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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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077 憂鬱



運命の日まであと3日。



「それで、そのまま寝ちゃって春風さんにも怒られて、太陽にも返信しないで怒られて、散々だったわけね。」


「うん……」


次の日の午後、私は里穂姉の家に駆け込んでいた。里穂姉の部屋は、とっても整頓されていていかにもしっかり者って感じの部屋。本棚には大好きな漫画がたくさん置いてあるのだが、今は布が掛けられ、読めないようになっている。



この2人も私の幼なじみ、木崎里穂と本田海斗。2人とも中学3年生で私と太陽の一つ年上。里穂姉は生徒会長で学年トップの成績、海斗兄はサッカー部のキャプテンでエースという、こちらも太陽に負けず劣らずのスーパー中学生なんだけど、その役割にも少しずつ終わりが近づいてきている。

海斗兄は「全国大会まで行ってサッカーで推薦もらうから大丈夫!!」と自信満々なのだが、里穂姉の強い説得により、オフの日は渋々ではあるものの里穂姉の家で受験勉強をしているというわけだ。そこに私と太陽もたまに混ぜさせてもらっている。


ちなみに海斗兄の全国大会出場、そして推薦というのは結構本気で、去年も海斗兄の活躍で全国大会の代表決定戦まで進んだのだが、そこでその年の全国大会優勝校と当たってしまい、結果として進出することはできなかった。なので今年こそはと気合が入っている。



ふわりふわりと私の前に飛んできた消しゴムにチョンと指先で触れると、ポトリと床に落ちる。


「海斗、何度も言うけどこの世界ではあんまり魔法は使わないこと。誰が見てるか分からないでしょ!」


「だってさ、使わないと感覚が鈍るから。」


またしても消しゴムやシャーペンを飛ばす海斗兄に、呆れ顔の里穂姉。



私達4人は1年前、確かに異世界に飛ばされた。そこは魔法が当たり前のように存在する世界だった。

私達はたくさんの経験をした。たくさんの出会いがあった。

帰ってきたら時計は1秒も進んでいなかったけれど、私達の中に、記憶として鮮明に残っている。


そして、戻ってきて1番驚いたこと。それはこっちの世界でも魔法が使えたこと。

向こうと比べると自然界の魔力がほぼ0に近いらしいのだが、その少ない魔力と体内の魔力を組み合わせることで、簡単な魔法であれば使うことができるのだ。


まあ、私はそもそもどっちの世界でも魔法を使うことはできないんだけどね。


チョンチョンと飛び回る文房具を指先で撃ち落とす。

私にできることといったら、こうして魔法を消すことだけ。魔法世界では中々強力な力なんだけどね。




「ごめんね、里穂姉、海斗兄。受験勉強で忙しいのに……」


「大丈夫よ。海斗も今は勉強する気がないみたいだし、何より可愛い妹分の相談だからね。」


里穂姉、言葉の端々に棘があるよ。もちろんそんな言葉にも海斗兄はお構いなしだけど。


「太陽は確か今日から県選抜の合宿だよな。いつ帰ってくるんだ?」


「明後日……林間当日。合宿先が林間の宿泊所の近くだから、直接合流するみたい。」


だから困っているのだ。林間前までには仲直りしたかったのに。

はぁとため息をつく私に対し、海斗兄は真面目な顔でこちらを見る。


「そうだ、若葉。メールとか電話をするのは1番まずいからな。それだけは覚えとけ。」


「えっ、なんで!?」


私、思いっきりメールしようと思ってたんだけど!?


「あのな、俺もああいう合宿の経験があるから分かるんだが……

合宿の夜なんて面白いこと何一つねーんだから。そんなところに女からメールや電話をもらってる奴がいたらどうなると思う?格好の餌食さ。」


お姉ちゃんの言葉が頭に浮かぶ。

『中2の男の子は、付き合ってるとかそういうことを気にする歳なのよ。』


海斗兄の言う通りなら絶対やばい。喧嘩が悪化する想像しかできない。


戦々恐々とする私。


「まあ、海斗の言うことがどこまで本当かは分からないけど、仲直りは直接会ってした方がいいよ。

それに、わかちゃんだって言いたいことがあるんでしょ?それを我慢してわかちゃんだけ謝るのは良くないと思うよ。」


「でも……」


太陽、絶対怒ってるし。怖いし。きっと私が傷ついた言葉も、『そんなくだらないことで怒ってんのかよ。』とか言われそうだし。


こんな気持ちであと2日、そして林間学園を迎えることになるなんて。

大好きな幼なじみ達と一緒にいるのに、気持ちはどんよりとする一方であった。



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