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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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093 想定外、予想外、意外


気温が上がっていくのと、気圧の変化で耳がツーンとすることで、どんどん地上に近付いているのが分かった。



ズーンッ!

数分後私達を乗せたジャイアントドラゴンは、無事地上に着立した。周りを飛んでいたジャイアントドラゴンは別の場所に着陸するのか、いつの間にかいなくなっていた。


尻尾がタラップの役目を果たしているようで、それを伝って皆次々と地上へ降りていく。


私達はウォーデン王の後に続きゆっくりと尻尾を降っていく。

空気の感じはどちらかといえば元の世界に近い気がするのは、上空から見えたコンクリート造の建物のせいだろうか。


「「王様ー!!」」「「ハイル様ー!!」」


地面……舗装されたコンクリートに靴が触れ音が鳴る。が、その音が私の耳に届くことはなかった。

それどころか、地面がコンクリートで舗装されていることすら気付かないほどの大歓声に身体を包まれ、ビクッと跳ねる。


「なんじゃこりゃ?」


海斗兄が驚きのあまり固まるのも無理はない。

だって、目の前に広がる人、人、人!!

人数、熱気、歓声。全てが凄まじいのだ。

ちなみに、ここから見えている頭のほとんどがスキンヘッドなことも、驚きに拍車をかける。

小学校時代の将也とかがいたら、絶対に失礼なこと言いそうだなぁ……いや、今も言うかぁ……


「ハイル様、大将軍フリードの暴走は止めることができたのですか?」


群衆の先頭、カメラマンの前にいた記者のような人がウォーデン王に話しかける……って、カメラ!?

それは元の世界でもよく見たことがある、長く大きなテレビカメラであった。


この国、テレビあるの!?


よく見てみると、魔導師達の白いつなぎ姿は置いといて、私達と似たような服を着ている人達がたくさんいることに気付く。


建物といい、服装といい、この国、ハイラスマーレ国より私達の世界に近いんじゃない?


「何とか間に合って、止めることができたよ。ケガ人は出てしまったが、亡くなった人がいなかったのは幸いだったね。

ただ、ハイラスマーレ国に数人の魔導師達が囚われてしまった。そのことについては、フィミールに聞いてくれ。」


まだ何か聞きたそうな記者に一礼すると、国民に手を振るウォーデン王。


どっと湧く人々。

ハイラスマーレ国に勝つことができなかったのに、そんなことはお構いなしで皆笑顔を王様に向けている。


まるで帰ってきてくれればなんでも良いというかのように。

もっと力や恐怖で国民を支配しているのだと思っていた。


時が経つにつれ、どんどんウォーデン王ハイルの印象が私の中で変わっていくのが感じられた。


そんな心の変化に気付いたのか、海斗兄が私の頭をコツリ。


「若葉、あまり気を許しちゃダメだぞ。どんなに国民に慕われていようが、戦争を仕掛けたという事実、俺達の敵ということは変わらないんだからな。」


「わ、わかってるよ。」


と言いつつも、心の中で『この人達は本当はそんなに悪い人じゃないかもしれない』という気持ちを抱いてしまっていた私。


気を引き締め直さなければ……



その後、フィミールにインタビューは任せて、ウォーデン王、リース、リースの浮遊魔法で運ばれるマーレ、私、海斗兄の順番で近くの建物に入った。


4階建の小さな白いビル。コンクリート剥き出しの無機質な階段を一気に登りきり、突き当たりの部屋まで廊下を進む。


「ここが私の部屋だ。ハイラスマーレ王の部屋に比べるとだいぶ質素に感じるだろうが、まあゆっくりしてくれ。」


えっ?ここお城だったの??

……いや、王様がお城に住まなければいけないなんてルールないけど、本当に意外すぎて……

いや、もしかしたら中が凄いのかもしれない。うん、そうに違いない。


ウォーデン王が非常口によく使われていそうな鉄の扉を外側に引く。


ガチャリ。


扉を開けるとそこには……中学校の教室くらいの広さの部屋が広がっていた。

奥の窓辺に職員室にありそうな机が1台。真ん中にはテーブルとパイプ椅子のようなものが8脚。


本棚が壁一面に敷き詰められ、100、200冊では下らない数の本が、立てかけられている。


「だから言ったじゃないか、海斗君。質素な部屋だって。私はこういうところにはこだわらないタイプでね。部下達にはもっと王らしい住まいにしてくれと言われているのだがね。」


心を読まれてしまったことに、顔を赤らめる海斗兄。多分部屋があまりにも想像と違いすぎて、心を守るプロテクト(防御壁)が揺らいだのだろう。


いや、分かるよ海斗兄。これはさすがに……ね。


「さて、リース。マーレ姫はそちらのベットに。海斗君と若葉さんは椅子にかけてくれるかな。」


扉側の壁際に設置されたベッドにマーレが寝かされるのを確認してから、私達も席に着く。

ウォーデン王とリースは私達の反対側に向かい合って座った。


「さて、改めてもう一度謝罪させてくれ。まず若葉さん、すまなかったね。無理矢理攫った上に、怖い思いをさせてしまった。」


私は何も答えない。

代わりに、テーブルの下でギュッと拳を握りしめる。


「信じてもらえないかもしれないが、きみを連れ去ろうという気持ちは私にはなかった。完全にフリードの独断だ。だが、部下の不始末は私の責任だ。申し訳ない。」


再度謝るウォーデン王に対し、海斗兄が口を開く。静かに、けれど厳しい口調で。


「信じられないな。あんたは前にもハイラスマーレ国を潰そうとした。ハイラスマーレ王や、ショーンさん、マーレ達を殺そうとしたじゃないか。今回もあんたの差金なんじゃないか?」


「確かにハイラスマーレ国を攻撃したのは事実だ。ハイラスマーレ王はこの世から抹殺しなければいけない。そのために、殺さなければいけない人間もいる。


だが、きみ達は違う。」


大きく息を吐く男。そして、首にかかる魔防石を手の中で転がす。


「……いや、正確には違わないのだが、きみ達は巻き込まれているんだ。だから救ってやりたい。この気持ちは本当だ。」


「誰から私達を救いたいんですか?」


私と海斗兄の目をじっと見つめる2つの瞳。



あれ、この眼、どこかで……



しかし諦めるようにゆっくり首を横に振る。


「ダメだ、教えることはできない。伝えようとしても『悲鳴』に消されてしまう。」


また『悲鳴』

この世界にはどれだけの秘密が隠されているのだろうか……



ハイラスマーレ王は、このことを知っているんだろうか……


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