第二話 接触(一)
首相官邸。
「国外との連絡状況は?」
「各国の大使館、総領事館と連携して調査を進めています」
「それで、どこか連絡はついたのか?」
「どこも復旧していないとのことです」
「そうか……」
「各国大使館からは、日本政府に対して自国民の安全確保について問い合わせが来ています」
「こちらからも伝えておけ」
「何をでしょうか?」
「日本政府は、国内に滞在している外国人の安全確保を継続する。各国大使館についても、通常通り活動できるよう必要な支援を行う、と」
「承知しました」
「本国との連絡が途絶えている以上、大使館まで機能不全にするわけにはいかない」
「はい」
「現状がわからない今、味方は多いほうがいい」
東京 市ヶ谷
防衛省。
「北方の通信状況について、報告があります」
「どうぞ」
「北海道北部から東部において、複数の外国軍用通信と思われる電波を確認しています」
「外国軍?」
「はい」
「国籍は?」
「現在、解析中です」
「日本の通信網ではないのか?」
「使用されている周波数帯や通信方式が、確認できている国内のものとは一致しません」
「……続けて」
「さらに、択捉島方面から発信されていると推定される通信があります」
「択捉島?」
「はい」
「ロシア軍の基地か?」
「その可能性が高いと考えています」
「通信内容は?」
「現時点では解析できていません。択捉島の軍事施設には、現在も部隊が駐留していると考えられます」
「他に何かあるか?」
「暗号通信と見られる電波を、複数の方向へ発信しています」
「向こうも混乱しているのかもしれないな」
「少なくとも、何かしらの活動を継続しているものと思われます」
「樺太も、択捉島もあるのか……」
「はい」
「では、朝鮮半島と台湾だけが消えたということなのか?」
「どの国ともコンタクトが取れていない以上、断定できません」
「……調査範囲を広げろ」
「了解しました」
「それから、北方海域の警戒を強化する。正体不明の軍艦や航空機を発見した場合も、先制攻撃はしないように」
「はい」
「どちらも何も分かっていない以上、余計な誤解を生むな」
北海道稚内市沖合
海上保安庁・巡視船つがる。
「2時の方向、船影を捕捉」
「どこだ?」
「方向〇四五、こちらへ接近しています」
「船体は確認できるか?」
「ロシアの沿岸警備隊ではなさそうです」
「軍艦か?」
「大きさと塗装から、そう思われます」
「自衛隊に報告。速度は?」
「約10ノットと低速です」
「武装は?」
「……」
「どうした?」
「大口径砲を確認。連装砲です」
「大口径砲だと?」
「不明艦より発光信号」
「欧文じゃないな」
「……和文です」
「内容は?」
「『ワレ、ジェプニア共和国海軍艦艇、アヅマ。ワレ、貴艦に対し攻撃の意図なし』と」
「……ジェプニア共和国?」
「聞いたことのない国名です」
「次いで、『貴国との接触を希望する』と」
「日本語ということは、向こうもこちらを日本の船だと認識しているのか?」
「恐らくはその通りかと」
「まずは応答しよう。『こちら日本国巡視船つがる。本船は貴艦への攻撃の意思を有さない』と送れ」
「了解」
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