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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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079 親友の苦労


「わか、本気で抜け出したいとか言ってるの?」


「ひかり、本当にごめん!!どうにかならないかなぁ。」


部屋の前のベンチに腰掛け、親友のひかり、こと新見ひかりが大きくため息をつく。6年1組、元富士学級で過ごした1年間で意気投合し、今では一番の親友となった眼鏡の少女に頭を下げる。

この学年で唯一太陽と渡り合える人であり、生徒会の次期副会長。


そんな彼女も大きく悩むこの状況。なんせ、親友が夜、宿舎をぬけだして外出したいと言っているのだから。しかも誰にもバレずに。



1時間前。

私と太陽は肝試しそっちのけで太陽の部屋に向かっていた。

2階に上がり、廊下に出ると奥から3つ目の部屋の扉から光が溢れ出ている。


扉を勢いよく開くと、太陽のキャリーケースが光り輝いている。いや、正しくはそこに入った何かが、だ。


太陽が恐る恐る取り出したのは、国語辞典くらいの大きさの、茶色い革表紙の本。



STORY TELLER

別名、運命の本。

持ち主の運命を読み取り、必要なことを教えてくれる本。

そして時には乗り越えるための力を授けてくれる本。


異世界の宝であり、向こうの世界からこちらの世界に持ってきた数少ない物の一つ。

ちなみにもう一つは大切な友人からの手紙。



持ち主である太陽に応えるかのように、光を強めるSTORY TELLER。開いたページに文字が浮かび上がった。


『又の日、東雲に神の雷。多くの生命が無に帰す。守護する力を得る為、再び世界を渡れ。』


多くの生命が無に帰すって……死んじゃうってこと!?


「……太陽、これって……』


私の手が触れた瞬間、ビクッと跳ねる肩。太陽の顔が真っ青になっている。


どうしたの?

確かに恐ろしい内容ではあるけど、こんなに怯えた顔をする幼なじみは、初めてかもしれない。

もしかして……


「何か見えたの?」


STORY TELLERは、必要なことを教える際、映像を見せることもあるという。私はそういう魔法の一切を消してしまうので見たことはないのだが。


「大丈夫だ、心配ない。それより若葉、今すぐに向こうの世界に戻らないとまずい。」


「そんな、私達は今林間中だよ!?それに幸鳥県から帝都に今すぐ戻るなんて……」


向こうの世界に行くには、中学校の旧校舎に行かなければいけない。そんなの、どう考えても無茶だ。

しかし、太陽は声を荒げて首を振る。


「ダメだ!!今行かないと、取り返しのつかないことになる!!」


「ねえ、太陽!!何か見えたんでしょ!?私にも教えてよ!!」


「それは……」


「こらぁ!!お前ら、肝試しの最中にいなくなるとか何考えてんだ!!」


やばっ、見つかっちゃった……

そんな一般の中学生としては危機的な状況でもなお、太陽の表情は変わることなく運命の本を見つめ続けていた。



それから学年主任と担任にこっ酷く叱られて、今に至る訳なのだが……


「わか、あんた今さっき先生達に叱られたばっかりでしょうが。これで抜け出すとかしたら、ただじゃ済まないわよ。」


それはそうなんだけど……

結局怒られた後そのまま部屋に戻されてしまったので、何が見えたのかは教えてもらえなかったけど、太陽のあの様子を見る限り大変なものが見えたのは間違いない。

『取り返しのつかないことになる』

この言葉が頭の中に繰り返し鳴り響いていた。


私がずっと俯いて黙っていると、ひかりが大きなため息をついた。


「太陽がらみ?」


「うーん、そうとも言えるし、違うとも言えるし……」


「絶対そうでしょ!!」


もう一度ため息。その中に感じる『あの男は……』という呆れ。

ひかりと太陽は昔からこんな感じだ。後先考えず突っ走る太陽を、裏で支える(本人いわく尻拭い)ひかり。


「それで、どのくらい誤魔化せばいいの?」


「えっ、手伝ってくれるの??」


ぐいっと寄せた私の顔を押し戻し、3度目のため息。そして苦笑い。


「まあね。親友の頼みだし、何もないのに太陽とわかがこんな無茶なこと言うはずないしね。」


さすが私の親友。ひかり様様だよぉ。思わず抱きつき、再度押し戻される。


「どうせ細かいことは言えないんでしょ。驚かなくても、わかは顔に出やすいんだから。」


「ごめん!!帰ってきたらちゃんと話すから。これまでのこと、全部。」


「本当に?まあ期待せずに待ってるよ。」


確かに里穂姉や太陽には反対されそうだけど、今回の件も含め、この世界にだってあっちの世界のことを知っている人がいた方がいいはず。私の勘がそう言ってる。

説得できる自信はあんまりないけど、私頑張る!!


スィー

私達の目の前に一枚の紙飛行機が飛んできた。驚く親友をよそに、私の膝の上に紙飛行機が着陸する。中には見慣れた字。


『深夜0時に階段下の倉庫。荷物は最低限で。里穂姉、海斗兄には連絡済み。』


「これ太陽の字じゃん。この紙飛行機、どっから飛ばしてきたの!?」


目を丸くするひかりに、今度は私が苦笑い。


「このことも含めて、今度話すね。」



さて、出発の準備だ。

最低限の荷物って、何を持って行けばいいのだろうか。

しおりとかあればいいのに。


遠くで非常口の緑色のランプがチカチカと細かく点滅していた。



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