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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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100/168

100 enemy and friend


それからは、今日の出来事をお互いに報告し合う時間となった。

とは言え、魔法陣の制限時間が迫っているのでできる限り簡単に。


マーレの報告の後、私も今日あったことを伝える。

ウォーデン国について、かき氷屋さんについて、リースとの話について。

もちろんリースがウォーデン王の娘だということは伏せる。重要な情報だとは分かっていたが、それがこの国からの脱出には大きく関わらないと思ったし、何よりリースとの約束だから。


「それでね、リースが私に魔法を教えてくれるって言ってくれたの。リースの魔法と私の魔法はとっても似てるんだって!!だから、もっと色んなことができるようになるって!!」


リースからの申し出。それは魔法を教えてくれるということ。とても魅力的な申し出であった。

だって、消却魔法だけでなく、他にも色々なことができるようになれば、みんなの力になれるかもしれない。どんどん進んでいく海斗兄や太陽、里穂姉に追いつけるかもしれない。


「だから、明日から私も…その……。」


あれ?

なんだか2人の顔が曇ってる。

心配そうな、不安そうな、ちょっと怒っているような……


海斗兄はコーヒーをぐいっと飲み干し、少しマーレと顔を合わせた後、またこちらに視線を戻す。



「あの……私、何か悪いことしちゃった?


変なこと言ったかな?」



2人の様子にさっきまでのワクワク気分は薄れ、不安な気持ちでいっぱいになる。

だって、もっと喜んで、背中を押してくれると思っていたから。


「若葉、あの女……リースと仲良くするのはやめた方がいい。」


えっ?どういうこと??

海斗兄の言葉がよく分からない?

マーレが続ける。


「実は……フィミールからリースとはあまり近づきすぎないようにと言われているんです。」


フィミールが言うには、リースはここ最近……ハイラスマーレ国での一件があった後、急に表舞台に姿を表し、王の側近に任命されたらしい。それまで王を支えていた人達を押し退けてだ。

それなのに、国中の人達はそれを当たり前かのように受け入れ、まるで昔から知っているかのように接しているのだという。


たしかにかき氷屋さんでも、店員のお姉さんに親しげに話しかけられていた。

ううん、それだけじゃない。洋服屋さんでも、カフェでもそうだった。



でも……



「それはフィミールさんが知らなかっただけで……」


「いや、それはおかしい。フィミールは3年前からウォーデン国に潜入して2年前には王直属部隊に所属している。王の近くに長くいたフィミールが一度も会ったことがないんだぞ?」


確かにそれはおかしな話だけど……でも…


「私達は若葉が心配なんです。あの人の素性がわかるまでは、近づかない方が良いと私も思います。」


「それっていつになるの?」


「……」


2人ともそれ以上は答えない。ううん、たぶん答えられないんだ。

だって、3年間もこの国に潜入し続けているフィミールさんだって分からないんだもん。

それに、分かったとしても……


ウォーデン王の娘だって知ったら、それこそ絶対に会わせてもらえなくなる。


「リースは絶対に私のことを傷つけたりしないよ!!リースは他の人たちとは違うって2人も……海斗兄は特に感じてるでしょ!?」


「それはリースが新見さんに似てるからじゃないのか?」


「そんなことない!!似てるけど、それで仲良くしたいなんて思ってないもん!!」


思わず立ち上がり、海斗兄を睨みつける。



一番言われたくなかった言葉。

それはきっと私の中に同じような気持ちがあり、必死で違うと言い聞かせていたから。


確信をつかれたようで、心を見透かされたようで……




海斗兄は私から目を逸らすことなく、さらに追い討ちをかける。


「あいつは敵国の人間だ。仲良くすること自体間違ってる。」


「国同士は争っていても、1人1人が争ってるわけじゃない!!なんで……なんで…わかってくれな……い…の?」


最後の方はほとんど言葉になっていなかった。

海斗兄とマーレの言ってることの方が正しいのは分かってる。私を心配してくれてることも。

分かってるけど……



リースと一緒にいたい。

色んなことを教えてもらいたい。


みんなの力になりたい。


そして……みんなに早く追いつきたい。




2人の顔が涙でぼやける。

そんな姿を見られたくなくて、私は踵を返しドアへ走り出す。


ガシャン!


私がテーブルにぶつかった衝撃で2人のマグカップが床に落ち、割れる。中身は入っていなかったものの、破片が床に散らばった。


でも、私は振り向かない。


魔法陣は私が触れたことで跡形もなく消え去り、後に残ったのは床の模様だけ。


「おい、若葉!!」


「若葉、待って!!」


聞こえない。聞かない。聞きたくない!!



勢いよく扉を開くと、廊下を駆け出す。すれ違った清掃係の人に訝しげに見られたが、そんなこと気にしない。


「お客様!館内では走らないでください!!」


フロントのホテルマンの言葉にも耳を貸さず、私は勢いのまま外に出た。



そして……



ドン!!


「いってーな!!なんだこいつ?」


誰かとぶつかってしまったらしい。

恐る恐る顔を上げると、そこにはフリードほどは大きくないけれど、2メートルはありそうなスキンヘッドの強面の男の人が立っていた。

腕には刺青がしてあり、もう夕方だというのに真っ黒いサングラスをしている。


「ご、ごめんなさい。」


1、2歩後ずさった私をじっと見ると、ニヤリと笑う男。


「あれ、泣いてんの?お嬢ちゃん、なかなか可愛いね。俺が慰めてやろうか。」


その笑顔、その言葉にフリードの姿が重なる。


身体が震える。涙が止まらない。


ホテルの入り口はウォーデン国のメインストリートに面しているので、たくさんの人が行き交う。だけど、こちらに気づいても見てみぬふりで誰も助けてくれそうにない。


パッと一斉に街灯が点灯する。煌びやかな景色と、男の顔があまりにも対照的で、その恐ろしさが際立つ。



どうしよう……怖い………



「私の友達に何をしているのですか?」


あれ?この声……

男から目線を右に移すと、そこに立っていたのは親友と瓜二つの顔をした少女。

しかし、その表情は今まで見たことのない……もとの世界でも見たことのないようなもの。


「あ、あなたは……」


男はリースの存在に気づき、うろたえる。その顔には、先ほどの下劣な表情は見えず、怯えしかない。


「すぐにここから立ち去り、二度とこの子の前に現れないでください。もし現れたら……」


「すみませんでした!!」


大男は、一目散に駆け出し、人混みの中に消えていった。


私は体の力が抜け、その場にへたり込む。


「わか、大丈夫?けがはない?」


言葉が出てこなくて、代わりに頷くと「よかった。」と手を差し出し、引っ張り上げてくれた。


「この辺は夜になるとああいう奴も出てくるから、気をつけて。って、えっ!?」


思わず抱きついてしまった私に戸惑いを隠せないリース。私はリースの白いローブに顔を押し付ける。



やっぱりリースはひかりにそっくりだ。

この勇気も、優しさも、みんなそっくり。




『ひかりに似てるから。』


海斗兄、その通りだよ。


でもね、だからこそ信頼できるんだ。




そんな私を、リースは何も聞かず、黙って抱きしめてくれたのだった。







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