第十四話 帰郷
羽田空港。
ジェプニア共和国使節団は、帰国する者と日本に残る者に分かれていた。
日本に残るのは、両国の連絡を担当するために選ばれた数名だった。
「あと10分ほどで出発時間です。挨拶は済まされましたか?」
「少々、お時間をいただけますか」
帰国する使節団員が、残留する仲間たちへ声をかける。
「しばらく連絡は取れないだろうけど、達者でな」
「ああ。向こうに着いたら、こっちで見たことを全部報告してくれ」
「任せてくれ」
別の団員が、残留組へ向き直る。
「日本のこと、もっと調べておいてくれよ」
「元からそのつもりだ」
「特に科学。なるべく詳しくな」
「それぐらい分かってる」
「じゃあな」
「ああ。また会おう」
帰国組は搭乗口へ向かっていった。
残された隊員たちは、その背中を見送る。
「……あいつら、何も知らないんだな」
「まあな」
二人は笑った。
帰国する使節団を乗せた航空機は、羽田空港を離陸した。
向かう先は稚内空港だった。
稚内港。
航空機で到着したジェプニア使節団は、港へ移動した。
そこには、迎えの吾妻が停泊していた。
「こちらが、今回お渡しするものです」
日本側の担当者が、一つの箱を示した。
「これは?」
「短波無線通信装置です」
「……」
使節団の代表が箱を開ける。
無線機本体と電源装置、アンテナなどが収められていた。
「これを、我々に?」
「はい。衛星通信が使用できない状況ですので、今後我が国との連絡手段として活用してください」
「なるほど……」
代表は、しばらく無線機を見つめた。
そして、羽田空港での会話を思い出す。
――ああ。また会おう。
「……そういうことだったか」
「何か?」
代表は小さく笑った。
「いえ、こちらの話です」
日本側の担当者は不思議そうな顔をした。
「それでは、使い方をご説明します」
「お願いします」
担当者が、無線機の操作方法を説明していく。
「通常は、こちらの周波数帯を使用します。毎日、決められた時間に通信を行う予定です」
「緊急時は?」
「こちらです」
「分かりました」
「葦原に残るこちら側の連絡員も、同様の通信設備を使って連絡できるようになっています」
「便利ですね」
説明を終えると、ジェプニア側の代表が日本側へ向き直った。
「これで、帰国後も日本との連絡を続けられるのですね」
「はい。今後とも、よろしくお願いします」
やがて、ジェプニア使節団は艦へ乗り込んでいった。
岸壁から、日本側の関係者が見送る。
吾妻がゆっくりと港を離れ、北へ進んでいく。
同日、日本の使節団もジェプニア側の手によって稚内へ送られ、翌日には帰京した。
こうして、最初の相互訪問は終わった。
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