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焚き火と傭兵6(エール煮がほどくもの)

「また、鉄の鎧を使うのか?」

「いえ、今回は野菜炒めで使ったスキレットを使おうと思います」


誠治はビア缶チキンで小さくなった焚き火に松ぼっくりを放り込み、小枝を足した。


——パチパチ……——


誠治は少し体が温かくなるのを感じた。


アゼルは残ったビア缶チキンを味わい、カルクは酒をゆっくり飲みながら誠治に背を向け、何やら手元を動かしていた。

ジャハンは誠治のそばで火を眺めていた。

誠治は小枝に火が移るのを眺めながら、口を開いた。


「何を作るか、気になります?」

「ん?あぁ……そうだな」


ジャハンは少し頭をかいて、顔が少し赤くなった。


「癖なんだ。昔は料理人になりたいって思ってた時期があってさ。子供の頃から誰かが何か作ってるとつい覗きたくなっちまうんだよな」


(そういえば、野菜炒めの時も覗き込んでたな)


「その気持ち、わかりますよ」

「そうか」

「えぇ」


ジャハンはホッと息をついた。


誠治は薪を足した。

火は少し大きくなった。


(醤油ベースの味付けにするから、問題ないはず)


誠治は先ほど野菜炒めで使ったスキレットを取り出した。

汚れを拭きとり、手羽先を敷き詰めた。

そして、塩を軽く振りごま油を回しかけた。


「この小瓶の中身はすべて使うのか?」

ジャハンが聞いた。


「料理に必要な量しか入れてないんです。出かける前に、大きいものからこれらに移して、持ち歩くんです」

「なんだかわざわざ外に出て料理するみたいな言い方だな……」

「俺はそれが好きなんです」

「変わっているな。家の中で作る方が気楽だろうに」

「でも、俺には楽しくて仕方がないんです。不思議ですよね。」


誠治はスキレットを火にかけた。


(ビア缶チキンが作れなかったら、丸鶏も切ってこれになっていたな……)


——ジュゥゥッ……——パチパチ——


皮目から程よく脂が滲み出て、脂が時々弾け飛んだ。

手羽先に焦げ目がついたらひっくり返し、肉が少し縮んだところに野菜炒めで残していた野菜を入れた。


——ジュワァァァ……——


カルクの酒を注ぎ入れ、あたりが一気にアルコールの匂いに包まれた。


(これだけでも酔えそうだ)


誠治はなんだか顔がぼぅっと熱くなるのを感じた。

手の甲を喉元にあてると、ドクドクと血管が脈打つのを感じた。

先ほど飲んだカルクの酒のせいか、このアルコール臭が原因か分からなかった。


(少し酔っているのかもな……だが、この手羽先は食べる価値のあるものだ)


アルコール臭の薄れる頃、誠治は砂糖と醤油を入れ、軽く煮詰めた。

最後にごまを散らし、誠治は達成感で満たされた。


「できました」


その言葉にジャハンはカルクとアゼルに声をかけた。


気がついたら、だいぶ日が落ちていた。


ビア缶チキンを作った段階で日は傾いていた気がする。

焚き火の光に当てられ、火を囲んだ3人の姿が、誠治には赤くぼんやりとして見えた。


「ビール煮……じゃなかった、カルクさんのお酒で煮込んだエール煮です」


(あれ、そういえば……あんまり詳しくないけど、エールもビールだったっけ?……まぁ、いいか)


誠治は眠気をこらえながら、手羽先を4つに取り分けた。


「どうぞ」


——フーフー、はぐっ……もぐもぐもぐもぐ……ごくん……——


3人は警戒することもなく、あっという間に手羽先を口の中に入れた。


「うーーん!美味い!」

「セージ、お前の料理の腕は確かだよ!」

「この肉もとても柔らかくて、ホロホロと口の中でほどけていく」

「エールで煮込むだけでこんなに……野菜とも合うな」


誠治は3人の食べっぷりを口を少し開けたまま眺めた。


「皆さん、感想が上手ですね」


そう言いつつ、誠治の口元は緩み、一口食べた。


(アルコールは完全にはなくなっていない気がするが、飲んだ時よりマイルドだし、香りも合わさって、これはこれで美味い)


「あぁ、やっぱり俺は料理に使ったほうが好きだな……」


ポロリと本音が漏れてしまった。


「……確かに料理に使った方が万人受けする味だと思う」

ジャハンはポツリと呟いた。


「酒だけでも旨いが、エールで煮込んだ肉がこんなに柔らかくなるとはな」

「こんな味を知ったら、あんな干し肉にはもう戻れねぇな」

アゼルもカルクも目を輝かせて口に運んでいる。


「違う味付けにしても美味しいですよ。コンソメとか」

誠治が付け加えた。


「故郷に帰ったら作ってみるよ。セージの作り方を見ていたが、この料理は真似ができそうだ」

「そりゃあいい。なにしろ、俺たちの故郷はエール作りが盛んだからな。あの安酒にもようやく活躍の出番が来るかもしれねぇな」


カルクはセージに向かって、ニヤッと笑った。


「このエールの質もなかなかだったろうが、俺たちの村のものはもう1段劣るんだぜ」


「はぁ……ははは」


誠治は曖昧に笑い、汁をすすった。


「そういえばジャハンは昔、自分の店を持つんだとか言ってたな」


アゼルの言葉に、ジャハンは焚き火の炎に照らされた顔をさらに赤くした。


「ははっ、ガキの頃の話、よく覚えてたな。料理人になれば自分がいつでも美味いものが食えると思ってたんだよ。材料を買うにも金がいるってこと頭になくてな。それに店を持つなんて貧乏人の俺にしては大それた夢だったよな」


ジャハンはそう言うと酒をあおった。


「お前らだって、熱く語ってた夢あったじゃないか!カルクは鍛冶屋に弟子入りして、国1番の職人になるって言ってたし、アゼルだって親父さんの跡ついで、親父さん以上に村を盛り上げるんだって息巻いてただろ」


「懐かしいな。俺が初めて作った甲冑があまりの歪さに装備できず、アゼルの提案で畑のかかし代わりにしたんだよな」

「あれのおかげで畑を荒らされることがなくなったんだから感謝しているよ。今でも残っているかもな」

3人はクスクス笑った。


「叶えられますね」


「「「え?」」」

誠治の呟きに3人は聞き返した。

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