第二十六話 装甲車
日本人調査団が船から降りてくるのを、我々は北辰国の港で待っていた。
先に降りてきたのは、日本政府の役人のようだ。
その後ろから、科学者らしき人物たちが続いている。
さらに日本軍……自衛隊。
不思議な服の模様だが、あれは森の中で身を隠すためのものだろうか。
最後に、見たことのないような車両が降りてきた。
履帯で走る車体に、小さな砲塔が載っている。
……戦車か?
日本に滞在しているという技官の報告書について、上官から聞いたことを思い出した。
日本には戦車がある。
自分は……いや、私の上官を含め、多くのジェプニア人はその実物を見たことがない。
これが、その戦車なのだろうか。
車体はかなり大きい。
その割に、砲は小さく見える。
戦車というのは、なるたけ大きな砲を載せて走るものではないのか。
車両のそばで何かしている兵士の一人に声をかけてみた。
「よろしいですか?」
「はい。どうかされましたか?」
「こちらは日本の戦車ですか?」
「あ~……実はこれ、戦車じゃないんですよね」
「……え?」
思わず目の前の装甲車を見る。
履帯。
装甲。
砲塔。
どう見ても、我々の想像する戦車そのものでしかない。
「戦車ではない?」
「はい。89式装甲戦闘車になります」
「装甲戦闘車……」
そのような区分は聞いたことがない。
「兵員の輸送を主目的とする車両です」
「歩兵を乗せて移動するためですか……」
それなら理解できる。
「だから、戦車ではないのですね」
「そういうことです」
もう一度、89式装甲戦闘車を見る。
やはり戦車にしか見えない。
少なくとも、ジェプニアであれば戦車として扱うだろう。
しかし報告書にあったという日本の戦車は、これとはまた違った車両なのか。
それは、どんなものだろう。
「伊藤」
後ろから少佐の声がした。
「はっ!」
「こっちだ。ついて来い」
「了解しました」
89式装甲戦闘車に背を向け、私は少佐のもとへ向かった
ご意見・ご感想、誤字脱字のご報告いただけると幸いです。




