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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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082 炎上、ハイラスマーレ国


ドーンッ! バリバリ! 

ガキッ、キッッッン!! ギィンッ!!


轟音に、尻尾を踏まれた猫のように跳び起きる。


まず目に入ったのは砕かれた窓ガラスに壊れて踏み板の抜けた階段。床には色々なものが散乱しており、あぁ、この世界にまた来たんだなぁと実感する。


ここは元の世界と異世界をつなぐ建物。外の世界は全くの別物なんだけど、この建物だけはとても似た作りをしている。


首にかけた銀色の鍵に手を伸ばし、触れる。ひんやりとした感覚。

これではっきりと証明された。この鍵とこの建物さえあれば、私達は世界を行き来することができる。


ドーーーンッ!!とさっきより大きな音に、今度は尻餅をつく。


「いてっ!」


あれ、この声は……太陽!?

後ろを振り向くと、幼なじみの身体がそこにあった。


「ごめん太陽!!大丈夫??」


「ん……あぁ、平気だよ。それより、無事に転移することができたみたいだな。」


周りを見渡すと、よっこらせと言いながら立ち上がる姿を見て、ちょっとおじさん臭いなとクスッと笑ってしまう。


「おぅ、お前ら起きたか。さすがに林間学園で疲れてたみたいだな。俺達の方がだいぶ起きるのが早かったよ。」


扉の方から海斗兄、ついで里穂姉が歩いてくる。2人とも表情が固い。何かあったのかな。


「山登りして、ハイキングして、肝試しして……色々あったからな。疲れてたのは否めないわ。若葉は平気か?」


急に優しく声をかけられびっくりする。


「へ、平気だよ。太陽は合宿もあったんだし、私より絶対疲れてるよ。」


「確かにそれもあったわ。」


そこで喧嘩をしていたのを思い出したみたいで、またそっぽを向いてしまう。

うーん、このままいつも通りに戻ってくれたら良かったのに……


「それで、さっきから鳴り響いてるこの轟音の正体は?」


「実際に見た方が早いと思うから、今映すね。」


壁をスクリーンに見立て、映像を映し出す。これも光属性の魔法らしい。魔法の汎用性が高すぎる。

そういえばさっき身体から魔力出たし、もしかして私も今なら魔法が使える?


なんて考えていた頭は、映し出された光景を見て一気に切り替わる。


「おい、嘘だろ……」


「いや、マジだ。俺達がこの目で見た光景だ。」


そこには、ハイラスマーレ国が多数の魔導師に攻撃され、炎上する様子が映されていた。あまりの状況に息を呑む。



ハイラスマーレ国。私達が前回この世界に来た時にお世話になった国。

大きさは帝都23区がすっぽり入るほどの大きさで、中央にそびえ立つのが帝都タワーの倍くらいあるスカイキャッスル、王様が住んでいるお城だ。東西南北にエリアが分かれていて、商業施設はもちろん、学校や大きな競技場等も揃っている。

人口は約1万2000人。世界的な人口が全盛期に比べて1万分の1に減ってしまっていることを考えると、かなり人数が多い国。

そもそもこの世界は、昔は私達が住む世界よりも遥かに高度な文明を持っていたようなのだが、それが災いして衰退してしまったらしい。

ちなみに、魔法の世界と言うだけあって、ほとんどの動力源は魔法に頼りきっており、魔法なしではやっていけない国である。


優秀な魔導師もたくさんいて、世界の中でも強国に分類されており、私達もその強さを目の当たりにしてきた。

だからこそ、ここまで一方的に攻められているのが信じられないの。



「マーレ、ミーナ、ショーンさん、エリーン先生、王様……みんなは大丈夫かな……」


「それは……分からない。外に出て念話を飛ばしてみたんだが、誰とも繋がらないんだ。」


「いつもなら魔法陣で囲まれてるから繋がらないのは分かるんだけど……」


ハイラスマーレ国は普段巨大な魔法陣で囲まれていて、敵の侵入や連絡を遮断している。でも、あれだけの数の敵が中で暴れているなら、魔法陣は破られているはず。なのに繋がらないということは……


最悪の想定が頭をよぎり、それを拭うように必死に頭を振る。

そんなことあるはずない。あの人達が負けるなんて。


「俺が行く。」


えっ!?

すくっと立ち、出口に向かう太陽を海斗兄が止める。


「落ち着けって。まだこっちの世界に来たばかりなんだ。もう少し様子を見てもいいだろ。」


「いや、時間がないんだ。それに、マーレ達のこともある。俺達が助けないで、誰が助けるんだ。」


2人とも睨み合ったまま仁王立ち。一歩も引く気は無さそう。

太陽の気持ちは分かるけど……


「太陽、どうしたの?焦りすぎよ、もう少し冷静になって。」


里穂姉の静かな、それでいて芯の通った声。

いつもならこの言葉で冷静になれるはずなんだ。


バリバリバリ

太陽の魔力が電気エネルギーに変わり、空気を振動させ床に散らばったガラスが小刻みに跳ねる。


「太陽、待って!!お願い!!」


考えるより先に身体が動いていた。幼なじみに向かって跳び付く。が、一瞬遅かった。


私の右手は無情にも服をかすめるだけに終わり、太陽は目にも止まらぬスピードで建物から出て行ってしまった。


「なんで……なんでよぉ……」


ペタンと、床に座り込んでしまった私を横目に、里穂姉が素早く海斗兄に指示を出す。


「海斗、太陽を追って!!今の太陽は冷静じゃない!!」


「分かった。」


海斗兄も太陽に負けないスピードで建物を出て行った。


2人が出ていき、静寂が訪れる。

ううん、外では変わらず戦闘音が鳴り響いているけれど、今の出来事が衝撃的すぎて耳に入ってこないんだ。


「……ヒック、里穂姉……うぅ…」


「わかちゃん、私達も追いかけよう。大丈夫だから……ねっ!」


里穂姉に手を引かれ、ゆっくり建物を後にする。扉の外は桜の花びらがひらりひらりと散っていてとても幻想的な風景が広がっていた。

花びらの1枚1枚を目で追う。


「ごめんね、里穂姉…取り乱しちゃって。

えへへ、なんかダメだね。最近全然うまくいかなくって。」


「うん。」


そんなに優しく撫でられると……また泣いちゃうよ。

ぐしぐしと手の甲で涙を拭う。


「あのね。私、向こうの世界に戻ってから、太陽のこと……本当に好きだなってしっかり気づいたの。1人の男の子として、ね。

でも、そう思えば思うほどうまくいかないことも多くって。辛くて。

今回だって、喧嘩して、仲直りできなくって……でも、さっき、私の言葉が届かなかったのが、一番辛かった。」


今まで紡いできた心を繋ぐ糸を、引きちぎられたようで。


「わかちゃん。多分太陽は今、何かすごく大きなものを背負ってしまってるんだと思う。それも1人でね。

それに潰されないように、なんとかしようとして、周りが見えなくなっちゃってるんだよ。

だからさ、一緒に背負ってあげよ。

大丈夫、太陽はわかちゃんのことを嫌いになったわけじゃないから。絶対!!」


本当だよ。私が保証する。なんて言いながら胸を張る里穂姉を見て、少し元気が出てきたような気がする。


「まずは2人に追いつこう。それで、ちゃんと太陽と話そ!4人で。」


コクリ。私は大きく頷くと、顔の前に落ちてきた花びらを両手で受け止めた。その花びらは私達の世界の花びらとは違い、先が3又になっている。


きっと太陽はこんなこと知らないはず。だから今度教えてあげよう。自慢しよう。


それから、ちゃんとさっき私の言葉を無視したことは謝らせてやる!!

それで太陽が悩んでいることも、絶対に聞き出して、一緒に背負うんだ。


それからそれから、ちゃんと話して、お互いの悪いところを認めて、仲直りして……




それからそれからそれから……

ちゃんと好きって気持ちを伝えよう。





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