第二十二話の4 月夜とナイフ
暗闇に目が慣れてくると子供たちはミラの導きに従い、眠っている男の死角になりそうな樽の後ろに潜んだ。
「ほら、はずれたわ」
ミラはまず自分の手を縛っていた縄を外し、震える子供たちの縄も次々ほどいた。
「今ならまだ間に合うのよ」
荷馬車の後ろを指さす。
街への道が見えている。
男たちは縛り上げたからと幌をふさぐこともしていないようであった。
「無理だよ」
「降りたらケガするわ」
「ゆっくりぶら下がって手を離せばいいのよ。みんな、ショー見た? 思い出して」
「僕見たことある。ブランコの人がやってた」
「僕らでもできる?」
「絶対やれるわ!」
子供たちは体を震わせながらもじりじりと移動し、一人、また一人と勇気を出して脱出していった。
ミラもおぼつかない手つきでそれを手伝った。
「おい、何してやがる!」
気配に気づいたのか、眠っていたはずの男が立ち上がりにらみつけていた。
ミラは勇気を振り絞って、最後の子が下りようとするのをかばうかのように立ちはだかった。
「このガキ! おい、ガキどもが逃げたぞ! 追いかけろ!」
男が手にもったナイフを振り下ろした。
が、何か光り輝くものがミラの髪の毛から飛び出し、それをはじいた。
パキン、と音がしてそれは砕け散った。
舌打ちした男はミラの胸倉をつかみ上げ、投げつける。
大人の力にミラは吹っ飛び、幌にぶつかってずるずると床に倒れこんだ。
御者台からナイフを手にした男が飛び降りて後方に走っていく。
子供たちの泣き叫ぶ声が聞こえた。
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