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第27話 公開聴取は食堂で

帳簿と証言が揃い始めたところで、私は港の食堂を公開聴取の場にした。


 長机の上には保険台帳、荷揚げ簿、クララの控え、そして市場の値段表。商人も漁師も、昼の皿を前にしながら数字を見ることになる。


「役所でやらないんですか」


 ラースに訊かれ、私はスープ盆を置いた。


「役所だと、話す前に黙る人が多いから」


 聴取が始まると、ユッタがまず立った。


「干鰊の値上がりは不漁じゃない。保険札を口実に買い叩かれただけだ」


 次に船主、荷役頭、食堂番までが口を開く。『霧で傷んだ』と言われた便ほど、実際は夜中の積み替えが多い。石袋を見た、査定人が先に印を持っていた、灯台閉鎖の噂が早すぎた。


 保険組合の代理人が椅子を引いた。


「証言だけでは何とも」


「証言だけではありません」


 私は灯台見積を広げる。


「事故率を上げるための修繕閉鎖案、そして損害率を前提にした保険料改定案。同じ書記癖です」


 食堂の空気が変わった。噂ではなく、仕組みとして見えた瞬間だ。


「この場で、新しい保険登録簿を始めます」


 私は白紙の台帳を置いた。


「今後、保険査定人の入港時刻、立会人、検査写真、荷揚げ後の所在を全部記録します。見せたくない人だけが困る仕組みにします」


 拍手は大きくなかった。けれど頷く人は多かった。それで十分だった。


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