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第38話 新しい役職表

翌週、港役所の壁に新しい役職表を貼り出した。


 通商長エレナ・ヴァイス。食卓検査補佐ノーラ・ベルン。倉庫管理主任クララ・エッダル。公開料金掲示責任者ラース・ホフ。保険登録簿の担当欄まで、今回は最初から埋めた。


「名前があると逃げにくいですね」


 ノーラが苦笑する。


「ええ。でも、助けも求めやすいわ」


 王宮で欲しかったのは、こういう表だった。失敗した時に責めるための名簿ではなく、困った時にどこへ声をかければいいか分かる表だ。


 昼には町の商人たちも見に来た。誰が印を持ち、誰が確認し、誰が公開板を書き換えるのか。組織図一枚で、人は思った以上に安心する。


 壁の前に立ったまま、私は少しだけ見上げた。知らないうちに、『通商長様』という呼び方にも肩の力を抜いて振り向けるようになっている。


 背後からアーベルが言った。


「いい表だ」


「机より、壁に貼られてこそ意味があります」


「君自身もその通りだ」


 この港で働く人たちの名前が、もう隠れる必要のない形で並んでいる。眺めているだけで、息がしやすかった。


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