第二十三話の4 真実と嘘のチケット
「盗賊がきたぞー!」
「いててて」
その声に木箱を取り落とし、足にあたって仮面の男は足を抑えて飛び上がった。
「大丈夫かい」
荷物運びを手伝っていたリックがあわてて駆け寄る。
「はあ、びっくりした」
フーフーと足に息を吹きかけて、仮面の男は笑った。
「またロン君にやられました」
村人たちも「今のはうそー!」というロンの声にほっと胸をなでおろし、家の中に入っていくのが見えた。
一人、茫然と立ち尽くしている男がいるのに気づき、リックが駆け寄っていった。
「ザルトは初めてだったか」
「あれは…」
「ああ、それはな」
リックがザルトに事情を話し始めたのを見て、仮面の男は作業に戻った。
ショーが始まり数日が経過した。
「団長、受付で何やらもめごとがおきているようです」
団員の女性が呼びに来た。
動物の檻を見て回っていた仮面の男はうなずくと受付に向かった。
「私のチケットをこの子がとったのよ!」
「これは俺がリックおじさんからもらったチケットだ」
到着する前から片方は聞きなれた声であるのがわかった。
ロンだった。
「やあお客様、責任者の団長です。どうされました」
「私のチケットをこの子が盗んだの」
「だからこれは俺がリックおじさんにもらったんだって」
目つきのやや鋭い女性が指差しているのは、ロンが手にもっているチケット。
仮面の男は「ちょっと失礼」とそれを受け取り、すかしてみた。
「はい。私がリックさんに差し上げたチケットで間違いございません」
「え、ええ?」
女性がびっくりしたような声をあげた。
「そんな、確かにこれ…」
「売っているチケットとは別なのですよ。私があげるチケットはね」
仮面の男はにこやかにそう言い、女性の耳元に口を寄せた。
「ところでこの村の中では見ない方ですがあなた、どなたです?」
びくり、と女性の肩が震えた。
明らかに動揺していた。
「おやあ! こんなところにチケットが落ちていましたよ? これがあなたのでは?」
サッと上体を起こした仮面の男の手に新たなチケットが握られていた。
「あ、そ、そうね、それが私のだと思うわ」
女性はチケットを奪い取るようにして、テントの中へ向かっていった。
「……」
仮面の男は口元に笑みをたたえたままそれを見守った。
「おっさん、それで俺は入ってもいいのかよ」
「ああ、ロン君!いやな思いをさせてしまいましたね! 失礼しました。お詫びに少し良い席にご案内しましょう」
パンパンと仮面の男が手をたたくと、ピエロがひょこひょこと表れてロンを手招きした。
「ママ、あれ見て!」
「ピエロだ!」
「わあー!」
列に並んでいた子供たちが目を輝かせる。
「なんかすげー目立ってんだけど」
「はい、ご案内でーす」
ロンが口をとがらせるのを無視して仮面の男は彼を送り出した。
「おや、ザルトさん」
列に並ばずに様子を見守っていたらしい彼に気づき、仮面の男は声をかけた。
「あ、…やあ」
「どうされたんで。ショーをごらんに?」
「あ、いや……騒いでるようだったんでね。何があったのかと」
「それならもう片付きました。ご心配なさらず」
「そのようだな。じゃ、失礼」
ザルトは足早に去っていった。
◇◇◇◇◇◇◇
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