妖精と和平
楽しんでいただけると嬉しいです☆彡
「ひろむは本当に面白い。」
肩でくすくす笑いながらティルの両手が俺を包む。
あぁ、ティルの腕だ。
ほっとすると同時に思い出した。
「俺、もう向こうには帰れないのか?」
これだけは聞いておかないと。
ティルは一瞬きょとんとした顔をしたが、やさしく俺の頬を撫でながら微笑むと、
「大丈夫ですよ。生気の祝福をいただいたでしょ。自力でも少し訓練すればいつでも帰れます。しかしこちらとあちらの時間の流れが少しちがうのであまり向こうにはいかないでくださいね。」
「実際にはどれくらいちがうんだ?」
「そうですねぇ。ほんの少しですよ。向こうの1日がこちらの1月くらいでしょうか。」
どこがほんの少しだ…
でもよかった、向こうに戻ることも可能なんだ。つまりはこっちと向こうを行き来できるということだよな。
「戻ったときの制限とかは?」
「そうですねぇ。向こうへ帰るには生気を使うのはご存じですよね。」
うんとうなずいてみる。
「私たちは減った生気を人と交わることで補充して帰れますが、あなたは交わったって補充されないので自然回復をまつしかありません。なので1年くらいは向こうにいないと自力ではもどってこれないでしょうね。」
なるほど、自力で行って帰って~とかはささっとできないと。インタバールが発生するってことだな。
しかし向こうで1年ってことはこっちでは…約30年…?
誰かに一緒に行ってもらわないとこりゃ無理だな。
こっそりは行って帰れないってことだ。
ちょっと残念。
「それ以前に、白き巫女なのにそんなほいほいといなくならないでください。私に内緒で向こうへ帰るなんて許しませんからね。」
ぷんぷんとかわいく怒るティルの頬に軽いキスを送る。
「ひろむ…大事にします。私のそばにいてください。」
ぎゅっと抱きしめられてどきんとはねた心臓はどきどきといつもの倍の速さで鼓動していた。
朝、目がさめるとティルの腕の中にいた。
昨日の痴態を思い出して顔が熱くなる。
「もう起きたのですか?」
「ティル…」
ぎゅっと抱きしめられて幸せかもと考える。
「それですが…」
どれでしょう
「これからはティと呼んでください。」
「どうちがうんだ?」
「ティルはみんなが呼ぶ愛称のようなものですが、私をティと呼んでいいのは家族か親しい目上のものだけです。それ以外の者が許可なく勝手に呼ぶと死罪になります。」
ところ変わればなんとやら、愛称一つで極刑にされるなんて…
よかった、ティって呼ばなくて。
実はクラウスが来たときみんながティティと呼ぶからつられて何度か呼んでしまいそうになったんだよね。
でも親しき仲にもなんとやらでかろうじてこらえてたんだけど、
良かった良かった。
「じゃぁ今、許可されたから俺はティって呼んでも良いんだな。」
「何を言っているのですか…」
え?だめなの?今良いって…俺親しくないの…?
「あなたはもう私の奥さん、家族なのにダメなわけ無いでしょ。許可なんて最初からいらないんですよ。」
お、奥さん…!
「そりゃまぁまだ結婚式はあげてはいませんが、愛の誓いもすませ、正式に白き巫女として神のお茶会にまで行ったのですから、もう正式な奥さんです。」
「いやいや、正式には婚約者でしょ。なに残りの儀式すっ飛ばしてるんですか。」
いつの間にかクラウスが部屋に入ってきていた。
カーテンをあけ、大きな窓からは朝日が、目に痛いほどの光がはいってくる
「良いお天気ですよ。ひろむにこちらを案内して差し上げたらどうですか?」
「そうですね、ひろむ。行きますか?」
「ん~そうだね、案内してくれるなら、お願いしたいかな。」
「では、そうと決まれば行きましょう。」
「行きましょう。じゃありません。そんな素っ裸で外に出るつもりですか。ひろむは朝ごはんも食べてないのに。ひろむ、服をきたら厨房で食事してください。ひろむの分はちゃんと作らせてますから。」
「ありがとう、すんごくお腹すいてたんだ。」
「ティ、あなたは昨晩ひろむを堪能して満ちてるでしょうが、ひろむはあなたを食べれないのですよ。ちゃんと食事には気をつけてください。」
「しかし昨日、私はひろむに食べられていたのだけど。かわいいひろむの中は熱くてやわらかくて、私をいくらでも食べたいって…」
「わぁぁぁぁぁ」
俺は真っ赤になってティの口をふさいだ。
「おま…おま…人前でなんてことを。そういうのはマナー違反だぞ。」
「そうなのですか?マナー違反なのですね、以後気をつけます。」
小首をかしげながらも神妙にうなずくティ。
そうしてください。心臓に悪い。
「私とひろむの情事は二人の秘密ということですね。」
じょ…まぁそういうことにしときます。
しかし、こちらに帰ってきてからのティは口を押えたくなるようなことばかり言う。
恥ずかしすぎて俺の心臓がもちませんが?
とにかく服を着て、厨房に行くと他の人間族の皆さんは食事を終えたのか一人分の食事がすみのテーブルに置かれていた。
「すみませんが、この食事テラスに運んでいただけますか?」
後から来たクラウスがメイドらしき女の人に言っていた。
?…俺テラスで食べるの?さっきはここで食べろっていわなかったか?
「ひろむはこちらへ」
クラウスについていくとテラスに出た。
メイドさんが持ってきてくれた食事はどれもおいしそうだった。
さっそく席に着き、いただきまぁすと食べようとするとティとクラウスに止められた。
「なんで?食べちゃダメなの?」
「そんな無防備に不特定多数のいた厨房に置いてあったものを食べてはいけません。」
「?んじゃどうしろと?」
「まずは毒見します。」
そういってクラウスがスープを一口飲み、パンを一口ちぎって口に入れた。
「ん、スープとパンは大丈夫そうです。」
そしてハムとスクランブルエッグのようなものをやはり少しずつ口に入れた。
途端に口を押え吐き出した。
「え?」
「これは塩がきき過ぎです。しょっぱすぎるのでさげますね。代わりは私が作ってきます。」
そう言って皿ごと下げてしまった。
俺まだ若いから多少塩きいてても大丈夫なのに…
それどころか、塩はきかせたほうがうまい!
と、おいしそうな皿をおあずけくらって指をくわえてみていた。
しかし、クラウスの作ってくれた代わりの朝ご飯はとびきりおいしかった。
さっきの皿より豪華でおいしくて、短時間で作ったものとは、それ以前に食事をしない人が作ったものとは思えないおいしさだった。
満足した俺は腹パンで動きたくなかったが、ティにつれられ屋敷内と庭を案内された。
ちょうど厨房の横を通ったときだった。
「これからひろむの食事は私が作りますので。」
クラウスが厨房のみんなに宣言しているところだった。
食事をとらなくても良い人がなんで俺の食事を作るのかな?
と、不思議に思ったがきっと料理の腕自慢したいのかな?っと深くはかんがえなかった。
ティに庭を案内され、庭の一番奥のさびれた庭園を俺の好きにして良いと言われたので、果樹園と畑を作ることにした。
神様に頂いた農業の知識は果物栽培もあって、自分の食べ物は自分で作ろうと使命に燃えた。
一番奥には木を植えよう。
まずはリンゴかな。柿とか栗とかみかんもほしいな。苗があれば植えたいけど、こっちにあるのかな?向こうと同じ果物…
あとはジャガイモとかほうれん草、トマトにトウモロコシもうえたいなぁ
食べたいものいっぱい。
俺はうきうきと想像を膨らましていた。
俺が植えたかったタネや苗はカーエルが向こうから調達してきてくれた。
おかげで1年ほどで見事な畑と規模は小さいがそれなりの果樹園ができあがった。
俺はお腹がすいてなにか口にしたくなると畑や果樹園へ行って直接もいで食べていた。
クラウスもできるだけそうした方が良いといっていたので。
後で聞いたのだがあの時クラウスが吐き出した朝食は塩ではなく毒が入っていたらしい。
俺が怖がるといけないので、あの時は塩と言ったと。
クラウス達にはきかない毒だが、俺が一口でも食べていれば墓場へ直送だったらしい。
それ以来怖くてなにも口にできなくなった。
口にするのはクラウスが作ってくれたものか、畑から直で自分で簡単な調理(ゆでる、蒸す、いためる等)したものしかたべれなくなった。
みんな優しそうだったのにな。やっぱ俺って邪魔者なのかな…
ある朝、結構立派になった果樹園と畑たちを満足気にみわたしていると、片隅に置いた養蜂の木箱になついている少し大きめの蜂を発見してしまった。
新種の蜂…?
羽根をもってつまみあげるとじたばたとあばれ、なにやら怒鳴っていた。。
?なにか言ってる?
羽根の先にはちっちゃな人間?
自分の中を探ると妖精族語とかかれた本が俺の前でぺらぺらとページがめくられ、目の前の妖精(?)の言葉がわかる。
「はなせ、この下等な人間族め、俺をどうするつもりだ。とどめを刺しにきたのか。」
と、じたばたとわめきちらしていた。
とどめ?
みると腕に血がにじんでいた。
最近栽培を始めた薬草の中の一つの葉を小さくちぎり、腕にあて、ハンカチを割いて包帯にした。
「はい、これで大丈夫。それ血止めの薬草。血はとまるけど、ちゃんとした手当じゃないから、後でまたちゃんと手当してもらってね。」
暴れていた妖精は大人しくなった。
「お前はさっきの奴じゃないのか。ここはお前の庭か?」
「うん、俺が育てている庭だよ、そうだ、ジュース飲む?」
「じゅーす…?飲むということはそれは飲み物なのか?」
あれ?通じてない?
「果物絞った飲み物だよ。」
「飲んでやっても良いがまさか毒とかいれないだろうな。」
こっちの人って毒、好きだよね。
「いれないよ、目の前で絞って作るから不安なら飲まなきゃいいよ。」
そう言って近くのみかんをもぎ取る。
水で少しあらって、指の上に1滴
表面張力で真ん丸なみかん滴ができた。。
恐る恐る俺の手にのっかりそれに口をつける。
「うま、あま、濃い。」
驚いたように口を離したが、再び口をつけると一気に吸いほした。
恐るべし、肺活量。
「もっと飲む?」
「いや、俺は用があってここへ来た。お前はここの住人か?」
「あ、うん。ここに住んでる。」
「そうか、ではまた会うだろう。うまかった、手当感謝する。」
そう言って本当に蜂のごとくぱぴゅーんと飛び去ってしまった。
「お客さんだったのかな?」
俺は独り取り残され、朝の果物をいくつか収穫して戻った。
戻ると屋敷はてんやわんやの大騒動。
近くの顔見知りになったメイドさんをつかまえてきいてみる。
「今日、突然和平の使者様というのが来られて。クラウス様は本物の使者様かご確認にいかれるし、ティリエル様は使者様のご対応だし、指示を出してくださる方が誰もいらっしゃらなくて。私たちはどうすればいいんでしょう。とりあえず、客間と会談場所のセッティングなどを急ぎしているのですが…」
「あーいたぁー」
一人のメイドさんが叫ぶとわらわらと何人かが俺をとりかこんだ。
なんだ…?毒がだめなら実力行使ってことか…?
と戦闘態勢に入ろうとする俺の腕を左右からがしっと捕まえひきずっていかれた。
俺、もしかしてやばい?
戦闘態勢に入る暇もなく部屋に入ると全身ひん剥かれ、なにやらいい匂いのする油みたいなものを塗りたくられ、髪もそれでなでつけられ…
なんということでしょう…まるで王子様のような俺が誕生しました…?
「ふぅ、これでなんとか。」
一仕事を終えた満足感に額の汗をぬぐう。
俺を見る目はまるで完成作品をながめる芸術家のようだとおもった。
「準備はできましたか?」
せわしなく入ってきたティが俺の手をとり、別の部屋にひっぱっていった。
扉の前でクラウスと合流し、短く「本物です。」
そう言うと一緒に部屋に入った。
大きなテーブルの上座には小さな玉座がセットされ、そこに妖精がふんぞり返って座っていた。
そしてその横にはさっき会った妖精が立っていた。
「おまたせいたしました、妖精王よ。」
和平会談はなごやかにスムーズに終わった。
なんのことだか全然わかってない俺をとりのこしたままで。
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誤字脱字、変換ミス等てんこ盛りかもですが、速やかに訂正していきたいと思っておりますので長い目で見てやってくださいm(__)m




