099 あの日の真実
「ただいまー!!」
リビングの扉を開けると、2人が椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。
「おかえり。若葉もコーヒー飲むか?」
私は首を振ると、冷蔵庫からお茶を取り出し、自分専用のコップに入れる。
2人とも、コーヒーを飲めるなんて大人だなぁ。私は断然お茶派……あればジュース派だ。もちろん炭酸なしの!
よくお子ちゃまだと色んな人に馬鹿にされるが、こればかりは仕方ない。
苦いより、シュワシュワするより、甘い方がいいもん!!
「さて、それじゃあ……」
「ちょっと待ってください。」
マーレは立ち上がると、部屋の隅の方で何やらごそごそする。そこで部屋全体が円で囲まれていることに気づいた。魔法陣だ。
彼女は最後の記号を描き足すと、聞き取れないくらいの小さな声で呪文を唱えた。
魔法陣はにぶい黄色に発光する。
「さあ、これで外から盗聴される心配はありません。これから大切な話をする時は、必ずこの中で話しましょう。」
私がいても魔法が消却されないということは、おそらく魔法陣の外側の膜にのみ魔法がかかっているからであろう。
いつも張っておけばいいとも思ってしまうが、盗聴、透視を完全に避けるためにはかなりの魔力を必要とするらしい。マーレの魔力をもってしても、30分が限界。海斗兄達でも、1時間程度しか張ることができない。
外から見ると、黄色い壁しか見えず、目の前にいて耳をすましても、音は全く聞こえないのだ。
ここまで徹底するということは、相当大切な話。
ドキドキする。
「マーレ、フィミールのこと……知ってたのか?」
「……聞いたのですね。」
フィミールのこと??
海斗兄が私と目を合わせ、口を開く。
「フィミールは俺達の……ハイラスマーレ国の味方だ。」
「………えっ!?えーーー!?」
フィミールが味方!?
そんなこと急に言われても……私は思ったことをそのまま口にだす。
「でも、フィミールは私達を何度も殺そうとしたし……墓場の時だって、スカイキャッスルの時だって……」
「もしもどうしようもない状況になった時には、フィミールは命をかけて私達を守ったはずです。スカイキャッスルの時も、若葉達が来てくれなければ、正体を明かして助けるつもりだったのですよ。」
そうだったの!?
全然、全く、これっぽっちも気づかなかった。
私は思わず海斗兄をじっと見てしまう。
「海斗兄、もしかして知ってたの?」
実はみんな前から知ってて、私だけ知らなかったパターン?
もしそうだったら……理由はあるんだろうけど、ちょっと怒っちゃうかも。
あの時、どれだけドキドキしながら戦ったか……フィミールが味方だと知っていれば、もう少し安心して戦えたかもなのに。
すると、海斗兄は慌てて弁明する。
「神に誓って、本当に知りませんでした。」
合掌し、首を横にブンブン振る海斗兄。
うん、嘘は言ってなさそう。まあ、太陽や里穂姉はともかく、海斗兄がこんな秘密、隠せるわけないか。
……私もあの2人には同じように思われてそうだけど。
「若葉、海斗はもちろん、太陽と里穂も知りませんよ。フィミールがこちらの味方であることは、王と私達、そしてミンフィ様の5人しか知り得ません。私達にとって最も重要な秘密だったので……隠していてごめんなさい。」
ミンフィさんとは、ハイラスマーレ魔導高等学院の図書館長をしている方だ。この世界で数少ない……というかまだ1人しか見たことがないお婆ちゃん。
こんな秘密を知らされてるなんて、ミンフィさんって一体何者なのだろう。
「けれど、こうしてフィミールの潜入が続けられているのは、あなた達のおかげなのですよ。
スカイキャッスルで王が捕えられた時には、正直失敗も覚悟していましたが……あなた達が助けに来てくれたから、バレずに済んだのです。」
なんかもう驚きすぎて言葉が出てこないが、国の重役5人しか知らない秘密なのだ。私達に知らされていなくても無理はない。というかそれが普通だ。
しかしそうなると、フィミール……さんとも色々話してみたいなぁ。なんて考えていたら……
「まだ潜入作戦が終わったわけではないですからね。海斗は聞いていると思いますが、無駄な接触、会話は控えてください。若葉、できますね?」
「はい。」
やば、心を見透かされてしまった。
私、顔に出ちゃうタイプだからな……とか言ってられないよね。
若葉、頑張ります!!




