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Lords of Elements  作者: カムイ
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03 『新生“帝”』



「と、言う訳でお主らに任せたい。無論、俺もやらねばならんが王よりの指令は一刻も早い育成と解決をという事だ。」


赤髭(あかひげ)を蓄えた赤いローブを着た男性が髭を撫でながら、目の前に座っている数人に目を向ける。

火迅帝は数枚の認印の押された書類をテーブルに広げる。


「えー…超めんどくっさい…。俺パスしたいんだけどー…。」


ソファーに転がる黒いローブの青年。闇極帝(あんごくてい)は心底面倒そうな顔を見せると、唯でさえダラけた状態を更にソファー上で項垂れる。


▼闇極帝

王族特務・独立部隊5帝に所属する闇属性のSSSクラス保有者。

カラーはブラック。

闇属性の暗殺や隠蔽、潜入に特化した情報戦を得意とする。

ただし、常にやる気はあまりなく怠惰を具現化した様な青年である。


「いや、まぁそう言うなって。な? ほら、王様からの直々だしよ。

仕方ねぇって。」


苦笑を浮かべながら椅子に座る青年。茶色のローブを羽織り、その肉体は鍛え抜かれている事が一目で分かる程に大きな体格をしている。


▼地鳴帝

王族特務・独立部隊5帝所属の地属性のSSSクラス保有者。

カラーはブロンズ。

地属性は特殊な属性でもあり、先代の1代目は父親である。

5帝内では唯一の肉弾戦闘タイプ。

楽天家であり、落ち着いた青年である。


「ふむ…僕と同期が出来るようなものですね。僕としては少し楽しみです。」


にこやかな顔をしている風帝はどこか嬉しそうに書類を見ている。


「ともかく、お前はこれからその説明会とやらに行くって事だな…。

チッ…育成案件増やしやがって…。クソが。」


ため息混じりに話す氷界帝は書類をポイッと机に投げると今回の辞令に対しての悪態をつく。

それ程までに本人にとっては面倒事だったのだろう。



「がはははは!!賛成してくれると思っておったぞ!うむ、では俺は新帝の所へ赴くとしよう!

そこでの話がまとまったらこの部屋に連れてくる。

それまで、しばし待っておいてくれ。」


誰も賛成はしていないといった顔を全員にされているのは見えていないのか、そのまま大きな笑い声を上げて、部屋を出ていく。

闇極帝と氷界帝は耳を塞いでおり、大きな声に嫌気が差している様子が窺える。


書類に書かれた文字 【5帝を10帝部隊へと変更する事をここに命じる。】


「10帝になる事、そんなに気に入らないですか?氷界帝。」


疑問そうな顔をした風帝が座っている氷界帝に質問をぶつける。

数秒の間、諦めたような顔をして口を開いた。


「気に入らんは気にいらんが…、王の取り決めだ。

ただ、面倒な事になるなと思っただけだ…。」


(王は絶対なのはあるんですね…。)


変な所に忠誠心を垣間みえ、苦笑を漏らした。

普段の様子から言えばほとんど、そういった面は垣間見える事はないのもあって、珍しく見えた。

少しの間の後、思いついた様に闇極帝が顔を上げた。


「あぁ、でもさー…仕事減るって考えたら良いんじゃない…?

ほらぁ…結構めんどくさーい仕事増えてきたしさー…。」


ソファーでダラけたまま、よほど仕事が嫌なのか胸中を吐露した。

いい事を思いついたかの様に言ったのに対して、地鳴帝の現実を見た発言に潰される。


「バカ野郎、どこが減ってんだよ。新人育成なんて入ってみろ。倍だぞ、倍。」


普通の業務が増えてきた。

火迅帝が準成体の発見後、各地域の見回りや、魔族の討伐など。

駆け回る仕事が増えた他、今までの護衛任務なども含めて行われる事で任務は増加傾向にあった。

しかし、そこに新人教育が含まれるとなると、更にやる事が増える為、結果として業務増量となってしまう。


「「あ…。」」


風帝と闇極帝が声を揃えて気付く。

溜め息をついた後に、更に氷界帝が言葉を続ける。


「はぁ…。相変わらずめでたい思考能力だな…。

それに……今まで1度も魔族と戦った事がないんだぞ。わかるだろう。俺達は耐性があるかないか、その大きな差が…。

どの魔族だろうと、あの交戦する感覚を…。」


「そりゃ…そうだけどさぁー…。」


神妙な顔に釣られて周囲も少し重い雰囲気に包まれる。

魔族との戦闘にそれぞれ思う所、思い当たる節があるのか、顔は同じ様に暗く重い。

すると、パンパンと手を2度ほど叩く音が響く。

音の方向を見ると、地鳴帝が立ちながら雰囲気を払拭する様に笑った。


「まっ、とにかくやる事は変わらねぇんだ!仕事が増えたと思うことが大事だべ!」


最後におどけた感じの語尾を付け足して、周りを見る。


「なんで急にそんな語尾…。」


氷界帝がツッコミを入れる。

普段しないことゆえに、尚更おかしく映ってしまったようである。


「まぁ、確かに余計な事を考えてても仕方ない。時間は有効に使おう…。」


納得し声をかけると、ブルーのローブを持って立ち上がる。


「お?どこ行くんだ?もうじき戻ってくるぞ、火迅帝。」


歩いていく氷界帝に地鳴帝が声をかける。

次いでだるそうに闇極帝が言葉を発する。


「そーだよー…。待ってろって言ってたしー…。」


「こうして暇な時間を過ごしていても意味はないからな…。トレーニングルームに行ってくる。」


「おー、じゃあ俺もやんべ。いこーぜ、氷界。」


「帝が抜けてるぞ、帝が…。」


2人で揃って部屋を出て行く。

トレーニングルームへ向かう2人の足取りは軽やかなものだった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「がっはっは!俺は火迅帝だ!今回はお主ら5名を5帝に加え、名を改め10帝となった。

これは異例の措置ではあるが、追々様々な説明が追記される事となろう。

とりあえずの説明はここで俺がしていこう。」


なかなかの大きさの会議室。 置いてあるホワイトボードの前に立ち、大男 火迅帝が座っている5名。

新たな帝になる者達へと言葉をかける。


「よろしいでしょうか、火迅帝様。」


そう言うと凛とした声が通る。灰色の髪の毛を揺らして、手を上げた女性がそのまま立ち上がる。


「ん、よかろう。なんだ重帝よ。」


重帝、そう呼ばれた女性は表情を1度敬礼をすると向き直り質問を出す。


「私達は各国の保護や護衛の為に増員されたとお聞きしました。

既に5名の帝様達がいらっしゃる中で、我々が配属された理由をお聞きしても?」


自分達が何故、選ばれたのかが不思議だったのか、そんな質問を投げかける。


「ふむ、何事にも理由がある。俺が今回お主達を選んだ最も大きい理由は《帝になって成したい事》を基準として選ばせてもらった。

そこに若さや属性を加味してだな。」


「それだけ…ですか?」


意表を突かれたのか、目を丸くして驚いていた。

もっと崇高な理由や厳格な試験や選考の理由などがあると思っていたのか、表情からは驚きがにじみ出ている。

そんな表情を大きな声で笑い飛ばした。


「がははは!!いやいや、勿論 実力も買っておるよ。

だが、全体的にまだ見聞も甘く、ひよっ子。前線じゃあ使い物にはなるまいよ。

属性抜きに単一でやり合って俺と戦える者も、複合で氷界帝と渡り合う者もこの中にはおるまい。」


そこまで聞いた所で、周りと比べても一際、小さい女の子。

その子が勢いよく手を挙げて口を開いた。


「あのあの!!!はいはーい!!」


開口一番、とにかく元気な高い声が響く。それなりに大きな声量で発言した事によって、横にいた金髪の女性が耳を押さえながら机をバンっと叩いた。


「うるっさいわね!普通に手あげなさいよ!」


「え…?だって私これが普通だよ?」


お嬢様の様な見た目に気が強そうな見た目に反さない口ぶりで、女の子に文句をぶつける。

それに対して、不思議そうな女の子は首を傾げる。

何とも言えない空気の中、火迅帝が笑い声と共に声をかける。


「がはは!雷帝も、まぁ、落ち着け。元気は悪い事ではない。

して、光帝よ、何だ?」


「あ、はい!そんな物凄ーく強い人達がいるんですよね?なのに何で増員なんですか?」


「うむ、では説明に戻るとしよう。先日、ガーデル国との国境付近で準成体魔族、変異体と遭遇した。」


背面のホワイトボードに文字を書き込みながら、説明を始める。

しかし、まずそれが分からなかったのか4人が首を傾げる。

唯一人、重帝はわかる様で、眉をひそめ怪訝な表情が垣間見える。

その顔に満足そうな顔で火迅帝は頷いた。


「お主はわかる様だな、重帝よ。流石は年長者といえよう。

魔族の中にも階級がある事は学院の方で習っとると思うが、公開されない情報というのが存在する。

その中の1つがその変異体と呼ばれる個体だ。

魔族が人間を捕食するのは魔族としての本能であり、それ故に魔導族からすると危険視される。

そう教わっとると思うが、それは全てではない。」


「じゃあ何よ、歴史学とか魔族学は嘘ってこと!?」


慌てたように矢継ぎ早に言葉を放つ雷帝。

その様子にホワイトボードに書いていた手を1度止めると、雷帝に向き直る。


「がはは!そう慌てるな、雷帝よ。全てが嘘ではないが、伝えられん事もあると言う話だ。

魔族が捕食をするのは、進化があるからだ。

先の通り、階級があり下級から上級。

しかし15年前の戦争時に大量の成体魔族という人の形を持つ魔族が現れた。

奴らの成長スピードは本来、とてつもない程に遅い。

その成長を急速に高める行為が捕食とされている。魔導族を捕食し続ける事によって血肉や臓器を多量に貯蓄されていく。

その過程で起こる上級から成体へと至る途中で変異体と呼ばれる、準成体という状態に収まる。

その状態になると上級の魔導を使う個体もいて、多少の思考能力まで備わっとる連中がいる。」


神妙な顔で話をする火迅帝の背後で新帝は固唾を飲み、話を夢中で聞いていた。

ずっとただ静かに静観していた兎耳の生えた少女が、不安を滲ませた表情で重い口を開いた。


「では…また魔族間戦争の様な、大きな戦いが始まる…という事でしょうか…?」


不安の現れなのか、兎耳は若干垂れている。

他の新帝も一様に、不安を持っている様で、火迅帝に注目が集まる。


「それを回避する為のお主らよ。

我々は常に単体で動いておる。 常にだ。5帝メンバーは強さ故に組んだりする事はあまりない。

しかし、仮にこれから変異体が多く目撃される様になれば、各々討伐に向かわねばなるまい。

だが全てにては回しきれん。この世界は広く、広大である。

護衛・討伐拡大の為に新帝が今回加わったのだ。


改めて、むさくるしい所によくぞ参った!! がっはっは!

ようこそ、独立機関10帝へ!期待している。

さて、いつまでもここにおってもなんだ。我らの専用室がある。そこに向かって、他の5帝とお目見えとしようぞ!」



不安を吹き飛ばす。それを体現するかのように、新帝5人の不安を吹き飛ばし憮然として快活な笑顔を向ける。

他の帝、それはある意味では崇拝の対象であり、憧れなどから全員の顔がまた違った意味で緊張の面持ちになる。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…




部屋の中では闇極帝がダラけ、ソファーに寝転がっている様が伺える。

風帝が静かに窓の近くの椅子に座りながら、外を眺めて紅茶を飲む。

すると、思い立った様に闇極帝が口を開いた。



「ねぇ~…風帝。そこのジュース取って~…。」


「はい、ちょっと待ってくださいね。」


言われた事に嫌な顔を1つする事なく、付近にあった冷蔵貯蔵庫の中から1本の飲み物ボトルを取り出す。

それを持ち、グラスを取ると闇極帝のいる方まで行って飲み物を注ぎ始める。


そんな事をしていると大きな木製の扉が、大きな音を立てて跳ねるように開いた。


「がはは!待たせたな!新帝の連中を連れてきたぞ!」


「あ~…おかえり~…。ってかうるさ……。プッ…!あはははははっははははは!!なにそれ!どこで拾ってきたの!?」


火迅帝が新帝への説明を終え、連れ立って扉から帰ってきたのだった。

最初は扉の音に文句を言おうと思って、そちらに目を向けた途端だった。

普段はずっと間延びした状態である人間が急に大笑いを始めた。

風帝ですら、ずっと笑うのを必死に抑える様に顔を両手で覆っている。

目を向けたその先には…


「がははは!!そこら辺で歩いておったので連れて帰った!」


「がはは!連れて帰られた!!」


「……良いから…。さっさと降ろせよ…。」


豪快に笑い楽しそうする火迅帝。

そして、肩に担がれながら豪快に笑う真似をする地鳴帝。

とんでもなく恥ずかしそうにしながら、肩に担がれる氷界帝であった。

その画面のあまりのシュールさに他の2人は笑いをこぼしてしまったのだ。


しばらくは笑い声が絶えることはなく、新帝は何とも不安そうな顔をしているのが窺えた。


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