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STORY TELLER  作者: 茶々丸
女神編
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76/168

076 けんか


運命を変える。

それは極めて難しいこと。


結末へと続く一本の道を、捻じ曲げ、別の結末へと結びつける。


けれど、急激に捻じ曲げれば、道は壊れ、全てが崩壊する。



だから、少しずつ、ゆっくりゆっくり、けれど確実に思う方向に曲げていく。




誰にも気付かれないように。

あたかも自分の意思で動いているかのように。




私はSTORY TELLER。

正しき運命に導く者だ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ウーーーー!!



不快過ぎる音。その音程は、少しずつ上がったり下がったりし、聴く人の心をざわつかせる。



爽やかな朝には似つかわしくないけたたましいサイレンが鳴り響き、「頭を隠せ!!」「窓から離れろ!!」と声を張り上げる先生、青年の家の所員さん達。


私達から見て西の空に見える小さく明滅する光。それは数十秒ではっきり視認できる程の大きな鉄の塊に変化する。






ミサイルだ。






一直線にこちらに向かってくるそれをどうにかしなければ、私達に未来はない。



死ぬか生きるか。

私達は、運命の岐路に立っていた。








運命の日まであと4日。



「もお!!太陽のバカッ!バカッ!バカーッ!!」


私は今、猛烈に怒っている。

そんな私を見て、またかと苦笑いの姉。

事は、数時間前に遡る。




「林間学園の行動班を決めるぞー。」


先生のいかにも面倒くさそうな顔、声。

まあ、そうですよね。大抵こういうグループ決めって時間かかったり、問題につながったりするし。中学2年生、14歳(私はまだ13歳だけど)になっても、変わらないんだよね。


私はクラスメイトみんなと仲良し……だと思ってるから、誰と一緒でもいいんだけどね。



でも、強いて言えば……ううん、一緒の班になりたい人が1人。


家が隣で、生まれてからずーっと一緒。小学校6年間、中学校2年間同じクラスの男の子。



「もう、先生が決めていいんじゃないですか?」


「「えーっ」」という声がそこかしこから上がるが、それをまあまあと抑える。


「お前ら、旅行に行くんじゃないんだからさ。別に誰と一緒でもいいだろ。一緒のグループになった人と仲良くやればいいじゃん。」


この中学2年生らしからぬ超大人発言をしている短髪の男の子が、幼なじみの浅間太陽。



私の大好きな人だ。



身長が1年間で8センチも伸びて、ついに私の頭は彼の肩の位置になってしまった。

幼なじみ、そして想いを寄せる側としての贔屓目はあるかもしれないが、最近ますますかっこよくなっているような気がする。

次期生徒会長の最有力であり、バスケットボールでは2年生にして県選抜に呼ばれるなど、スーパー中学生だ。もちろん頭もいい。


だから、なんだかんだで太陽の言ったことは通っちゃうんだよね。まあそういう幼なじみは、この人だけじゃないんだけど。


「よーし、浅間、よく言った。俺もまさにそれを言おうとしてたんだ。ただ、先生が決めると文句が出そうだからさ。ここは潔く……」


勿体ぶりながら、先生は箱を教卓の上に仰々しく載せる。

最初から用意してたんかい!!というツッコミを、おそらくクラスのみんなが心の中で入れたところで。早速クジが始まる。


そして……



「おまえらまた一緒かよ!!」


「不正の匂いがする……」


決まった班で集まると、お調子者の将也と物静かな恵がじーっと見つめてくる。ちなみに将也は元富士学級(6年1組)の1人だ。

心外な。と言いたいところだけど、まあここまで一緒だとそう思っちゃうよね。


「そんなわけねーだろ。そもそもどうやって不正するんだよ。俺達の引いた番号を更に適当に割り振ってるんだから。」


呆れた顔の太陽にクスッと笑う。

しかし本当に偶然は重なるものだ。今までは同じクラスというだけだったのだが(それでも十分奇跡に近いが)、ここ一年……正確にはあの世界から帰ってきてからというもの、席も基本近くだし、グループもほとんど同じだ。いや、ペアの時でさえも。


最初は運がいいなー、くらいにしか思ってなかったけど、なんか最近ちょっと不気味に思うこともある。ただ、太陽にそのことを話しても、「そういうこともあるだろ。」って感じで、大して取り合ってもらえなかった。


私の思いの強さが結果に現れてるいるのだろうか……なんて考えてしまう自分がちょっぴり恥ずかしい。


「はぁ、まあ確かに太陽の言う通りだけどさぁ……恵、蚊帳の外同士、楽しもうぜ。」


「将也と2人とか辛すぎる……」


「いやいや、ちゃんと4人で回ろうよ、ねっ!」


変なことを2人が言うもんだから、慌てて止める。太陽もため息をつく。そんな私達を見て、恵が真顔で言う。


「だってさ、もう2人って夫婦じゃん。」


「そうそう。オシドリ夫婦。」


やめてー、恥ずかしくて顔が赤くなっちゃうから!!なんて心を乱す私に対し、太陽はまたしても大きなため息をつく。


「おいおい、いつから俺達夫婦になったんだ?若葉と俺はただの幼なじみだし……誰がこんな男女おとこおんなと付き合うんだよ。」


グサグサグサ。

心に鋭利な刃物が突き刺さる音を私は聞いた。

……2年生になってから太陽、私と付き合ってる系の話になると平気でこういうこと言うんだよね。

言われる頻度が多くなって面倒臭いんだろうけど……



「そんなこと太陽君が本当は思ってないことは、あんたが一番分かってるでしょうが。それに中2の男の子は、付き合ってるとかそういうことを余計に気にしちゃう歳なのよ。」


「でもさぁ…傷つくものは傷つくんだよぉ、お姉ちゃん…」


好きな人に言われたら余計に……例えそれが照れ隠しだったとしても。


俯く私を仕方ないなぁとよしよししてくれるお姉ちゃんの名前は春風はるか、高校2年生。私と同じ(いや、私が似たのか)褐色の髪と瞳。でも、お姉ちゃんは髪を下ろし少し化粧もしており、私から見るととっても大人に見える。身長はほとんど変わらないのに。

ちなみに、私がバレーボールを始めたのもお姉ちゃんの影響。喧嘩をすることもあるけど、私の良き理解者だ。


ヴー、ヴー、ヴー


私の携帯が振動する。確認すると太陽からだった。


『若葉、なんで先に帰るんだよ。危ないから1人で帰るなっていつも言ってるだろ。』


お姉ちゃんが後ろからひょこっと私の携帯を覗き込み笑う。


「こんなメールを送ってくる人が、あんたのこと大切に思ってないわけないでしょ。

さっ、あとは自分でなんとかしなさい。私はお風呂入ってくるから。」


お姉ちゃんの部屋に1人残され、途方に暮れる。


なんて返信すればいいのかなぁ……


思わず、お姉ちゃんのベッドにダイブする。水色のタオルケットからお姉ちゃんの匂いがしてなんだか気持ちが落ち着く。


そのまま私はゆっくりと目を閉じるのであった。





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