第二十二話の1 喝采と贈り物
ギィ、ギィ
さあ始まるよ
見世物小屋が始まるよ
甘いあまぁいお菓子のお礼は?
お代は見てのお帰り
喝采、喝采
「おやっ! これはチョットコレイトオというものですね!?」
仮面の男がすっとんきょうな声をあげた。
目の前にはハンカチに包んだ茶色の塊を両手で差し出している少女。
「違うもん! チョコレートだもん」
「おお、チョコレート」
仮面の男はしゃがみこみ、かけらを一つ口に放り込んだ。
「美味しいですねえ!」
「うん!」
少女はたちまち笑顔になった。
「すみません、どうしても皆さんにもっていくのだと聞かなくて」
「ありがとうございます」
後ろには少女の母が立ち、ぺこぺこと頭をさげている。
「あのね! この前のね、手足を縛られて水槽に沈んだお姉さんが、カーテンがひかれると別の場所からサッと出てくるの素敵だったの!」
少女は包みを仮面の男に手渡すと、興奮気味に話を始めた。
「それで次は…」
「ミラ、ちゃんと説明しなさい」
どこまでも止まらないショーの感想に、みかねて母が口を出した。
ミラはそうだった!という顔をすると、「あのね、ミラね、ショーがすごくて感動したの。それでね、みんなに食べてほしくてチョコレート買ってきたのよ。でも私のお小遣いではちょっとしか買えなくてごめんなさい」
その途端「ひえっ」と仮面の男が声をあげた。
「お嬢さんが私たちのために!? それはなんとありがたい…! 本当にありがとうございます」
団員の女が駆け寄ってきて「ありがとう」と言いながらハンカチの包みをうやうやしく受け取った。
誰の目に見てもそれは全員にいきわたらない量であるのは明らかだったが、今この場にその現実をつきつける心ない者はいなかった。
「十分ですよぉ、みんなでありがたくいただきますね」
その言葉にミラは満面の笑顔になり「えへへ」と笑った。
「この子、ショーを見た翌日から縄抜けをやりたいだの、高く飛びたいだの言いだして、家でドタバタやっておりますの」
「お母さん! それはナイショって言ったでしょ!」
真っ赤になって怒るミラに仮面の男はクスクスと笑った。
「そんな素晴らしいミラさんのために何かお礼を」
「いえいえ、お礼にお礼を重ねるものではありませんわ」
母親が笑った。
「どうしてもこのチョコレートを渡すんだと朝から騒がしくて。押しかけてすみませんでしたね」
「とんでもない!」
仮面の男はブンブンと頭を振った。
「それではお優しいミラ様。これはささやかながら感謝の気持ちでございます」
仮面の男が指をパチンとはじくと、小さな一輪の花が現れた。
それを仮面の男はミラの黒髪にさしてやった。
黒髪に黄色の花が輝く。
「わあ、団長さんありがとう! 大事にする!」
「こちらこそです」
その日一日、仮面の男はにこにこと仕事をこなしていた。
◇◇◇◇◇◇◇
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