第三十話 魔王領(三)
調査地点に到着すると、研究者たちは掘削機の設置を始めた。
「まずは地層の確認から入ります」
「はい」
「掘削開始」
ドリルが回転を始める。
「カッティングス、上がってきました」
「深度を記録」
「岩質は?」
「砂岩です」
「次」
「泥岩」
「記録して」
「深度、200m」
「掘進率は?」
「大きな変化ありません」
「泥水は?」
「正常です」
「ガス反応は?」
「ありません」
「そのまま続けてください」
「予定深度です」
「掘削を止めてください」
「はい」
「この区間でコアを取ります」
「了解」
コアが引き上げられる。
「砂岩層ですね」
「割れ目があります」
「孔隙率は?」
「現場では判断できません。試料を持ち帰って分析します」
「分かりました。深度を記録して保管してください」
「はい」
「第一地点、終了です」
「次へ向かいます」
第二地点。
「掘削開始」
「カッティングス、上がってきました」
「……ちょっと待ってください」
「どうしました?」
「油徴があります」
「どの深度ですか?」
「320m付近です」
「試料を分けてください」
「はい」
「蛍光を見ましょう」
「反応、あります」
「強さは?」
「それほど強くありません」
「ガスは?」
「今のところ、大きな変化はありません」
「320m前後を重点的に記録しましょう」
「了解」
「ここは油層の可能性がありますか?」
「まだ何とも言えません。油徴が出た、という段階です」
「分かりました」
第三地点。
「二か所目と同じ地層が出ています」
「深度は?」
「300mを越えました」
「カッティングスを見せてください」
「どうぞ」
「……油徴があります」
「二か所目と同じですか?」
「似ています」
「深度は?」
「318mです」
「ほぼ同じですね」
「地点間の距離は?」
「約2kmです」
「2km離れた地点でも同じ深度から油徴が出るなら……」
「地下で同じ構造につながっている可能性があります」
「断定は?」
「まだできません。第四地点を調べましょう」
第四地点。
「掘削開始」
「深度、300メートル」
「記録」
「はい」
「320m」
「カッティングスは?」
「砂岩です」
「油徴は?」
「……まだ明確ではありません」
「続けてください」
「330m」
「……待ってください」
「どうしました?」
「泥水に変化があります」
「どんな変化ですか?」
「色が濃くなっています」
「流量は?」
「変化ありません」
「カッティングスを見せてください」
「はい」
「……油が出ています」
「油徴の強さは?」
「二か所目、三か所目より明らかに強いです」
「ガス反応は?」
「出ています」
「深度」
「337m」
「記録してください」
「はい」
「掘削を止めましょう」
「了解」
掘削が停止する。
「……泥水が上がっています」
「流量は?」
「増えています」
「圧力も変化しています」
「坑口を確認してください」
「はい」
「黒い液体が出ています」
「掘削機の油では?」
「機械側の漏れではありません」
「採取します」
「気をつけて」
「……」
「どうです?」
「炭化水素臭があります」
「試料を確認します」
「二か所目、三か所目と比較してください」
「……似ています」
「深度も近い」
「もう一度、ガス反応を」
「反応しています」
「なら――」
ボコッ。
「おおっ!」
「下がってください!」
坑口から黒褐色の液体が噴き上がる。
「石油だ!」
「第四地点でも確認!」
「ここを含めると、既に三か所で油徴を確認しています」
「これで三か所目か」
「しかも、ほぼ同じ深度です」
「地質構造を合わせてみてください」
「分かりました」
「……」
「どうです?」
「この辺り一帯に、同じ油層が広がっている可能性があります」
「埋蔵量は?」
「まだ分かりません。追加の試錐と地質調査が必要です」
「なるほど」
「ただ……これで、石油の存在は確認できました」
「……」
「日本にとって、とても大きな発見になりますね」
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