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第二十一話 生命線

 経済産業省。


「しかしあの会社、よく一か月で人工衛星を作ったよな」


「既存の衛星技術や部品をかなり流用した緊急仕様だと聞いています。それでも異例の速さですが」


「まあ、普通なら一か月では無理だよな」


「でしょうね」


「それで、その衛星はちゃんと動いてるのか?」


「資源エネルギー庁から報告が来ています。初期観測データの解析も進んでいます」


「何か分かったか?」


「鉱物資源が存在する可能性の高い地域を絞り込めます」


「鉱山が見えるわけじゃないのか」


「そこまではできません。地表の反射特性などから、地質や鉱物の分布を推定するものですから」


「石油は?」


「石油も同様です。衛星だけでは判断できません。最終的には地質調査と掘削が必要になります」


「なるほど」


「ただ、興味深い地域があります」


「どこ?」


「北辰国の北です」


「北辰国の北?」


「はい」


 資料が示される。


「鉄鉱床が存在する可能性があります」


「鉄か」


「それだけではありません。石油と天然ガスについても、存在を示唆するデータが出ています」


「……本当か?」


「現時点では、あくまで可能性です。ただ、調査対象としてはかなり有望です」


「場所は?」


「この辺りです」


「……」


「……魔王領じゃないか」


「そうなります」


「北辰国は、ここを領土として主張していないんだよな?」


「確認する必要があります」


「ジェプニアの人に聞こう」


「外交官の方ですか?」


「法的なことは外交官、現地の危険性は、あの技術士官の人に聞けばいい」


「分かりました」



 翌日。


「急な呼び出しで、申し訳ありません」


「いえいえ、とんでもございません」


「どのようなご用件ですか?」


「少しお聞きしたいことがありまして」


 日本側が、以前ジェプニアに提供された地図を広げる。


「この地域についてです」


「……魔王領ですね」


 ジェプニア共和国の外交官が地図を見る。


「この地域に、鉄や石油、天然ガスが存在する可能性が出てきました」


「なるほど」


「まず、法的な問題を確認したいのですが」


「はい」


「ここは、どこの国の領土なんでしょうか?」


「どこの国でもありません」


「北辰国ではないんですか?」


「はい」


「ジェプニアも?」


「もちろんです」


「では、魔王領というのは?」


「魔物の多い地域を指す呼び方です」


「国ではない?」


「少なくとも、魔王領全体を一つの国家が統治しているわけではありません」


「魔物が土地を領有している、ということでもないのですね?」


「魔物も所詮、動物に過ぎませんから」


「つまり、誰の領土でもない?」


「現状では、その認識で問題ありません」


「なるほど……」


「もう一つあります」


「何でしょう?」


「この地域の安全性についてです」


「安全性、ですか?」


「はい」


 外交官が隣を見る。


「彼に聞くのが良いでしょう」


「では、お願いします」


「承知いたしました」


 ジェプニアの技術士官が口を開く。


「魔王領に入る場合、どの程度の危険があるんでしょうか?」


「場所によります」


「魔物ですか?」


「はい」


「北辰国を訪れている外交官からの報告にあったのですが、白牙狼という魔物は、どの程度危険ですか?」


「白牙狼なら、大型の狼と考えればいいでしょう」


「魔物なのに?」


「魔物だからといって、必ずしも強いわけでも、魔法を使うわけでもありませんので」


「銃は効くのですか?」


「魔物の種類にもよりますが……白牙狼なら、共和国軍の小銃で対処できます」


「ボルトアクション式のライフル銃ですね」


「はい。ただ、白牙狼は群れを作る上に、大きく、速く、頭も良い。単独で遭遇すると危険です」


「なるほど」


「それよりも問題は、もっと大型の魔物です」


「例えば?」


「下級竜などです」


「竜……」


「はい」


「白牙狼とは、全然違うんですか?」


「ええ。竜になると、普通の小銃や機関銃では撃破が難しくなります」


「それほどですか?」


「火砲の使用を想定したほうがいいでしょう」


「分かりました」


「……まずは、詳しく調べる必要がありそうだな」


 ジェプニアの外交官と技術士官は頷いた。

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