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焚き火と迷子6

「すごく綺麗だ……星と同じようにまたたくんだね」

誠治は昔に一度だけ、蛍を見た時くらい、奥底からこみ上げてくるものを感じた。


「僕たちもこんなに……こんなに、はっきり強く光っているのは見たことない……」

「今までの収穫祭の明かりと比べても、すごく光ってる…すごい…」

ケティもコティも食べるのをやめ、見上げていた。


「…しかし、実が木になるだなんて、取るのが大変そうだな」

「それは心配いらないよ。僕たち、木登りは得意なんだ」

そういうと、ケティはスルスルと木の上によじ登った。


誠治は焦った。

「危ない!暗いから、止めなさい!」

つい大きな声を出したが、ケティはあっという間に片手に持てるだけ光実(グロウベリー)を持って降りてきた。

「セージおじさん、見て」


光実(グロウベリー)は透明なガラスのさくらんぼのような見た目をしており、中で焚き火と同じような暖かい光をユラユラと発していた。


「すごいな。これの方がずっと魔法みたいじゃないか」

誠治はポツリとつぶやいた。

「ただの木の実だよ?珍しいのは確かだけど」

「でも、なんでお昼に見つけられなかったのかなぁ…」

「たぶん、実のなる時期がいつもより遅かったんだ。きっと…焚き火の光を吸収したんだよ」

「おぉ…なるほど?」

ケティが言うならそうなのだろう。光を吸収する実とはなんとも不思議なものだ。


「じゃあ、私たちが持って帰ればみんな喜んでくれるね!」

「帰れればね」

「「「……」」」

誠治もコティも、そう言ったケティも、また黙り込んでしまった。



「あー…、明日、2人の村を探そうか。危ないから、木の実を取るのも朝になってから、な?その方がいい」

誠治はできるだけ明るい声で提案した。

「セージおじさんは、…どうするの?」

「当てもないしなぁ…、2人を村に届けてから考えるさ」

「一緒に来てくれるの?」

「そう…だな。2人が良ければだけど」

「いいの?お兄ちゃんいいよね?」

「…まぁ、いいですけど」

ケティは少し口ごもった。

「あの…うちの村、閉鎖的で、お礼ができるか、その…」

「子どもはそんなこと考えなくていいんだよ。…けど、言いたいことは分かった。警戒心を持つのはいいことだ。村への帰り道が分かったらに別れる、ということにしようか?」

「えー?セージおじさんは、村で料理屋さんしてほしいのに」

とってもお料理上手だし!と膨れっ面で言う、コティの中では、誠治は村で生活することになっていたらしい。

「ははっ。——そうだ、お礼というなら、それ、貰えないかな?」

光実(グロウベリー)ですか?それはかまいませんけど、こんなものでいいんですか?」

「あぁ、本当に綺麗で感動したんだ。さっき取ってきた分で一番キレイなもの、貰っていいかい?」

誠治はケティから光実(グロウベリー)を受け取り、ニッコリした。


「さぁ、食事の続きだ。食べ終わったら早く寝て、明日に備えようか」

2人の皿はすでに空っぽだった。2人は微笑みながらおかわりをした。


誠治は2人にカレーをよそい終わると、鍋に残りのご飯を入れた。誠治は自分の分は鍋から直に食べた。この方が最後までカレーを綺麗に食べ切れると初めて気づいた。



———————



食べ終わると2人は疲れていたのか、早々に眠ってしまった。ケティはギリギリまで粘っていたが、コティの安心しきった寝顔を見て、釣られて寝てしまったようだ。テントに寝ることも勧めたが、断られてしまった。


食べ終わった食器を軽く拭き、明日に必要ないものは片付けた。一息つき、焚き火の前の椅子に座り込むと、誠治は光実(グロウベリー)をつまみ上げ、しげしげと眺めた。

焚き火の近くで見ているせいか、輝きがどんどん増しているように見える。

それに、手に握っているだけで、身体全体がぽかぽかと暖かい。チラリと2人の様子を伺うと、2人も光実(グロウベリー)を握りしめてぐっすり寝ている。これを持っている限り、風邪を引くことはないだろう。


(不思議なこともあるんだな…)


誠治は光実(グロウベリー)を上着のポケットにしまい込み、ボンヤリ焚き火を眺めた。手元にある薪はもうそろそろ尽きる。

パチパチという小気味いい音がだいぶ小さく聞こえる。


明日移動するなら、もう寝たほうがいい。

大きなあくびが出た。

(今燃えている分を燃やしきったら、寝よう…)

そこまで考え、どっと急に眠気が襲ってきた。

相手が子どもとはいえ、誠治も緊張していたのだろう。



誠治は、無心に炭になっていったものから火バサミでどんどん砕いっていった。火は少しずつ弱くなっていくが、光実(グロウベリー)のおかげで身体が冷えることはない。


(そうだ。火を消すなら、いくらなんでも子どもを野ざらしにはできないな。)


断られた手前、テントの中に押し込むのも躊躇われたが、テントの中にはすぐに寝られるように、コットとシュラフ、それから、耐熱性のゴワゴワする膝掛けを置いていたのを思い出した。


(膝掛けでも、ないよりはマシなはずだ。)


2人に掛けてやろうと、誠治はランタンを持ち、テントの中を物色した。


——パチッ!


ひときわ大きく爆ぜる音がした。

誠治が膝掛けを持ち、テントから頭を出し、振り返った。



冷たい空気が、喉に入り込む。


あたりが薄暗い。


焚き火の火は完全に消え、夜露でしっとりと湿っていた。


ランタンをかざすと、見慣れた景色。


元のキャンプ場だった。


誠治はしばらく動けなかった。


夢にしては、匂いが残っている。

かすかに、カレーの香りがした。

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