096 敵国の友
「えっ、ひかり!?なんでここに?」
私の目の前には、親友、新見ひかりの姿。
服装こそウォーデン国の魔導師達が着ている白いローブだけど、顔立ち、髪型、体型、声とほとんど違わない。
親友の私が言うのだから、間違いない。特に声は昨日からどこかで聞いたことがあるようなって思ってたし。
「ひかり??私はリースですよ。」
しかし、本人は全く心当たりがないらしく、キョトンとしている。
その顔も、ひかりにそっくり……
「ひかりって、新見ひかりさんのことだよな。生徒会の次期副会長の。いや、直接会ったのは2.3回しかないけど、確かに似てるわ。」
まじまじと彼女を見る海斗兄に対し、さすがに少し気を悪くしたようで、ムッとした表情になる。
「あの、初対面……ではないですが、そこまで関係がない相手をジロジロ見るのはいかがなものでしょうか。
あともう一度言いますが、私の名前はリースです。ひかりではありません!」
そうですよね。ごめんなさい。
でも、その怒り方も……いやいや、また怒られちゃう。
ひかり、怒らせると恐いんだから。きっとリースさんも間違いなく恐いと思う。
昨晩、私達はホテルでゆっくり過ごした。
私とマーレで一部屋、海斗兄で一部屋。3人で一部屋でも良かったんだけど(安全面の意味でも)、リースさんが2部屋用意してくれて、鍵も2つ、わざわざ私達と海斗兄に渡してくれたから、断るわけにもいかず。
今思えば、そういうちょっとお堅い感じも、ひかりに似ている。
この不自然なまでの一致は、偶然で片付けて良いものなのだろうか……
まあ、結局海斗兄も私達の部屋に来て、色々話をしながらみんな揃って寝落ちしてしまったのだけど。
そしてそのまま朝。
ドアのベルが鳴って今に至る。
「それにしても、あえて皆さんが同じ部屋にいたことは突っ込みませんが、あまり羽目を外さないようにお願いしますね。他の人も泊まっていますから。」
羽目を外す??夜遅くにUNOとかトランプとかして騒いじゃダメだよってこと??
「ばっ、そんなことするわけないだろ!俺達3人、健全な関係だから。」
「だから突っ込まないって言ったじゃないですか!」
海斗兄は慌てて弁明してるし、マーレは顔を赤らめている。
どういうこと??
あとで海斗兄に聞いてみたけど、残念ながら教えてもらうことはできなかった。
「ごほん。気を取り直して。おはようございます。昨日はきちんと挨拶できずすみません。私はリース。王様の付き人をしています。」
私達もリースに続いて挨拶をする。私達のことはもう知っていたようだけど、自己紹介は大切だ。
「それで、この国にいる間は、私が皆さんの案内人を務めさせてもらいます。海斗さんは闇の力をコントロールするための修行でしたよね。これから先生のところにご案内致します。」
「あ、あぁ、ありがとう。」
先ほどまでとは打って変わって丁寧な口調。海斗兄もご親切にどうもと恐縮している。
「それから、マーレ姫には王から伝言があります。『脱出方法を探るのはいいけど、ほどほどにね。立ち入り禁止の場所には入らないように。』とのことでした。」
バレてる。
マーレもこれには苦笑するしかない。
「それで、若葉さんは……」
1時間後。
朝食を食べ(せっかくだからリースさんもご一緒してもらった。)、支度をした私と海斗兄は、町の中心にあるトレーニングジムのような場所に来ていた。この中に海斗兄の先生がいるらしい。
「それじゃあ若葉、気をつけてな。」
「うん。海斗兄も、修行頑張ってね。」
「海斗さん、心配しないでください。私が責任を持って若葉さんを守りますから。」
修行に私が同伴することは叶わなかった。
私のことが心配だと最後まで粘っていた海斗兄だったけど、リースさんが私と一緒に行動するということで、渋々了承してくれた。
「若葉に何かあったら、まじで許さねーから。」
あの時の海斗兄、本気だった。すごく怖かった。
その後、マーレにも釘を刺されてたし。
「リースさん、ごめんなさい。マーレも海斗兄も悪気はないんだけど。」
「いいんですよ。それにしても若葉さん、2人から大切にされているんですね。ああいう存在、羨ましいです。」
そう呟いて笑う姿は、私と同じ普通の女の子で。
「あの、リースさんって、何歳ですか?」
「この間14歳になりました。」
「やっぱり!私も今年…とは言っても3月生まれだからまだまだだけど、14歳になるんです!!私達、同い年ですね。」
そんな気がしてたんだ!
偶然か、はたまた何か理由があるのかは分からないけど、ひかりと同じ姿、性格をした子が目の前にいるんだ。
これを逃す手はない。
「リースさん、私、あなたと友達になりたい。だめかな??」
「えっ、でも、私達は敵同士ですし。」
「それは私達が所属している国の問題で、私達個人とは関係ないことでしょ?私があなたと友達になりたいんです!!」
心底困ったという顔をするリースさん。
まあ、そうだよね。それが普通の反応だろう。
でも、多分うまくいく。私の女の勘がそう言ってる。だって、2年前だって、そうだっから。
「……分かりました。友達になりましょう、若葉さん。私も……実はその、あなたを初めて見た時から、気が合いそうだなぁと思っていたんです。」
「あなたじゃないよ、わかだよ!親しい人は、さん付けなんてしないよ、リース!」
私は目一杯の笑顔を送ると、リースの腕を掴み、くるりと反転する。目指すは目の前に広がる繁華街。
「それじゃあ初めに、この国を案内して!リースの生まれ故郷を知りたいの!!」
敵国だから知りたいんじゃない。純粋にこの国のことが知りたかった。
この国、私達が抱いていた印象と何か違う気がする。
知らないのに悪く言う資格なんてない!!
「分かった。それじゃあ、まずは私の行きつけのカフェに行こっか……わか?」
「うん!」
暖かい陽光が、まるで私のことを歓迎してくれてるみたいだった。




