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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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98/168

098 瞳の奥の煌めき


いや、しかし驚いたよ。

この世界に……車が走っているなんて!!


店の外の車に釘付けの私をよそに、リースがせっせと会計を進めている。


「へいかき氷お待ち!!

しかしリースちゃん、今日はお友達とショッピングかい?仕事熱心なあんたが珍しいねぇ。」


「いや、これも仕事ですから。おばさんもちゃんと仕事してください!」


ぷりぷりしながらかき氷を受け取る少女。


うん、太陽がひかりに怒られてる姿がデジャヴったよ。

というか20代前半は全然おばさんじゃないと思うんだけど、まだ全然若々しいですよ、お姉さんですよ。



ここは中心街から少し離れた場所にあるかき氷屋さん。私がどうしても食べたいというので、渋々案内してもらった。

リース的にはもっと良い店に連れて行きたかったみたいだけど、私は今かき氷を食べたいのだ。


お店はフローズンフローズンのような小さな店舗で、夫婦で営業しているらしい。

人気はぼちぼちかな。

ここも綿雪のかき氷出せばきっと大人気店になるのに。

なんて頭の中で想像する。




午前中いっぱいかけてウォーデン国の中心部を案内してもらったのだが、正直驚きの連続であった。


想像以上に……いや、想像を絶する程の近代文明。

もちろん私達が住む世界、特に日本に比べたらまだ差がある。でも、それは埋められないほどのものじゃない。

だって、白黒とは言えテレビがあり、多くはないけど車が道を走り、人々はワンピースやチノパン、クロックスのようなサンダルなどなど、元の世界でそこら辺を歩いていても全然違和感のない服装なのだ。


ハイラスマーレ国の服装は基本ローブだったし、車どころか自転車すら存在していなかった。もちろんテレビもだ。


建物だって基本石造りだし。そう考えると、この文明の差には驚くしかなかった。


ただ、ハイラスマーレ国と同じことが一つ。それは電気や石油ではなく、魔力を動力源にしていること。


全て魔力を応用しているのだ。


もしかしたら、この文明の差は自然界の魔力量の違いかもしれない。

魔法を使えない私でもわかる。

この国は、魔力が満ち溢れているのだ。



「ここの人達って、みんな坊主なの?」


かき氷を食べながら、ふと思いついた疑問。

道ゆく人、先程のおば……お姉さん、みんな髪の毛がないのだ。


いや、みんなというのは訂正しよう。目の前に座るリースや、ウォーデン王、小学校低学年くらいの子達は髪の毛が生えていた。


年齢?性別??……分からない。


頭にはてなマークを浮かべる私に、クスリと笑うリース。


「そんなに髪の毛って重要かな?私はあってもなくても気にならないけど。」


「いや、大ありでしょ!!」


もし私がスキンヘッドにしたら、太陽は何て言うだろう……うん、やめよう。


「ハイラスマーレ国の人って変わってるね。みんな坊主かって話だけど、ほとんどの大人はそうだね。私や王様みたいな人もいるけど、稀なパターン。大抵は大人になるにつれて減っていくね。」


「待って、リースは大人なの?」


またしても笑われる。だって、この世界の常識知らないんだもん!!

拗ねてかき氷を口いっぱいに頬張り、頭がキーンとする。

そしてまた笑われる。


「私……というか、わかだって十分大人だよ。この国……ハイラスマーレ国も確か成人の年齢は12歳。この国の人達の寿命は大体25歳くらいだからね。」


そういえば前回来た時に成人の年齢については聞いたような気がする。

でも、ハイラスマーレ国の人達の寿命は確か30年だって言ってた。

ハイラスマーレ国よりももっと短いなんて。


目の前にいるリースも、あと10年くらいしか生きられない。そう考えると、なんだか悲しくなってきて、けれど泣くのは違う気がして感情を誤魔化すために残りのかき氷を掻き込んだ。


「うぅ、頭痛い……」


「そんな勢いよく食べるからだよ。」


くすくす笑うリースを見て、あぁ、きっとこの世界ではそれが普通なんだと実感する。

別に可哀想なことではない。みんな25年くらいしか生きられないのだから。

私達の80年が、彼女達の25年なのだ。人生長く生きればいいというわけじゃない。


それでも……私は大好きな人達とは、ずっと長い時間を一緒に過ごしたいけどな。



「ねえわか、さっきからウォーデン国に興味津々だけどハイラスマーレ国とは違うの??私、生まれてから一度もこの国を出たことがなくて……もし良かったら、教えてくれない?」


興味津々……だけど立場もあるからできる限り平静をつとめながら尋ねてくるリース。

バレバレだけどそこがまたかわいいなぁ。本当にひかりにそっくりだな。


私はハイラスマーレ国について、とは言っても私もそこまで詳しいことは知らないので、見たまま感じたままを伝えた。

同じ時代にも関わらず、全然違う文化、技術の差にリースも驚きを隠せないようだった。


「スカイキャッスルはね、王様のお城なんだけど、とにかく高くて豪華で、すごいんだよ。リースにも見せてあげたいな。」


「それはすごいね。私も行ってみたいな…でも……」


「そうだね、この戦争が終わらないと難しいよね……」


しばしの沈黙。

ウォーデン国の人達は、みんなフリードのように好戦的で、野蛮で、恐い人達なのだと思っていた。

けれどウォーデン国は私が思っていた以上に普通の国だった。みんな笑顔だし、優しいし……

確かに髪型が坊主だったり、寿命が短かったり、文化が違ったりはするけど、一人一人はハイラスマーレ国の人達となんら変わらない。


ウォーデン王だって、捕虜の私達にとても親切にしてくれている。国民からも好かれている。


だからこそ、なんでハイラスマーレ国とウォーデン国が戦争しているのかが分からない。



「ちなみに、ハイラスマーレ王はどんな人なの?」


先に沈黙を破ったのはリースだった。私は少しホッとしつつ、王様について説明し、こう締めくくる。


「……私達の王様はね、とっても強くて、でもとっても優しくて、すごい人だよ。」


「……お父様と一緒ですね……あっ!?」


パッと口を抑え、目を見開く。

お父様って……もしかして。


「リースのお父さんって…」


シーと指を一本立て、顔をグイッと近づけるリース。眉間にしわをよせ、困った顔をする。


「ごめんなさい。本当は人に知られてはいけないことなの……」


「じゃあやっぱり………」


コクリと小さく、でもはっきりと頷く。

確かに王様にすごく信頼されているんだなとは思っていたけど、まさかお姫様だったなんて。

でも、そう考えるとあの魔法の凄さも頷ける。


「このことを知っているのは、私と王様、側近の執事と世話役のおばさまの4人だけなの。もちろん他国の人達は、王様に子どもがいること自体知らないわ。」


「でもなんでそのことを隠しているの?」


先程以上に困った顔を見せる。真一文字に閉じられた口が少し開いては閉じ、また開いては閉じ……とても迷っているのがわかる。

その姿を見て、私はとても失礼なことを聞いていることに気がつく。


家族のこと、聞かれたくないことだってあるよね。しかも私達、まだ友達になって数時間。こんなにデリケートなことを聞いていいはずがない。


「ごめん、私、首をつっこみすぎちゃった。反省してる。」


深く頭を下げる。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

だって、言ってはいけないことだということは、何か理由があるということ。そのことにすぐに気づくべきだったのに。

そもそも「あっ……」っとなった時点で突っ込むべきではなかったのだ。


いつもの私であれば、もう少し気をつかえるはずだった。けれで外見や性格が親友とそっくりだったことで、デリカシーのない言動に繋がってしまったのだ。


いや、例え親友だったとしても、今回の件はまずかった。親しき中にも礼儀あり。反省しなくては。


「大丈夫だよ。そりゃびっくりするよね、急に王様の娘だって明かされたんだから。わかは悪くないよ。気になって当然だよ。」


心の中で猛省する私に対し、リースが優しい微笑みをむけてくれる。私にそんな資格はないのに。


「ごめんね、隠している理由については言えない。でも、いつかは……」


そこから先の言葉が出てくることはなかった。でも、もちろん私は詮索するようなことはしなかった。


時がくれば……この戦争が終われば……


リースが自分から話してくれるその日を待とうと決心する私であった。



その時、リースの瞳の奥できらりと何かが煌めいたような気がした。

それはほんの一瞬の出来事。しかしなぜだか私の心をざわつかせる。


なんだったんだろう……気のせいだったのかな?


「ねえわか、教えられない代わりに……」


その申し出は、私を驚かせると同時に、自分もみんなの力になれるかもしれないという期待を持たせる一言であった。


話を聞けば聞くほど、目の前を覆っていたモヤが晴れていくようで。



大好きなかき氷が溶けていき、イチゴシロップとまざり合ってジュースになっていることにも気づかず、食い入るように話を聞く。


この時の私の中には、リースの瞳の奥の煌めきのことなんて、既にこれっぽっちも残っていなかったのであった。




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