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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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081 再びあの世界へ

「おいおい、嘘だろ。本当に跳んできたよ。」


「信じられない。しかもわかちゃんも一緒に。」


光が収まるのを感じ、ゆっくりと目を開けると前には見知った顔が2つ。倉庫の中の埃っぽい感じはせず、けれど排気ガスの少し煙たい匂いに顔をしかめる。

そこでようやく自分達が帝都に戻ってきたことに気づいた。


ここは中学校の旧校舎裏。水泳の時期には本校舎からゴム製のシートが敷かれ、簡単な通路ができあがるが、今は時期外れのため草は伸びっぱなし。どこから飛んできたのか分からないペットボトル等のゴミが落ちている。


「海斗兄、里穂姉、こんな時間にごめん。それからありがとう。」


「いやな、STORY TELLERの言葉となれば、さすがに無下にはできないだろ。何より幼なじみの頼みだ。」


海斗兄も里穂姉も大きなリュックを背負い、私達と同じくジャージ。動きやすさを重視した格好だ。それでもかっこよさ、美しさを損なわないところはさすが自慢の幼なじみであり先輩だ。

このハイスペックな3人に囲まれると、どうしても自分が劣った存在に見えてしまうのは、仕方がないだろう。


「2人が使ったのは超長距離転移魔法だよね。この世界どころか、向こうの世界でもとんでもない魔力を消費する極大魔法の一つなのに……どうやって?

しかもわかちゃんの消却魔法に消されずに。」


とりあえずありのままの状況を説明すると、更に困惑し頭を抱える里穂姉。


「わかちゃんから膨大な魔力が溢れ出したの??」


「うん。私の中から……だったと思う。すごい量だった。」


「色は何色だった?」


海斗兄の質問に、あの時の様子を一生懸命思い出す。あれは……


「虹色かな?いろんな色が混ざり合ってた。」


「あぁ、確かにそんな感じだったな。

でも、とりあえずこの話はまた落ち着いてからでもいいか?事は一刻を争うんだ。」


太陽が話を遮る。里穂姉も海斗兄も腑に落ちない顔をしていたけれど、太陽の真剣な顔を見て頷く。

STORY TELLERを開くと、2時間半前に見た言葉。



『又の日、東雲に神の雷。多くの生命が無に帰す。守護する力を得る為、再び世界を渡れ。』



「里穂姉なら俺が焦る理由、分かるよね。」


ここで私と海斗兄に話が振られないのは、まあ仕方ない。だって私達、勉強担当じゃないしね。拗ねてるわけじゃないよ。


里穂姉は顔をしかめ、文字を何度も読み返す。そして、私と海斗兄を一瞥すると、わかりやすく説明してくれた。


「又の日は次の日……0時を過ぎたから今日ってこと。しかも、東雲。これは明け方を指す言葉なの。つまり今日の明け方に神の雷とやらで多くの生命が失われるってこと。」


「えぇ!?」「マジか!?」


「わかちゃんは置いといて、海斗には土曜日に説明したような気がするけどね。」


相変わらず厳しいです、里穂姉。すかさず太陽が横槍を入れる。


「いや、若葉も先週の古文の授業でやってるから。」


……すみません。

いつもより棘があるツッコミに、先輩コンビは顔を合わせる。


「なんだお前ら、まだ喧嘩してんの?」


「海斗兄には関係ないから。」


ごめん、海斗兄!!あとでちゃんと仲直りしたら謝らせるから。今は許して。

とんでもなくぶっきらぼうな返答に、さすがの海斗兄もムッとしたみたいだったけど、そこは頼れるお姉ちゃんが話を切り替え事なきを得た。


「とにかく、もう時間がないってことね。夜明けといっても明け方なのか、日の出前なのかは分からないけど……少なく見積もって残り4時間弱ってところかな?

太陽がすぐに連絡してくれて良かった。」


「まあ向こうにいけば時は止まるみたいだし。でも早いに越した事はない。すぐに向こうに出発して、守護する力とやらを手に入れて帰ってこよう。」


太陽の言葉に、全員が同意し荷物の最終確認を始めた。




10分後、私達は旧校舎の扉の前に立っていた。

大きくて古びた鉄の扉。部活等で見ることはあったけど、目の前まで来たのはほぼ1年ぶり。近づくにはやっぱり抵抗があって。


ドキドキと強い鼓動。手には汗が滲む。

ここだけ他の空間と隔絶されているような気がする。さっきまで聞こえていた虫の鳴き声も聞こえないし。


「やっぱり緊張するな。楽しみな気持ちもなくはないけど……な。」


「うん。楽しいだけの世界じゃないからね。でも……」


でも、行かなければたくさんの生命が失われる。STORY TELLERが示すことに間違いはないだろう。

分かっているのに…もしかしたら止められるかもしれないのに、見過ごす事はできない。



後悔したくないから。



それは太陽だけじゃなく私も、里穂姉も海斗兄も同じ気持ち。

だからあえてみんな何も言わないんだ。ここまで来て後戻りする人は、ここにはいない。


「それじゃあ、行くぞ。」


銀色の鍵。

全員が首からいつも下げているこれは、STORY TELLERから現れた物。

異世界に渡るための文字通り鍵となる。


その鍵を、太陽は勢いよく穴に差し込み、右に回した。



グルリと視界が歪み、回り、落ちる。



前回と違ってすぐに意識が途切れる事はなかったけど、むしろそれはそれで辛かった。




こうして、私達は2度目の異世界転移をしたのであった。


今度は自らの意思で。



いや、本当に自らの意思だったのかな。



『いいですか。正しいか誤りか、判断を人に委ねてはいけません。自分で導き出すのです。君達の判断で、世界は大きく変わります。忘れないように……』



なぜだか、頭に浮かぶのは憎き敵の言葉。






そして、まさかあんなことになるなんて……








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