表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
35/40

第35話 臨時通商長の終わり

監査の翌日、王都から届いた通達には、見慣れた二文字がなかった。


『エレナ・ヴァイスを、ノルトエルト港通商長に任ずる』


 臨時が消えている。


 何度読み返しても文字は変わらなかった。机の端へ置いた旧辞令が急に軽く見える。


「おめでとうございます、通商長」


 ラースが真っ先に頭を下げ、続いてクララ、ユッタ、ノーラまで声を重ねた。港の空気が少しだけ明るい。役職一つで世界が変わるわけではない。けれど責任に対応する権限が、ようやく追いついた。


 通達の最後には、冬備蓄契約の統括を命ずるとある。祝いだけでは終わらせないらしい。むしろありがたかった。


「休ませる気がないわね」


 私が呟くと、アーベルが珍しくはっきり笑った。


「君に暇を与えると、別の帳面を探し始めるだろう」


「否定できません」


 私は新しい印を掌で確かめる。重みは前と同じはずなのに、手の中での収まり方が違った。借りた席ではなく、自分の席に置く印だからだろう。


「冬の契約、きれいに締めます」


「ああ」


「そのあとで、少しだけ祝ってください」


 言いながら頬が熱くなる。だがアーベルは真顔のまま頷いた。


「いくらでも」


 それだけで十分だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ