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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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85/168

085 別離

上空は凄まじい熱さだけれど、マーレが私達の周りを冷気で包みこむことで回避する。


ぐんぐん上昇し、ジ・イクリプスに手が届くところまできた。

私はグッと手を伸ばし、黒い太陽に触れる。


パァン!!


触れた瞬間、フリードの魔法は跡形もなく消え去った。

後に残ったのは真上に出現した巨大な積乱雲のみ。


「さすが若葉、ありがとうございます!!」


私に触れた事で冷気の魔法が消却され、余熱でじっとりと汗をかいてしまうが、そんなことはお構いなしにギュッと抱きしめられる。


対して、フリードは何が起こったのか分からず、目をパチクリさせる。


「フィミール……今、何が起きた?」


「ジ・イクリプスが止められるなんて、やばいっすね。フリード様の最強の魔法っすのに。」


ぐいっとフィミールの胸ぐらをつかみ、真上に持ち上げる大男。


「お前の目は節穴か?あれは防御などではない。明らかに消されたんだ。

あの規模の魔法を一瞬で消すなど、本来はあり得るはずがないが……」


魔法の特性に気づかれた!?


フリードは舐め回すような視線で上から下まで私のことを物色してくる。

身体の奥底まで見られているようで、気持ち悪い。


「俺を馬鹿にした国を焼けなかったのは残念だが、代わりにいい手土産が見つかった。あいつを捕まえろ。」


ヒューン!!


「えっ!?いやっ、離して!!」


ぐいっと身体が浮かび上がる感覚。目にも止まらぬスピードで雲の中から現れた小さなドラゴン?に掴まれ、そのまま持ち上げられる。

魔法は使われていないので、消却魔法は威力を発揮しない。


「若葉、そんな!!」


マーレの手から光弾が次々と撃たれるも、私を掴んだドラゴンはひらりひらりとかわし、上昇していく。


「このっ、離してよ!!嫌だ!!」


身体をブンブン揺らし、手と足を上下に激しく振る。



嫌…怖い……



連れて行かれれば何をされるか分からない……


「若葉を離せ!!」


涙で視界が歪んだその時、目の前を大好きな男の子が横切る。ドラゴンの真上を取った太陽の腕には、光り輝く雷の刃。


シュバッ、シュバッと、2度振られた腕。すると、ドラゴンの翼が身体から分離する。

ギャーッという断末魔を上げながら錐揉み状態になる。


上か下か、右か左か……もうよく分からない状態になり、ひたすら目を瞑り耐える私の身体を、幼なじみはドラゴンから奪い去った。

ジェットコースター状態から救われた私は、カチカチと歯を鳴らしてしまう。


「若葉、大丈夫か!?ごめん、遅くなった!!」


言葉が出ない分、ギュッと太陽の身体を抱きしめた。


死ぬかと思った。でも、良かった。





というのは早計だった。


私に触れた太陽は、魔法を使うことができない。

空を飛ぶ力を失った私達は、落ちるしかない。しかも私がいる限り魔法を使うことはできない。


「逃さんぞ。」


フリードが放った火球が迫る。

落下しながらも火の玉に触れようと試みるが、太陽が身体を反転させて火の玉をモロに喰らってしまう。


「ぐわぁ!!熱いぃぃ……」


なんで!!

私が触れれば魔法は消せるのに……

背中が赤くただれ、人が焼ける嫌な匂いが立ち込める。


熱い。

太陽の背中に触れ、その熱に手が震える。


「悪い、勝手に身体が動いちまった。」


「もう喋っちゃダメ!!早く手当てしないと死んじゃうよ!!」


どうしよう、どうしよう、どうしよう……

このままじゃ……私の大切な人が……


すごい勢いで落ちながらも、なぜかスローモーションで風景が流れる。

下からマーレとルーラが飛んでくる。けれどまだ距離がある。

フリードはもう一度火の玉を撃つ構え。人を殺す事に一切の躊躇がないことを感じる冷徹な表情。


太陽が殺されちゃう……


「太陽、私を離して!!太陽1人なら回復できるし、戦える!!」


でも、私を離してくれない幼なじみ。

もう意識がないのかもしれない。でも、私を絶対離さないと強く……痛いくらい強く握られた手。


ゴオッといいながら火の玉が迫る。

ダメだ……このままじゃ太陽が……



「ぃやだ…そんなの……絶対嫌だ!!」


太陽に伝えたい事、まだいっぱいあるんだ。


喧嘩したままじゃ終われない。

ちゃんとごめんなさいって伝えたいし、私が思っている事もきちんと伝えたい。




そして、私のあなたに対する気持ちを……伝えたい。



大好きだよ。太陽の全部が好きだよって。





愛してるよって。





ブワっと何かが身体の中から噴き出した。

その何かは、フリードが放った火の玉を吹き飛ばし、太陽の背中の傷をあっという間に癒す。

そして、落下のスピードが徐々にゆっくりになっていき、ついに止まった。


空中に静止したまま、私を中心に半径10メートルの白い球体が出現する。


空高くにいるのに、風も冷たさも感じない。

むしろ暖かい。お湯に身体を包まれているようなそんな感覚。


フリードやフィミールが何かを叫んでいるが、それも聞こえない。

ルーラの羽の音も、マーレの言葉も、聞こえない。


ここは私と太陽だけの空間。


「ごめんね、太陽。痛かったよね。熱かったよね。」


まだ目を覚さない幼なじみの背中をさする。服は燃えて無くなってしまったけれど、その下の皮膚はすべすべして滑らか。

良かった、これなら跡はきっと残らない。


もう一度太陽の身体を抱きしめる。

太陽のにおい、幼い頃からいつも嗅いできたお日様のようなにおい。



ありがとう、守ってくれて。

次、もし会えたら……ちゃんと私の気持ち、伝えるね。



私が心の中で念じると、太陽は腕の中から姿を消した。

と同時に、白い球体が跡形もなく消え去った。



そして私は……大地に向かって静かに落下し始める。


でも、もう怖くない。

大切な人を守ることができたから。



重力に身を任せながら、眠るように私は意識を失った。






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