焚き火跡と迷子1
まぶたの裏が赤くなる。日が昇ってきた証拠だ。
(体がぽかぽかして気持ちいい…。けど。なんだかギシギシするし、お腹が重い…。)
ケティはぼんやり目を覚まし、いつもの家でなく、木の根元にうずくまって寝たことを思い出した。
目を向けるとケティのお腹を枕代わりをしている妹のコティの姿があった。
ケティは体をずらし、コティの頭を盛り上がった木の根にそっと乗せた。
焚き火の後の灰がしっとりと夜露に濡れ、寒々しかったが、体はぽかぽかしていた。
体をぐっと伸ばし、バキバキになった体をほぐす。少しずつ血行が良くなり、頭が働いてくる。そうしてやっと、辺りを見渡し、そこでようやく、自分たちだけが取り残されていることに気づいた。
「コティ、コティ!おい起きろ!」
ケティはコティを叩き起こした。
「うーん…お兄ちゃん…?もう朝ごはん…?」
「違う、セージおじさんがいないんだ!」
「セージ…おじさん…?」
目をショボショボさせ、コティが起き上がった。
そして、顔がだんだんと曇っていった。
焚き火を挟んで向かいに、大荷物を広げていた男の姿はなかった。
「セージおじさんは…?」
「…分からない」
急に心細くなった。別に全てを信じていたわけじゃない。
食事をたっぷりご馳走してくれて、良くしてくれて、それだけでも十分すぎるのに…。
…それでも。
今日だって光実を取ったら村まで一緒に付き合ってくれるってセージおじさんは言ったのに…。
ケティはなんだか裏切られた気分になった。
自分たちに気づかれないように物音一つ立てず、彼は去っていったのだろう。
「お兄ちゃん…」
その声にケティはハッとした。
心細くなったのはコティも同じだ。
「一先ず、光実を籠に入れよう。それから…」
「それから?」
「…ここから移動して、村を探す。」
昨日たらふく食べたので、しばらくはお腹が空くことはないだろう。それに、これだけ光実が光っていれば、明かりには困らないはずだ。
コティを下に待たせ、ケティはスルスルと木に登った。枝分かれ部分に足を引っ掛け、実を黙々と取った。木の上は特に温かく、葉の擦れる音が気持ちを落ち着かせた。
周囲も明るく、木の上はそこそこの距離を見渡せた。ぐるりと周りを見渡すと、ここと同じような木々の切れ目が見える。それも筋になっている。
もしかして…!
「お兄ちゃん?」
わずかな量だけ取って降りてきたケティにコティは聞いた。
「こっち…!」
コティの手をつかんで、ケティは走った。
「ま、まって…そんなに速く走れない……」
そう言い終わるか終わらないかで、ケティは足を止めた。
そんなにすぐに立ち止まるなら走らなくてもいいのにと、コティは急に走らされて、胸に手を押さえた。肩で息をし、ケティを恨めしく見たが、立ち止まった理由がすぐに分かった。
「道だ…」
2人は驚いた。ケティはその場にかごを置き、緩やかな斜面を登り、道のてっぺんを目指し、手をつないで歩いた。
2人とも黙って歩いた。けれど、考えていることは同じだった。
やがて、てっぺんにまで着いた時、眼下に自分たちの村が確かにあることを確認した。
「…こんなに近くにあっただなんて」
2人は転げるように走った。疲れが、どれだけ溜まっても、もう関係ない。
村の入り口に大人が集まっているのが見える。
「お母さん!お父さん!」
2人は叫んだ。




