第十九話の5 母
オーリーは翌日もその場所にやってきた。
母は立っていた。
隣には数人の男女がいた。前の暮らしをしていた頃の隣人だった。
オーリーは通り過ぎるふりをして声を聴いた。
「ごめんなさい、皆さんに迷惑をかけてしまって」
「なに、こちらこそいつも世話になってるんだから」
「こういう時こそ俺たちが助ける番さ!」
「旦那さんにはもう手紙で知らせたんだろう? 帰ってくるまでは私たちが手伝うからね」
誰一人迷惑そうな顔をしていなかった。
通りかかる人に声をかけては、オーリーの特徴を告げ、見かけていないかを聞いていた。
その翌日もオーリーは見に来た。
母は立っていた。
隣にいるのは昨日とは違い、子供たちだった。
それも隣近所の子供であることをオーリーは知っていた。
オーリーは通り過ぎるふりをして声を聴いた。
「おばさんにはいつも面倒見てもらってるし」
「私は破れたスカートを縫ってもらったわ!」
「うちのお父さんが病気になった時、薬草で薬を作ってくれたんだよ」
子供たちは次々にオーリーの母をほめたたえていた。
だが、母だけは泣いていた。
「神様、オーリーが帰ってきさえすれば私の命すら惜しくありません。どうか、もう一目だけ娘に会わせてください」
そんな声を聴いた。
さらに翌日になって。
オーリーは朝から馬車を出して広場に走っていった。
しかし、テントは跡形もなく消えていた。
近くの草むらに座っていた老人に話を聞けば、数日前にショーは終了し、旅の一座は町を去ったということであった。
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