表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
37/40

第37話 提督は港を選ぶ

冬備蓄契約が片づいたその日の夕方、アーベルは中央艦隊への返答を書いた。


 私は同席を求められ、彼の執務机の向かいへ座る。


「見るか」


「見ていいんですか」


「君に隠す理由がない」


 渡された下書きには、異動辞退の文言が整然と並んでいた。北航路海防と通商再建は切り離せず、現在の責任を継続するためノルトエルト残留を願う、とある。軍人らしい、揺れのない文面だった。


「仕事のためですね」


 わざとそう言うと、アーベルがペンを置いた。


「半分は」


 以前も聞いた答えだ。けれど今回は続きを待つより先に、彼が言った。


「残り半分は、君を置いて王都へ戻る気がないからだ」


 胸の奥が静かに鳴る。派手な言葉ではない。それでもこの人の言葉はいつも、あとから効いてくる。


「港を選んだんですね」


「そうだ」


「私ごと?」


「最初から分かっているだろう」


 分かっていた。けれど、聞くのと知っているのでは違う。


 私は返答書の端を押さえた。


「なら私も選びます。通商長として、この港を続けます」


「ああ」


 その短い返事の中に、約束の形があった。まだ婚約でも結婚でもない。けれど、これから同じ場所で責任を負うという点で、それよりずっと具体的だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ