焚き火と迷子3(ベーコンエッグを添えて)
2人は焚き火を挟み、誠治の向かいに座った。誠治はカップに水を入れ、少年の方に差し出す。
「すまないが、容器は1つしかなくてね。2人で分け合ってくれるかい?」
「いいんですか?その…もらっても」
少年は警戒した様子で、顔色をうかがうように聞いた。
「あいにく、すぐに渡せるのが水しかなくてね。料理ができるまで我慢してくれるかい?」
(そりゃ警戒するのも無理ないか…)
誠治はできるだけ気にも留めてない風を装う。
「…いえ、すみません。ありがとうございます。…いただきます」
少年はにおいをかぎ、一口飲むと少女に手渡した。少女も一口飲むと勢いよく飲み、飲み干すとはぁーっと息をついた。
「ありがとう」
少女もお礼を言った。誠治は少女からカップを受け取り、水を入れ、また手渡した。
(今日は大きめのジャグを持ってきていて良かった)
今回来たキャンプ場は水場が遠かったので、大きめのウォータージャグを持ってきていたのだ。
「…」
2人は交互に水をちびちび飲みながら静かに誠治の手元を見ていた。子どもらは誠治の道具にも誠治自身にも興味があるのだろう。
誠治は新聞紙に包まれたスキレットを取り出した。油がよく馴染んで年季が入っている。
(3人分となるとやっぱりこいつを使って腹に詰め込んでもらうか…)
肉厚ベーコンと卵を2個割り入れ、火の強い場所にスキレットを置く。
ーーージュゥゥゥゥッッ!!ーーーー
軽快な音とともにあっという間に卵の白身の 色が濃くなっていく。ベーコンに軽く焦げ目がついたのを確認したら、塩コショウを振り2人に差し出した。遠目で見ていただけでも肉の香ばしい匂いが漂い、何度も涎を飲み込んでいたのが丸わかりだった。
(空きっ腹にこの匂いは堪らないだろう)
「熱いから少しずつ食べなさい」
作る過程を見ていたからか、警戒心が薄れたのか、誠治かフォークを渡す前にベーコンを爪でつまみ上げ、2人は同時に齧り付いた。
「…っ!!!!っんまぉーーーーいっ!!!」
目を輝かせ、口を大きく開けてハフハフさせながら叫んだ。
あまりの良い反応に誠治は思わず笑いが漏れた。
誠治がフォークを渡そうとしているのを見て、2人は顔を赤くして慌てて受け取った。
「…こんなおいしいお肉初めてで…ありがとうございます。」「卵もとってもおいしいです!」
(年端もいかないのに礼儀正しくてめちゃくちゃいい子達だな…!)
誠治は少し感動した。
「いやなに…。…おかわりする?」
こんな素直な反応されたらもっと餌付けしたい気分になってしまう。
あっという間に平らげてしまって、物足りないのかしょんぼりしてしまった2人に声をかけた。
「「はい!」」
(次のベーコンはカリカリにしよう)
ーーーーー
3人がカリカリベーコンを食べ終わる頃にはすっかり警戒心が薄れたのか笑顔かこぼれるようになったので誠治は気になっていたことを2人に聞いた。
「そういえば君たちは迷子なのかい?」
「うん。光実を探してたら、道に迷っちゃって。あのね、お兄ちゃんたら帰りの目印にお昼ご飯のパンを千切って目印にしてたの。鳥が食べてるのに気づいたんだけど、その時にはもう目印がなくなっちゃってたの」
「そもそもコティがみんなより多く集めるって言い出したからだろ!だからいつもの道から外れるの嫌だったんだ。おかげで食べる物もなくなっちゃうし」
「まぁまぁ…落ち着いて…」
言い合いが始まって収拾がつかなくなりそうになったが、兄妹でグロウベリーとやらを探して道に迷った、ということは理解できた。
(なる…ほど…?)
「そうかぁ。けど、僕も村の場所はよくわからないんだよなぁ…」
「え、おじさんも迷子なの?」
2人は驚いた。
「こんな森の中で豪華な料理作ってるから、てっきり…」
「ご、ごめんね。おじさんも実は迷子なんだ」
「…」
ほぐれかけた緊張がまた戻ってきたようだ。




