現在、特に問題となっているのは?」


 首相が尋ねた。


「観光客など、一時滞在者の生活費です。帰国できず、宿泊費や食費が尽きた人も多く、自治体や支援団体への相談も増えています」


「留学生はどうか」


「母国からの送金が途絶え、アルバイト収入で生活を維持している者がいます。生活費を稼ぐため、授業への出席が難しくなっているとの報告もあります」


「今年の春に卒業した者たちは?」


「帰国できず、母国の採用予定企業とも連絡が取。国内で就職を希望する者もいますが、在留資格の整理が必要です」


 厚生労働大臣が発言した。


「人手不足が続いている業種はあります。就労を希望する者と企業を結びつける仕組みは、検討できるでしょう」


「ただし、在留資格ごとに認められる活動は異なります」


 法務大臣が応じた。


「一律に就労を認めることはできません。帰国できない事情を踏まえ、個別の対応を検討する必要があります」


「自治体の負担はどうなっている」


 首相が総務大臣に尋ねた。


「住居や食料の確保に加え、医療、教育、在留手続きなどの相談が増えています。自治体によって対応能力にも差があります」


 財務大臣が資料をめくった。


「緊急支援を続けるにしても、財源には限りがあります。滞在が長期化すれば、現在の措置をそのまま続けることは困難です」


「支援を縮小すれば、どうなるか」


「現在の生活を維持できなくなる者が出てくるでしょうし、自治体の負担もさらに大きくなるとの予測です」


 総務大臣が答えた。


「外国人の路上生活者が増えれば、衛生や治安の問題に発展する可能性もあります。問題が深刻化してから対応するのでは、かえって費用がかかりかねません」


 首相は各大臣の資料に目を通した。


「緊急支援をいつまでも続けることはできない。しかし、打ち切れば済む話でもない、ということか」


「はい。生活を立て直せる者には、自立に向けた道筋を用意すべきです」


 厚生労働大臣が答えた。


「就労希望者の実態を把握し、国内企業の求人と照合する仕組みを検討します。大学や自治体との連携も必要です」


「在留資格の扱いについては、法務省で整理してくれ」


 首相は法務大臣に指示した。


「自治体への支援策も検討してください。対応を現場任せにはできません」


 総務大臣がうなずいた。


「財源も含め、具体案をまとめます」


 財務大臣が応じた。


 会議は、各省庁が具体策を検討することを確認して終了した。


 外国人への緊急支援は継続されることとなったが、長期滞在を前提とした生活支援や就労対策は、今後の課題として残された。

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