第一話 消失
日本海上空、海上自衛隊P-1哨戒機。
「……GPS、未だ復旧しません」
「受信状態は?」
「変わりません。衛星からの電波が捕捉できません」
「慣性航法装置は?」
「正常です。現在位置の推定に問題ありません」
「レーダー手、変化はあるか?」
「……何もありません」
「何も?」
「はい。この位置であれば、通常なら朝鮮半島がレーダーに映るはずなのですが……」
「海岸線は? 目視できるか」
「同じです。水平線まで海です」
「韓国側との通信は?」
「つながりません」
「……もう一度、レーダーを確認」
「再度確認します。陸地の反応、ありません」
「航法上の位置は間違っていないんだな?」
「予定航路上です」
「じゃあ、こっちが動いたわけじゃないんだな」
「その可能性は低いと思います」
「……了解。記録を続けろ」
「はい」
20XX年2月某日。
この日の未明、日本にいた人間のほぼ全員が揺れを感じた。
しかし、地震計に地震波は記録されていなかった。
沖縄県与那国町
陸上自衛隊 与那国駐屯地。
「今日は天気がいいから、台湾が見えるかもな」
「そうですね。視界もかなり良いです」
「……あれ?」
「どうしました?」
「見えるか?……台湾」
「……見えません」
「双眼鏡を貸せ」
「こちらを」
「……何もないな」
「はい」
「海しか見えないぞ」
首相官邸、危機管理センター。
「岩国から離陸したP-1哨戒機の報告によりますと、朝鮮半島を視認できなかったとのことです」
「韓国が沈んだのか?」
「そんなことが現実にあってたまるか」
「それより、各国大使館から本国との連絡が停止したとの問い合わせが殺到しています」
「会議中、失礼します。三沢のF-35のパイロットが、宗谷海峡上空からサハリンを目視で確認したとの報告がありました」
「樺太か」
「韓国が無くなって、なぜ樺太が残っている」
「ですから、各国大使館への対応を先に考えるべきです」
「そうだ。まずは現状確認を続けると共に、国内がパニックに陥らないよう、対策を考えなければならない」
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