白き巫女
「えっと、僭越ながら私が説明いたします。」
そう言ってティンカーベルの3人衆をにらむ。3人はバツが悪そうに眼をそらした。
そんなに言いにくいことなんだろか?
「白き巫女、まぁ平たく言えば人間の婚約者ってことです。」
?なんでそれが説明をさけることに?
ティルが少し言いにくそうに補足する。
「前に話したでしょ。人間族というのは我らの捕食対象だと。たしかに生気をわけてもらうだけですが、いうなれば家畜、もしくは奴隷にあたるわけです、身分的にね。そんな者を天使族が婚約者として迎えることを一族が認めるわけがないのです。
だから神にささげられた乙女と、神からの下賜品として迎えるのです。ただ、どう言いつくろっても普通は家畜、奴隷とさげすんだ者をむかえるのですから、家族になるものも、周りの者も良い顔はじません。
あわよくば、婚約者のうちに結婚してしまうまえに不慮の事故にでも、というのが実情です。実際白き巫女と結婚できた者は少なく、大抵は白き巫女のまま棺に入ることの方が多いのです。」
「私の母は寿命を全うできましたが、どんな大天使であっても母が白き巫女では息子を当主にすることはできないんです。一般には知られていませんが、教会で永遠の愛を誓うと天使族に愛を誓われた人間は神の茶会にお呼ばれするんだそうです。そこで創造神から祝福を賜り、普通の人間にはない長い生と気力をもらうのです。普通の人間の寿命は100年もありませんが、白き巫女は約500年ほどはいきられるそうです。
それでも天使族の平均2000年という寿命にはおよびませんが。母は525歳で天に召されました。父は母のいなくなって100年ほどは独りでいましたが、一族の勧めで天使族の妻を2人エルフ族の妻を2人もちました。その頃はまだ戦争も激化してませんでしたから。天使族の二人が一人ずつ子をなしました。それがティとルゥです。戦争が激化してからエルフ族の妻は実家へ帰されました。」
「なる…ほど…」
一夫多妻の世界ですか、うらやましくはないけれど、大変そう…
「だから、愛していればこそひろむを白き巫女にはしたくないのです。」
愛…って…!
聞きなれない言葉にくらくらする。
いまだかつて言ったことも言われたこともない、アニメや小説の世界でしか聞かない言葉をそんな大声で…。
まぁ睦言でしれっと言われたような気もするけど、こうしてちゃんと意識のある時に言われるのは初めて…では?
「だからって白き巫女でもない異世界人を向こうに連れていくことはできませんよ?」
クラウスが苦い顔でティルをたしなめる。
「それはそうなんですけど…わかってはいますが…」
なんとも歯切れの悪い。
「でもひろむを、わかっているのにそんな危険なものにしたくはないのです。」
あ?俺の話…でした?
聞きなれない言葉と理解のおよばぬ世界の話にまったくついていけない。
大体神の茶会あたりですでに理解は及ばず、話は虚空を彷徨ってましたが?
しかもみなさんみごとにオールスルーされてますが、当事者であるはずの俺の意見は?
俺にはなにもは聞いてもくれないのに、話だけは進んでいくんですね。
まぁ意見なんて求められても、昔の政治家さんみたいにあーうーしか出てきませんけどね。
とりま帰らなきゃいけないカーとベルを送るためティルとクラウスが畳の上にティルの羽根を引っこ抜いて羽ペンのようにして魔法陣のようなものを書き出した。
「わぁ、ここ賃貸。これ消えるの?」
畳の上に直に書いてるのでとりあえず慌ててみた。
「使えば消えますよ。生気を実体化して書いてるので。二人を送って消費されれば跡形もなく。本当は自分で書くんですが、結構な生気を使うので向こうへ帰って役にたたないではせっかく帰っても意味ないので帰らない私とティでかいています。これで次帰れるのは2月後くらいですかね。」
一生懸命、畳に陣を書きながらクラウスが言う。
「じゃぁ、ティルもクラウスも一緒に帰ればいい。」
俺の言葉にティルが目をむく。
「なに言ってるんですか、ひろむ。今帰ったら次いつ来れるか。」
掴みかからんばかりの勢いで迫るティルをよけてクラウスの後ろに隠れる。
「今のは冗談ですよね?帰れなんて私の聞き間違いですよね?」
「聞き間違いなんかじゃないよ。2月後にはどっちにしても帰っちゃうんだろ。それなら今帰っても違いはないだろ。」
「香月、良いのかよ。」
「お前だって、カーエルとはそれなりの仲じゃなかったのか?よくはしらんが。」
「まぁ、俺たちはお気軽なセフレってとこだから、帰るっていうなら引きとめたりはしないさ。」
セ、セフレ…聞いてはいけなかった気がする。経験値の少ない俺にはダメージが大きすぎる。
大ダメージによろめいたついでに気が付いた。
「今更なんだが、ティルとベルって兄弟なのか?」
キャパオーバーですっかりスルーしてしまっていたがそんなことを聞いたきがする。
「そうですよ、二人は私の異母弟です。」
さらっと答えていまだじたばたと抵抗するティルを羽交い絞めにして陣の中へひきずっていく。
「ひろむもあぁいってくれていますから、一緒に帰りますよ。じたばたしないで観念なさい。」
「あんなのひろむの強がりにきまってるじゃないですか。放してください、私は帰りませんか…」
伸ばそうとした手が不意に掻き消えた。
「よかったのか?」
突然静かになった部屋に残された俺と赤川。
「なんならなぐさめてやろうか?」
耳元でささやかれて思わず思い切り振り払った手が赤川の顔面にヒットした。
「いてぇ」
「あ、ごめ…」
「良いって、俺も空気読めってことだな。今日は帰るな。お前も気を落とすなよ。」
静かになった部屋で俺は独り、電気もつけず誰も灯りをともしてはくれない暗い部屋でじっと膝を抱えてうずくまっていた。
誤字脱字、文章ミス等多々あると思いますが、見つけ次第訂正していきますので、ご容赦ください。




