095 男子禁制
チャポン
浴槽に張られたお湯が、身体を優しく包み込む。色々なものを洗い流してくれる。
あったかい……
こんなにお風呂って気持ち良かったっけ。
元の世界では、どちらかと言うと早風呂が主流だった私。
でも、今は、ゆっくり浸かるのもいいなぁって思う。
あとは、家のお風呂とあまり変わらないっていうのも落ち着く一つの要因かも。
スカイキャッスルのお風呂は、確かにすごかったけどちょっと贅沢すぎたし。
パチャパチャとその場でバタ足。水面に映っていた私の顔が波紋でゆらゆらと揺らぐ。
「はぁ……」
私、これからどうしたらいいのかな。
ガチャガチャ
「ふぇ!?」
今脱衣所のドア、開かなかった!?
恐る恐るすりガラスで作られた扉の方を見ると、女性らしいシルエットが浮かび上がっている。
「マ、マーレ!?」
「若葉、お風呂、ご一緒してもいいですか?」
「えっ、えー!?」
私のYESを待たずして、浴室の扉が開く。
ふぇぇ。
そこに立っていたのは、世のモデルさんに全く見劣りしない美女。いや、世のモデルさんより絶対上だ……なんだか輝いて見えるもん。
マシュマロのように柔らかそうだけど、同時にハリを併せ持つ胸。細くしなやかな腰。
思わず自分のものと比べてしまい、そして落ち込む。
出るところは出ており、引っ込むところは引っ込んでおり、足はすらっと長く肌はツヤツヤ、顔はビックリするくらい小さいし……うん、同じ種族とは思えない。
1人で絶望に打ちひしがれていると、キョトンとした顔で私を見つめるお姫様。
「私と入るの、嫌でしたか?」
「ううん、違うの。神様って、なんでこんなに理不尽なのかなぁって思ってたところ。」
「神様??」
「うん、気にしないで。こっちの話。」
未だ?マークのマーレに、「そんなところに立ってたら風邪ひくよ。」と声をかける。
お風呂から上がったら、前にどこかで見た胸のマッサージと、腹筋をしよう。と心に決めるのだった。
「若葉は、」「マーレは、」
サーッ
お互いに考えていることは同じなようで、それが偶然にも同じタイミングで口を出たことに笑ってしまう。
どうやらマーレも同じみたいで。笑い声はシャワーの音で聞こえないけれど。
「私は……この国からの脱出法を探りたいと考えています。手厚いもてなしを受けているとは言え、捕虜であることに変わりはありませんしね。このままだと、王に……お父様やショーンに迷惑をかけてしまいますから。」
そうだよね。私達が捕まっていることで、王様達はきっと頭を悩ませているに違いない。
きっと太陽も。
太陽、1人で焦ってないかな。
助けに来て欲しいけど……助けに来てほしくない……
でも、今考えても仕方ないよね。
「私も、マーレのお手伝いをしたいけど……ダメだよね。私がいると、足手まといだから。」
「そんなことは……」
ううん。そんなことあるんだ。私がいるとマーレは魔法を使えない。それに、今の私は消却魔法すら安定して使うことができないのだ。足手まとい以外の何者でもない。
「私はどうしようかな。
海斗兄は修行で忙しくなりそうだし。
もう、こんな時くらい、一緒にいてくれればいいのに。男の子って、本当に。」
1人でどんどん先に行っちゃうんだから。
「でもそれは……」
「うん、分かってる。海斗兄が強くなりたい理由は、私達を守りたいから。
太陽だって、あんなに焦ってたのも、多分私が理由。」
結局最後まではぐらかされちゃったけど、多分STORY TELLERの見せた予言には、私が関わってる。
だから私に教えてくれなかったんだと思う。伊達に長く一緒にいるわけじゃない。
チャポン、チャポン……サーッ
マーレは湯船に入ってくると、そこまで大きい浴槽じゃないので、後ろから私を抱きしめる形になる。想像通りの柔らかい胸が背中に当たり、ドキドキする。
私の胸も、こんなふうに女性らしくなるのかな。
私の身体に、太陽はドキドキしてくれるかな。
「男の子って……というところには、私も同意します。ショーンもそうでしたから。初めの頃は一緒の歩幅で歩んでいたはずなのに、いつの間にかどんどん先に行ってしまって。」
「そうなんだよね。初めは一緒……むしろ私達の方が先を行ってたのにね。」
「「はぁー。」」
「ふふ。」「あはは。」
二酸化炭素濃度が30パーセントくらい増えそうなため息が重なり、思わず笑ってしまう。
「マーレはショーンさんが大好きなんだね。」
「なっ、そ、そんなことは……そういう若葉こそ、太陽のことが大好きなの、バレバレですよ。」
「えっ、バレバレ!?そ、そんなに??」
それから恋バナ?を挟みながら、お互い顔が真っ赤になるまでお風呂タイムを楽しんだ。マーレの白い肌がピンク色に染まり、女の私から見てもちょっと煽情的。
海斗兄がこんな姿を見たら、襲ってしまうかもしれない。私が止めないと。
「若葉は今のままでいいと思います。だから、今後どうするかは焦らず、ゆっくり考えてください。」
扉越しに、先に脱衣所に向かったマーレが言う。
いろいろ気を遣ってくれたんだろうな。私って、本当にいろんな人に助けてもらってばかりだなぁ。
「ありがとう、マーレ。でも、マーレと話して、海斗兄や太陽、里穂姉のことも考えて、私だけ何もしないのは違うなって思ったの。だから、私も何かやってみる。」
「……そうですか、分かりました。でも、無茶はダメですからね。あなた達4人は目を離すとすぐに無茶をするんですから。」
「あはは、気をつけます。」
どうなるか、何をすべきなのかは分からないけど、私も動いてみようと思います。
次に太陽に会った時、後ろで守られるだけの存在じゃなく、隣に並び立てる存在になれるように。
私、頑張るね。




