焚き火と迷子5(カレーは異世界共通魅惑の匂い)
誠治は遠火でゆっくり煮ていた鍋を火からおろし、蓋を開けた。そうして茶色の塊を割り、鍋に入れかき混ぜた。
「何を入れたの?」
ケティが不安そうに聞いた。
「カレールーだよ。カレーは知ってる?」
2人は首を振った。
それをみて、誠治はしまったと思った。
「あぁ、そうか。食べ慣れていない子どもには少し辛いかもしれないな…」
持ってきたカレールーは中辛だ。
取り出そうにもカレールーは半分以上溶けてしまっていた。周辺はカレーの匂い一色だ。
どうしようか混ぜる手を止め、悩んでいると、
「いえ…その、大丈夫だと思います。なぁ?」
ケティはゴクンと喉を鳴らした。コティはコクコク頷いてる。
異世界でも、カレーの匂いは食欲をそそるらしい。
カレールーが溶け切ってから、また少し火にかけ、その間にご飯をよそった。
(粒が立っている。気持ち固めか?)
カレーをかけるからまぁいいかと思いながら、ベーコンエッグで使った皿に、ご飯をよそった。おこげはサービスだ。
2人はソワソワしてばかりだ。
鍋を火からおろし、カレーをご飯の上にかけた。
今度はスプーンと一緒に渡した。
「「いただきます」」
「熱いから気をつけて」
そうは言ってもはやる気持ちを抑えきれず、2人はがっついた。えらく一口が大きかったが、火傷した様子はなかった。
気温が下がり、よそっているうちからカレーは冷め始め、口に運ぶころにはちょうどいい温度になっていたのだろう。無心で食べている。
「本当に美味しいです」
「ちょっと辛いけど、美味しい」
お礼を挟みつつも、カレーを食べては水を飲んで、噛んている間は何の食材が入っているのか、2人はまじまじ見つめては自分たちの知っている野菜に当てはめようと議論していた。
「そういえば、福神漬け忘れたな…」
誠治はらっきょうより福神漬け派だ。ランタンで荷物を漁ったが、見当たらなかった。カレーには福神漬けを添えるのを当然としていたが、買い忘れたようだ。
(楽しみにしていたのに、何で忘れるかな…)
遠出するときは荷物を確認するのに忘れ物が必ず何かあるのだ。今回は福神漬けだったらしい。
誠治は空を仰いだ。
都会では味わえない満天の星空だ。
(異世界の星空って一緒なんだな……)
月があるのかは木々の中なので分からないが、星の瞬きは同じように見える。
焚き火の明かりで空を気にしていなかったが、焚き火の光がなくても木に覆われていなければ、地面は明るいような気がする。
(いや、地球より明るい星が多いのか……)
同じ明るさ、同じ大きさに見える星が無数に見える。
(……?)
何かがおかしい。
「セージおじさん、どうしたの?」
空を見上げてぼんやりしている誠治に気がついたのか、ケティが誠治に声をかけ、誠治の視線を追いかけた。
「光実だ…」
ケティが呟いた。
「あぁ、これが…」
焚き火を囲んだ木々には一等星のような輝きを持った実がたくさんなっていた。




