第二十三話の3 すり替えられた真実
「俺はそんなことしないって!」
「でも実際キミの鞄からこの人の財布が出てきただろう」
「知らないよ!」
「あの、こうして財布は戻ったことですし私は別に…」
建物の前で言い争う人影に、仮面の男は足を止めた。
ロンがザルトにつかみかからんばかりの勢いで怒鳴っていた。
それをいさめるようにおろおろとしているのはおそらく村人の女性だろう。
周りには何人かの村人達がどうしたんだというような顔で立っている。
「キミはよく嘘をつくらしいじゃないか。とってないというのは信用ならないな」
「だからとってないと」
「まあまあまあまあ」
仮面の男は二人の間に割って入り、お互いをたしなめた。
「この通り、こちらの方がそれでいいとおっしゃっているのですから、もうそれでいいでしょう。いつまで言い争っていてもらちがあきませんよ」
突然の第三者の登場に、戸惑ったようにロンもザルトも押し黙った。
「ね?」
仮面の男が確認するように振り返れば、困った顔をしていた女性もうなずいた。
「私も財布を落としたと思って探していただけなんです。ですから戻ればそれで」
「きっとこの子が」
「とってねーって!」
「はいはい、やめましょう」
またも言い争いを始めようとした二人の口に仮面の男はどこから取り出したのか、パンを突っ込んだ。
「……」
「……」
二人が目を白黒させながら口の中のパンを噛んでいるうちに女性はそそくさと帰っていき、ザルトも納得いかない顔をしていたがしぶしぶ立ち去っていった。
騒ぎが収まったと見た村人たちも肩をすくめながら歩いていく。
「君がロン君ですね」
「おっさん誰? ああ、ショーやるって人か。そんな仮面つけてるってことは」
「ええ、団長です。君もよかったらショーにきてくださいね」
「そんな金はないな」
歩きだそうとするロンを引き留めて仮面の男は懐から包みに入ったパンを渡した。
「施しなんかいらねえよ。てかさっきもパン突っ込んだろ」
「いえ、パンがおいしくてたくさん買いすぎてしまって。食べきれないので食べてください」
「ふーん…」
興味なさげにロンは受け取ったが、態度の端々にうれしそうな様子が見てとれたのを仮面の男は気づいていた。
「それではまた」
◇◇◇◇◇◇◇
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